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中国のスタートアップは本当にすごいのか?

2020.11.01
中島嘉一

古くはアリババ、最近ではドローンのDJIやTIKTOKのバイトダンスなど、中国にはすごい企業がたくさんあります。さらに、スマホ決済やシェアエコノミーなど、ニュービジネスも花盛りです。そして、「中国のイノベーションはすごい」と言われます。

でも、我々日本人としては「本当にそうなの?」と思いますよね。この違和感の正体は何なのか?そして、その前に、そもそもイノベーションとは何か?イノベーションをどのように定義すべきか?

イノベーションは、オーストリアの経済学者シュンペーターの『経済発展の理論』におけるキーワードです。これは1912年の著作なので、「イノベーション」は意外と新しい概念ですね。

シュンペーターが言ったのは、企業者が生産を拡大するため、生産方法や組織といった生産要素の組合せを組み替えたり、新たな生産要素を導入したりする行為がイノベーションであり、こういう企業家の行為が景気循環の源である、ということです。この企業家は「entrepreneur」で、いまは「起業家」と書かれますね。

改めてイノベーションの定義をおさらいしたのは、これこそが日本人が感じる違和感の元じゃないかと思うからです。

たしかに、シュンペーターの定義に則れば、「中国はイノベーション大国」です。しかし、我々がイノベーションという言葉から想起するのは、技術的な革新とか創造的な発明ということではないでしょうか?

シュンペーターの定義から言えば、街の煎餅屋が借金して機械を買って激辛煎餅を作って大手スーパーに納品した、ということでも十分にイノベーションということになります。これはこれで素晴らしいことですが、革新的という感じは受けません。

違和感の元が分かったところで、中国を見てみます。

2018年の11月に、中国で遺伝子操作ベビーが誕生したというニュースがありました。
衝撃的な話だったので、覚えている方も多いと思います。南方科技大学准教授の賀建奎(フー・ジェンクイ)という人がやらかした事件です。世界中から非難が殺到し、雲隠れしたような感じになってしまいました。

いま「やらかした」と言いましたが、日本的イノベーションという観点からはそうなりますよね。革新性は「CRISPR -Cas9(クリスパー・キャスナイン)」というゲノム編集技術にあり、賀教授は倫理面に目をつぶり、資金を集めただけ、と見えるのです。だから、我々は、クリスパー・キャスナインのベースに、大阪大学の研究チームのDNA塩基配列の研究があったことに興味を覚え、密かに尊敬したりするわけです。

私から見ると、中国の派手なビジネスも同じです。

特にインターネットビジネスは、海外の競合相手から政府が守ってくれるので、やりやすい。資金面でも、政府が海外流出させないので、中国国内でファイナンスしやすい。自動運転、シェアエコノミー、スマホ決済、動画SNS・・・・・など、ほとんどが、革新的な技術やアイデアは海外のものを拝借し、巨額の資金を調達して、超スピーディに実用化させる。まさにシュンペーター流イノベーションです。

では、これに違和感を感じる日本人が真似できるのか?

私は無理だと思います。技術的な革新性がないビジネスにポンと100億円出してくれるVCなんてありませんからね。仮にあったとして、ユーザーにバカにされてしまいます。

しかし、逆に考えると、非シュンペーター流イノベーション、すなわち、コツコツと技術やアイデアを磨き続けるという型のイノベーションができる国というのは多くはありません。歴代の日本のノーベル賞受賞者はみんな20年、30年孤独に耐えて失敗を繰り返しました。それでも退かずにやり続けました。日本では200年以上続いている会社が3000社以上もあり、世界一を誇ります。「中国には100年以上の歴史を持つ企業が10社もない」と中国国内ではいわれている中、これぞ、日本的イノベーションとして世界に誇るべきだと思います。

iPhoneの中身に日本製が多いというのは有名な話だし、ノーベル賞の吉野先生のリチウムイオン電池もそうです。いずれも、研究者や技術者が長い時間をかけて精度を上げてきたものです。

私自身、大学卒業後に某家電メーカーの中国工場に勤務していましたが、重要な部品の何割かは必ず日本製を採用していました。もちろん中国製の方が安いのですが、たまに爆発することがあるからです。工場というのはラインが止まるとアウトなので、爆発事件を早々に処理して、すぐにラインを再開するためには、日本製に頼るしかないのです。

また、弊社にも「こういう部品や技術を探している」等の問い合わせがよく来ます。その部品は、もしかしたらドローンの機体に使われるのかもしれませんし、機体を製造する設備に使われるのかもしれません。

いずれにしろ、「日本製に頼るしかない」という分野はまだまだありますし、日本の未来は、そういう製品を磨き続けることだと思います。

シュンペーター流イノベーションに沸く中国の産業界が「欲しい」「売ってくれ」という製品や技術をどんどん開発していきましょう。

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