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B2Bマーケティング、言葉が全て

2023.10.23
中島嘉一

クライアントが使う言葉で私たちに緊張が走るキーワードが2つある。「ブランディング」と「マーケティング」だ。両方とも、先方がどのような意味で使っているかを注意深く観察して話を続けなければならない。

ブランディングについては私たちの捉え方を既に記しているので参考にしていただきたい。

コスパ的ブランディング大全1

コスパ的ブランディング大全2

今回はマーケティングの話。
特に私たちが得意とするB2Bマーケティングについて考えてみたい。

マーケティングは「顧客の欲求を満たすために企業が行うあらゆる活動の総称」と定義される。リサーチからR&D、販売戦略までを含む広い概念なのだが、この業界では「マーケティング=販促」と狭義で捉えるケースが多い。更に「より多く売るための策」をパラフレーズして「マーケティング」と言っているケースも散見される。よって私たちはまずクライアントが言う「マーケティング」が何を指すのかを紐解くことからスタートする。

「マーケティング=販促」という狭義で考えた場合、B2CとB2Bでは重視する点が全く違うことに留意しなければならない。

例えば乗り物。

小型のイタリア車を販売するならば、おしゃれなカフェの前に車を停めている写真や、その車から素敵なカップルが降りてくる写真が広告にぴったりだ。そこに「ワクワクする週末を」といったコピーが載る。このような生活をしている人は興味を持つだろう。加えて、いまは国産車に乗っている人も興味を持つ可能性がある。ディーラーが近くにあることが分かれば、見に行ってくれるかもしれない。そうすれば、機械的な品質には目をつぶってプレミアム価格を払ってくれるかもしれない。つまり、B2Cにおいては、イメージが非常に重要であり、そのイメージをいま必要としていない人にも見て欲しいのだ。

一方、企業が工場で使うフォークリフトを買う場合は、おしゃれなカフェやカップルは広告に登場しない。その代わり、フォークリフトそのものをフィーチャーした写真を広告に使うことが多い。そこに「安全性、操作性が大幅に向上」「AIを搭載しリモート操作を実現」といったコピーが載る。フォークリフトを買い換える時期がきた企業の購買担当者は興味を持ち、問い合わせしてくるだろう。そうすると、販売代理店の担当者がすぐに連絡する。フォークリフトを使っていない、そして使う予定がない企業の人は関心を示さないが、それでいい。つまり、B2Bにおいては、顧客の役に立つ情報が非常に重要であり、その情報を必要と感じている人だけに見て欲しいのだ。

イメージは言語よりも曖昧である。この曖昧さが、B2Cはポジティブに作用し、B2Bではネガティブに作用する。

例えばスターバックス。コーヒーそのものよりも、ゆったりできる空間や友人との会話、スタバで仕事をするカッコイイ俺の姿に対して対価を払う。このような幅広いニーズに応えるために言語で説明すると、コピーが長くなり、キャッチーどころか敬遠される結果になる。だから、異なるニーズを持った一人一人に「私のこと」「私向き」と思ってもらうためにイメージを前面に立てるのである。

片やB2Bではそのようなことはない。その製品が必要だから買う。必要だから品質と価格と納期が重要。イメージを出されると誤魔化されたようにも感じる。むしろ、正確に簡潔に言葉で示して欲しい。稟議に回す時にも、客観性、合理性、妥当性を説明しやすくなる。

このような違いがあるのだから、ターゲットをどう考えるかも自ずと異なる。

B2C:デモグラフィック的視点、サイコグラフィック視点、生活スタイルなどで絞り込む

    → 幅広い層に認知された方がいい
    → すぐに購買してもらいたい

B2B:業種や業態、規模などで絞り込む

    → ターゲット内でだけ認知度が向上すればいい
    → まずはターゲットから問い合わせしてもらいたい

これらターゲットに対する具体的な戦術としては、B2Cの場合、好立地への出店やタレントを起用した広告、お試し価格の提供などが採用され、B2Bにおいては展示会への出店、技術的な問い合わせへの対応、サンプル品の提供などが採用される。

Web施策においても戦術が当然異なる。

B2CB2B
KPIページアクセス数
ビジター数
購入数(ECの場合)
ターゲットからのお問い合わせ数
コミュニ
ケーション
商品の世界観を表現する
キャッチーなビジュアルとコピー
会社や製品の特長を正確に
わかりやすく表現
サイト構成購入に至る導線設計
(ECの場合)
問い合わせに至る導線設計
Web戦術におけるB2BとB2Cの違い

だから、私たちはB2BのWebサイトや広告に「品質No.1」とか「ワンストップソリューション」「お客様第一主義」といったコピーを載せることに反対する。せっかく言葉を使っているのに、その意味は曖昧であり、ユーザーが求める情報になっていないからである。私たちは、企業や製品が持つ力、本来の価値にスポットライトを当てて、それをまずはコンセプトに落とし込み、それからコピーやビジュアルを考える。開発者が莫大な労力と時間を投入し、知恵を絞って完成させた製品を正しく伝えようとしたら、凡庸な表現に留まることはなく、オリジナルな表現になる。

私たちコスパ・テクノロジーズの強みは以下のように言葉に強いこと。

・企業や製品を十分に理解する
・それをコンセプトという形で言語化する
・そのコンセプト(言葉)を起点に全てのクリエイティブを創る
・そのコンセプト(言葉)に沿って情報を整理しシンプルかつ理知的なサイトを制作する

私たちがB2Bマーケティングを愛して止まないのは、企業や製品の背景を学び、オリジナルな表現を考える過程で感動する瞬間があるからだ。

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