COSPA technologies

不確実性を楽しめ

2023.02.27
福島真由子

夏にエルサレムに引っ越すことになった。夫の仕事の都合である。

夫の転勤に伴って、2~3年おきに引っ越しを繰り返してきた。長女などは11年の人生で5回引っ越しを経験している。幼児期には引っ越しのたびに通える幼稚園や保育園を探さねばならず、3人の子がいるので私はこれまでに10回ほど入園手続きをした。それに比べて、小学校は住所が決まれば学校は自動的に決まるし、確実に編入することができるのでありがたい限りである。そんなわけで定住民にあこがれていたところ、コロナ禍に血迷って山の中に家を購入、「転勤はもうおひとりでどうぞ」と宣言したはずだったのだが、イスラエルですって?行きたいじゃないの……。

いやしかし冷静になれよ。3年後に帰国しても、もう仕事なんて誰もくれないよ。イスラエルには日本人学校がないから、子どもたちはインターナショナルスクールに入らざるをえない。経済的に厳しい。そもそもローンの残るこの家はどうするのだ……。

子どもたちに聞いてみた。お父さんと一緒に行きたいか?もう転校はないと思っているはずだから、もし嫌がったら、やはり単身赴任してもらおうという魂胆だ。

すると小学生の2人、そろって目を輝かせはじめたではないか。「行く‼」とキラキラしたものを顔の周りに飛ばせている。イスラエルについては何も知らないはずだし、どこにあるのかもわかっていない子である。大人のように先のことを案じたりすることなく、ただ未知への好奇心にとりつかれている様子。そうか。それなら行くしかあるまい。知らない国に飛び込むことをおそれないマインドを持って育ってくれたことを母さんは誇りに思います。

ママ友たちからは「よくついて行くね」とあきれられている。金銭的にも体力的にも精神的にも、多くの面で負荷がかかることは確かである。

まったく言葉が通じず、友だちもいない教室に、毎日通う。そんな中でも、親切にしてくれる人はきっといる。言葉の問題だけではない。「空気を読まない」人々が自由闊達にものを言う世界でサバイブする。差別や抑圧の現場も目の当たりにする。本や映画や、もしかしたらメタバースなんかでも体験できるのかもしれないが、現実にその世界の生活者となるということは全然違う経験となるはずだ。そういうものに、わくわくするたちである。

前回のJOURNALで、梅津がAI技術のめざましい進歩について語っていた。

21世紀宇宙の旅(リアル版)への誘い

https://cospa-tech.com/journal/913/


彼とは違い、私はなぜここにいるのかと問われておかしくないようなアナクロ人間であるが、早くAIがもっと世の中に普及してほしいと思っている。AIに代替されない仕事とは、フィジカルな領域や創造性、感性の領域にあるらしい。つまりそれは「人間らしい」ということではないの?今現在、いかに人間らしさが抑圧されているかという表れか。脅威を感じている人もいるのだろうが、もっと自分らしく生きるためのチャンスととらえればどうだろう。

だから私は、子どもたちとエルサレムへ行くのである。子どもの感性や創造性をひらく可能性になるだろうと信じるから。というのはこじつけで、そもそも自分自身が、偶発的なハプニングに身を任せて漂流するのが好きなのである。テクノロジーの分野はもちろん、学術、芸術、金融、あらゆる分野で世界に頭角を現す人物を輩出する国だ。その秘密の欠片でも見つけて、皆さんに共有できたらと思う。帰国後、素寒貧の浦島太郎になって後悔するかどうか?先のことは「神のみぞ知る」だ。なんたってエルサレムは、世界三大宗教の聖地ですから。

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