COSPA technologies

昭和世代のメタバース

2022.04.25
中島嘉一

先日3年ぶりに祖母に会った。コロナのせいでなかなか顔が見れず心配だったが、記憶の中の祖母と同じで、元気な姿にホッとした。タイムスリップしたみたいな時を過ごし、最後に娘の最近の写真を見せ、渡した。祖母は「ありがとう」とその写真を嬉しそうにじっと眺めていた。写真はいい。離れている家族を思う穏やかな時間が過ごせる。

いやあ、久しぶりに祖母孝行をしたと気分よく東京に帰ってきたところ、「老い先短い人に写真を渡すのって何だか気が引けません?」と毒舌スタッフに噛みつかれた。

彼女曰く、高齢者の一大プロジェクトは持ち物の断捨離。死んだあとで遺品を整理する子どもに迷惑をかけない、というのが当面にして最大の課題であり、だから、そのスタッフは実家に帰る度に自分が子どもの頃の写真やら作品集やらを押し付けられているという。彼女のご両親は「困るものはモノより思い出」と言い、「たいして使っていない(単なる)モノは潔く処分できるが、思い出がいっぱいの品は処分に困る、本当に困る」とグチっているらしい。

確かにそうだ。僕も娘に貰った大量のラブレターは捨てられず、たまる一方である。今回プレゼントした写真も祖母を困らせてしまうのか。嬉しそうにしていた祖母の顔が頭をよぎる。

そんな祖母が困らない、そして家族の思い出を共有できるような方法はないだろうか。色々考えたが、メタバースが活用できるのではないかという結論に至った。

思い出の品をデジタル化し、同時にデジタルで祖母の家を作る。家には「1970年の部屋」「2022年の部屋」などとカテゴライズした部屋を作る。そこでは、その時の出来事、写真、動画などに囲まれた時間が過ごせる。もうリアルな写真を取っておく必要はない。もちろんメタバースなので増改築は好きなだけできるし、お友達や家族を招くこともできる。おお、なかなか良いではないか。

メタバースと聞くと最先端の若者向けのカッコイイ技術の様な印象を受けるが(そしてそれもまた然りなのだが)、これが根付くか否かは「全人類のちょっとしたお困りごと」をいかにスマートに解決できるか、にかかっている。昭和世代は自ら最新技術の有用性に気が付かないから、我々が潜在ニーズに気づいてあげるべきだろう。我々の存在価値はそこだ。そしてこれは、ビジネスというよりは思いやりから派生するものだと思う。

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