日本ではすでに正月気分が薄れていると思うが、私が住む中国ではこれからが正月。今年は1月22日が旧暦の正月(別名春節)。だから、ここ上海で、昨年を振り返りつつ来年(すでに今年だ)を展望している。
昨年の私のビッグニュースは仕事に就いたことだ。日中の国際結婚組である父母の元に生まれて日中ネイティブ、かつ欧米でも学び、一般的には「グローバル人材」と言われる私が、いろいろな壁にぶつかった年でもある。
そもそもは、米国で大学を、英国で大学院を卒業したので、アメリカで働こうと思っていた。大学のリベラルな環境も考え方も大好きだった。しかしそれは富裕層のもので、低所得者や移民向けではなかった。加えて、アメリカでは人種差別も激しい。就活で企業にアプローチしても返事すら返ってこない。留学生がそのまま居座るのは歓迎されないのだ。アメリカで楽しく過ごせたのは「留学生」という「お客様」だったからだということに改めて気がついた。
ということで生まれ育った中国で働いてもいいかなと思っていたら、日本国籍の私に今度は中国の壁が立ちはだかった。中国を中国たらしめているのは共産党の歴史と愛国心だ。中国人であるという自尊心で、国をひとつにまとめている。ゼロコロナ政策も現在の緩和策も「中国しかできない、最良の政策。国民が豊かに平和に暮らせるのは共産党の英断のお陰である」。だから、海外に対しては冷ややかな面がある。海外を利用して自国を高めようとする(どこの国もそうだと思うのだが、中国の場合かなりはっきりしている)。就職においても同様、業務経験豊富なプロフェッショナル人材ならともかく、日本国籍(=非中国人)の新卒(=業務経験なし)である私を採ろうという企業は皆無だった。
翻って、日本。アメリカや中国と比べて開放的な国だ。海外文化を受け入れる土壌がある。アップル製品然り、スターバックス然り。古くは、漢字という文字や仏教などの宗教も輸入し大切にしてきた。海外の文化を好感を持って受け入れ、自身の文化に昇華させる強さがある。多様なものを受け入れる土壌もあると思う。中国では大学に行けないと社会的地位が低くなって挽回できないのに対し、日本では職人や技術者も尊敬されている。通信制の学校や専門学校も充実していて、生きやすいと感じる。結果的に、私がやりたいことを理解してくれてチャンスをくれたのも、異文化を受け入れる社風があるコスパ・テクノロジーズ社だった。
とは言え、日本でも、外国籍の人には日本語やビザの問題があって、それはそれで大変だと思う。「シームレスに世界をつなぐ」を旧正月休みにじっくりと考えてみたい。