COSPA technologies

キャンプの功罪

2022.04.18
中島嘉一

春といえばキャンプだ。キャンプは楽しい。計画段階からワクワクする。モノに溢れる今、それらを全て置き去りにしてシンプルライフを満喫できる。前回は大雨の中、地獄の特訓のようなキャンプだったがそれも良い思い出だ。

次の計画にウキウキしている私を尻目に、スタッフが「何がそんなに楽しいんですか?確実に家の方が快適なのに」と言ってきた。その時力説したのは以下2点だ。

■新しい発見がある

大人になると大抵のことは予想してしまうようになる。失敗が少なくなるのは良いが、大抵のことを予想の範囲内に収めてしまっているのかもしれない。つまらない。しかしキャンプに行くとそれがリセットされる。なにせ初心者、知らないことだらけで、10代半ばに戻ったかのようだ。

この前のキャンプでは、夜の畑を歩いていた時に娘が「あれ?野菜の赤ちゃんが寝んねしてるよ」と言った。「?」だったが、確かに芽吹いたばかりの二葉(恐らく春菊)が上に向かって閉じていた。そうか、双葉は夜閉じるのか。知らなかった。言われてみれば閉じるのに適した形状をしている。それに夜は日光がないのだから閉じている方が合理的だ。なるほど。それにしても我が娘ながら「寝んね」とは良い表現だな。今度どこかで使ってやろうと思った私は、結局すぐ大人の世界に舞い戻ってしまったのだが。

■圧倒的にコスパが良い

次に計画しているキャンプ場は、高級温泉街で知られる場所にある。それも中心部から徒歩5分の距離。旅館を利用したら一人3万円は下らない場所に、家族3人で1万円程度で宿泊可能なのだから、コスパ好きにはたまらない。もちろん日帰り入浴で高級温泉旅館を楽しんでやる。いくつ巡れるか今から楽しみである。

かようにキャンプは素晴らしい。非日常体験が格安で出来る。アドレナリン全開で誰もが楽しいから家族サービスに最適だ。これぞ父親の存在価値を認めてもらう絶好のチャンスだと信じて疑わない。疑わなかったのだが…前述のスタッフに「それ、多分一番楽しんでいるのは中島さんですよ」と言われた。まじか。

ふと振り返ってみると、確かにツレはキャンプに乗り気でない。着いても何もしない。娘は楽しそうだが、別にキャンプでなくても彼女は楽しそうである。ツレ曰く「キャンプは旦那の放牧」だと。犬の散歩みたいなものだとも言った。言われるまで気が付かなかった。私は家族サービスしているつもりだったが、家族は旦那サービスをしているつもりなのだ。

「誰かのために何かをする」というのは本当に難しい。ビジネスも然り。

RELATED

MORE

latest

MORE