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ネオレトロの裏側に狂気あり

2022.03.26
高畑龍一

久しぶりに東京モーターショーリアルで開催されるが、いろいろあって今年も行けなさそうだ。このイベントに行くと、お一人様からカップル、家族連れまで多くの人でいっぱいで、バイクも意外にオワコンじゃないのかと思わされるのが常だ。

https://www.motorcycleshow.org

今回の注目はホンダの2台。『HAWK11』と『DAX』だ。

前者は、ロケットカウルが印象的な、1100ccの大型バイクで、現時点では「市販予定車」。

https://response.jp/article/2022/03/25/355578.html

後者は、1969年にデビューした『ダックスホンダ』の復刻版とも言える、125ccのレジャーバイクで、7月発売予定。

https://www.honda.co.jp/Dax125/

この2台に限らず、バイクの世界ではネオレトロがトレンドだ。日本車だけではなく、海外メーカーからも続々と出ている。合理化されすぎて冷たく感じる現代のプロダクトに対して、「温かみを感じる」「不完全さがエモい」レトロが人気なのはファッションや音楽などと同様。さらに、バイクやカセットデッキなどハードウェアの場合は、スイッチを押す時の手応えとか、アルミの素材感などという触感の要素が強くなるので、エモさが倍増する。

とは言っても、何でもかんでも古っぽく作ればいいというものではない。バイクで言えば、日本で最もヒットしたのはカワサキの『Z900RS』だ。1972年に登場した『900 Super Four』(通称『Z1』)の復刻版という位置付けで、大人気となっている。

https://www.kawasaki-motors.com/mc/lineup/z900rs/

『Z1』と言えば、泣く子も黙る往年のスーパーバイクだ。開発ストーリーは感動的だし、海外での高い評価は日本人のプライドをくすぐった。国内版の『Z2』は人気漫画の中でも活躍した。昨年には日本自動車殿堂の歴史遺産車にも選定された。「高性能で丈夫」なエンジンなので今も現役だが(安くて200万円台後半、年式やコンディションによっては1,000万円以上)、おいそれとは買えないし、維持するのも大変、盗難も心配だ。そこで新車の『Z900RS』だ。本家本元の製品、プライスは現実的、装備は最新、もちろんカッコいい。だから多くの人が憧れる。

つまり、ハードウェアの正しいネオレトロは【伝説×カッコ×機能】ということだ。機能だけを謳っていると競合製品と比較される。カッコだけだと「中身がない」とバカにされる。【カッコ×機能】が最低条件。しかしそれだけだとリスペクトまではされない。リスペクトされるためには伝説が必要だ。伝説とまでいかなくても、人を感動させるストーリーが必要だ。

そういうストーリーは狂気から生まれる。『Z1』の開発では「世界最速」を目指し、そのために作ったことがないDOHC直列四気筒エンジンの製作に挑戦するわけだが、その頃の日本車は欧米バイクを模倣したようなレベル。「そりゃ無謀だ」と思われるのが普通だろう。いまのテスラ社のようなチャレンジ精神だ。

しかも面白いのは、たいていは狂気の側には狂気の自覚がないことだ。当時のカワサキでもいまのテスラでも、開発者はおそらく「高い目標に向かってやるべきことを黙々とやっている」。会社の方針とは合致しない場面でも、「分かっていないのは会社」であり、自分に見えている道が「正しい」。狂気は相対的な概念なのだ。

こういう開発者を擁する会社からは伝説が生まれる。ストーリーが生まれる。ネオレトロだけではなく、新しく開発した製品も輝いて見えるようになる。

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