COSPA technologies

戦略的な多言語サイトの作り方2

2023.07.06
中島嘉一

前回「戦略的な多言語サイトの作り方」と題し、多言語サイトの定義とコミュニケーションについて記した。

戦略的な多言語サイトの作り方1
https://cospa-tech.com/journal/1377/

今回はその続き、以下の3から5について触れたい。

1.多言語サイトとは何か(前回)
2.多言語サイトでの正しいコミュニケーション(前回)

3.多言語サイトの設計 ←New!
4.多言語サイトの内容(コンテンツ)←New!
5.多言語サイトの表現(デザイン)←New!

3.多言語サイトの設計
日本語と英語では文法構造が全く違う様に、日本と海外、例えば英語圏では思考法が異なっている。当然サイトの作り方も違う。英語サイトと日本語サイトの構造を比較すると以下の通り。

◆英語サイトの構造
・最初に自分が何者か、オリジナルの表現でカミングアウトする
・次に何が目的で会社が、そしてこのサイトがあり、なぜコミュニケーションしたいのかを伝える
・全てにおいて結論や主張を先に述べ、それを証明する形で言いたいことを伝える
↓↑
◆日本語サイトの構造
・製品や商品、実績などのスペックを前面に掲げて訴求する
・主張はソフトに謙虚に。「皆様のおかげです」調で展開される。
・結論、主張がさりげない。控えめ。ページ下位や第二階層以降にあるケースも。

上記の通り英語サイトは「我々」で始まるコンテンツありきのため、最も力を入れるのが「ミッション」の部分。そこには日本語サイトとは異なる強さがある。この会社は何のためにある会社なのか、どう世界を変えていきたいかが先にあり、その下にサイトのコンセプトやコンテンツを配して、デザインを整えていく。つまり英語圏のホームページにおいては、ミッションがまずこないと違和感や何かが足りない感がある。
日本企業はとかく製品や実績ありき、スペックで価値を語りたがる傾向にある。主張も「これも皆様のお陰です」的なご挨拶レベルの謙虚さ、真摯さを表明する程度のものが多く、英語圏の人から見たら「だから何だ」「何を考えているかよくわからない」という印象を受ける。問い合わせして欲しいのになかなかそう言わないというのも英語圏から見ると意味が分からない。何を考えているのか分からず問い合わせできない。つまり構成から設計し直さないと多言語サイトを作る意味がないのだ。

4.多言語サイトの内容(コンテンツ)を整える
多言語サイトはミッションありきというのは前述の通り。次は内容、コンテンツだ。以下は日本語サイト内で自社を語る際によく使われる表現例。

・あらゆるニーズに応えます
・高品質を追求
・トータルなソリューションを提供します
・豊かな暮らしを実現
・持続可能な未来を創造

見慣れ過ぎて我々日本人はスルーするレベルの表現だが、英語圏からすると奇異以外の何物でもない。「あらゆるニーズに応える」のなんて奴隷のようだし、「高品質を追求」するは企業なんだから当たり前、「トータルなソリューション」「豊かな暮らし」「持続可能な未来」ってどのレベルがゴールなのか不明、お題が大きすぎて本気で追求するなんて1企業には無理、「テキトーなこと言いやがって」である。
とはいえ耳障りがよい表現だし超抽象的なので反論もし辛い。でも「テキトーなこと」なので誰も真剣に捉えずファンもできない。
では英語圏のサイトのミッションの内容を見てみよう。

Google:
To organize the world’s information and make it universally accessible and useful.
世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること

Tesla:
To accelerate the world’s transition to sustainable energy.
世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速させること

Starbucks:
To inspire and nurture the human spirit
– one person, one cup and one neighborhood at a time
1人のお客様、1杯のコーヒー、1つのコミュニティごとに人々の心を育むこと

初めてGoogleのミッションに触れた時「超具体的だな」と思ったことを覚えている。テスラやスターバックスも同じ。具体的でメッセージ性が強いので彼らが目指す世界に是か非か、立場が分かれると思う。共感する人も多いし、半面「私とは異なる価値観を持つ企業だ」と思う人もいるはず。本気で世界を変えようと思ったら志を共にする強い味方が必要で、これらのメッセージは味方を見つけるためのものなのだ。

高品質低価格の時代は終わり、今や生き方を提示し賛同を得るという時代。多言語サイトを作ろうという企業は、反論を恐れることなくミッションをより具体化し強く語ることを一意に考えるべきだろう。

5.表現を整える

構成と内容が決まったら最後にその表現を考える。近年の機械翻訳ツールの精度向上は目覚ましく、実際にビジネス上の強力なツールとなっている。
ただ、ホームページ内のテキストに使用するのは止めた方が良い。自動翻訳したものを日本語に訳すと駄目ぶりがよくわかる。以下、最近最も精度が高いと言われるChatCPTで英訳した文章を日本語訳に戻したもの。

原文(日本語)
山田さんの、10代のようなハツラツさ

英訳(ChatGPT)
The lively and energetic spirit reminiscent of Yamada’s younger days.

日本語訳(ChatGPT)
山田さんの若い頃のようなハツラツでエネルギッシュなスピリット

「ハツラツさ」という状態を表す言葉が「スピリット」という名詞に変わってしまった。もちろんChatGPTも細かなニュアンスのブレに多少は目をつぶれるものーコラムを読んだり友人とチャットする場合は問題無いので充分使えるが、このように意味が変わってしまうとなると精緻に伝える必要があるものであるビジネス、それもホームページ上に載せる文章には使えない。

また以前こちらにも書いたが、

AIに負けない仕事
https://cospa-tech.com/journal/620/

「海水浴」という言葉ひとつとっても日本人の海水浴とアメリカ人の海水浴では位置づけが異なる。日本では夏休み恒例の行楽だが、アメリカの特に内陸部の人にとっては一世一代のイベントだ。「夏の海水浴のついでにお立ち寄りください」という誘い文句はアメリカだとありえない。習慣や文化背景を念頭に置きながら言葉と文脈を選びなおす作業を「ローカライズ」と読んでいるが、残念ながらこのローカライズはAIにはできず、人間にしかできない仕事の筆頭。多言語サイトを戦力化する上で、ローカライズは必須なプロセスのひとつだと断言する。

問い合わせがくる多言語サイトの作り方として、2記事にわたり上記5点で説明した。こういってはなんだが、現存するWEBサイトで日本語のものなんて75億分の1億でしかない。こんな狭い日本であーだこーだ言っていること自体ナンセンスだと思う。多言語サイトももちろん請け負うが、我々コスパ・テクノロジーズは日本語サイトの提案であってもこれら多言語サイトの作り方に則り「グローバルサイト」として提案している。グローバルサイトとは、世界展開を視野に入れ設計と内容に関して世界基準に則って作る日本語サイト。こちらも興味がある人は問い合わせてほしい。

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