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中国ゲーム(理論)

2020.11.22
中島嘉一

「中国は世界一の市場だ」と言いつつ、初めの一歩が出ない会社が多いですね。「そんなことを言っているうちに、中国の時代が終わって、アフリカの時代になってしまいますよ」といつも申し上げています。

でも、中国ビジネスに躊躇してしまう気持ちもよく分かります。なにせ、まったく勝手が違う。日本の常識が通じない部分が多い。

そこで、我々が中国企業や中国人をどのように理解して接するべきか、説明します。

以前、クライアントの日本企業に呼ばれました。「中国の投資家とミーティングするので、立ち会ってくれ」というのです。行ってみると、その知人が日本で設備投資するに際して資金が足りず、不足分を中国の投資家グループから調達するかどうか、という話でした。

ところが、ミーティングでは日本側と中国側が話が噛み合わない。ここで助け舟を出さないと私のメンツに関わるので、話に割って入って議論を整理しました。

すると、日本側は、「資金の目処を立ててから投資しよう」という前提で話をしているわけです。まあ、そりゃそうですよね。

これに対して中国側は、「まずは有り金で始めるべし」と思っているわけです。中国人的には、「すでに始めていれば、『事業者はかなり自信を持っているはずだ』と考える。しかも何かしらカタチが見えてくれば、他の投資家にも分かりやすくなる」のです。

これを日本側に説明すると、「では、途中で資金が尽きて、投資が得られなかったらどうするのか」と言いました。これも、日本人的には当然ですね。

これに対して中国側は、「その計画だったら投資は得られると思うが、万が一投資が入らなければ、終わり。やめればいい」とあっさり言うわけです。で、日本側は唖然とする。よく見る光景です。

この「はい、終わり」は「算了(スワンラ)」と中国語で言うのですが、これは日常生活でもよく見聞きします。

例えば、クルマの渋滞中の割り込み。朝夕のラッシュ時などは、猛烈にクラクションを鳴らしながら、ガンガンに割り込み合戦が繰り広げられます。割り込んだ後も気まずかったり、割り込まれた側が煽り運転しそうなものですが、そんなことはありません。勝敗がついた後は、双方あっさりしたもので、平和にいっしょにノロノロ運転です。こういう時に「算了」とつぶやきます。

買い物の時の値切り交渉も然り。お互いに親の仇のようにやり合うのですが、商談成立するとニッコリして「算了」。「オタク、すごいね」「そっちこそ」などと言い合って笑って立ち去れます。前に韓国に行った時に同じ調子でやったら、日本語で「死ね!」と言われて、中国とは違うんだなとビビりました。

要は、中国では、すべてがゲーム感覚だと思えばいいのです。途中までは楽しく、というか激しく駆け引きをして、勝負がついたら「算了」。すべての中国人がそう思ってはいないかもしれませんが、少なくとも日本人的にはそう理解した方が分かりやすい。

日本人だと、何かをする時に「一所懸命」が美徳とされますが、中国ではそんなことはない。すべてゲームなのだから、負けが見えたらさっさと引いて、別のゲームに参加すればいいという感覚です。

とすれば、いきなり高値を吹っかけられても、大ボラを吹かれても、「なるほど、そう来たか」と冷静に受け止めて、いちいち驚いたり、「この人は信用ならん」などと考える必要はありません。

大ボラと言えば、日本人はよく「中国人は『何でもできる、オレに任せろ』と言うので信用できない」と言いいます。

しかし、これも中島式ゲーム理論によれば、当たり前のことです。

ゲームなのだから、まずはゲームに参加しなければ始まらない。ゲームに参加するためには、他のプレーヤー、例えば我々日本企業に対して、「この人を参加させた方が面白い」と思わせなければならない。そこで「オレに任せろ」です。いざ任された後、どうするかは、それから考えればいい。先にあれこれ考えていると、ゲームに参加できなくなり、何も始まらないからですね。

そもそも、中国の経済開放が1978年。それから40年間、一時期を除いて、ほぼ一本調子に経済が拡大している国です。他人より先に情報を得て、先にゲームに参加した人がとにかく儲けまくってきました。早い時期にマンションを買いまくった人は資産を何倍にも増やした。早い時期にコンビニに加盟した人も儲けた。早い時期にタオバオで店を開いた人は株式を上場させた。

そうやって儲けた人が、いいクルマを買って見せびらかす。愛人を作って連れ回す。そんなのを目の当たりにしていたらたまらんですよね。「我も我も」となるのが当然です。

とにかく早くゲームに参加するのが吉。いまの30代は、生まれた時からそうだったのです。これ、重要なポイントです。経済停滞という感覚を知らないのです。

そういう彼らからみると、「日本企業はなんとスローなのか」となります。

そこで、ベストは、彼らのスピードに合わせること。それが無理なら、「スローダウンした方がいいのだ」というロジックを用意しておいて、最初に中国側を納得させないといけません。

新しい分野にいち早く参入して、どんどんファイナンスしたり、次々にピボットしたりして、スピーディにビジネスを展開していく。まさに中国の新興企業のイメージです。

最近でこそ、社歴100年とかの日本企業を研究するという動きも出てきていますが、基本は短期。数年でエグジットして、次のビジネスに取り掛かり、というのを繰り返すのがカッコいいと思われています。

ここは日本のスタートアップ業界と同じ感じですが、日本では、一方で、コツコツと何十年も努力し続ける姿勢も評価されますよね。しかも、それで儲けていない方が尊敬されたりする。

中国ではそれはありません。「意味が分からない」とよく言われます。ゲーム感覚だからということもあるのですが数年先もよく分からないのが中国です。

まず、消費者のトレンドがあっと言う間に一変します。少し前には出店するのが大変だったショッピングセンターには閑古鳥が鳴いています。政策も突然変わります。国民の間で時間をかけて意見を交わすなどということはありません。最悪は、いきなり掴まって全財産を没収されます。となると、環境が変化する前に結果を出さなければなりません。

「中国人はせっかちだ」と言う前に、この辺の事情を汲んであげた方がいいです。その上で、予め、お互いのペースやゴールまでのスケジュール感について、よく話して合意しておくべきです。

日本人と中国人というのは、見た目が似ているので、「考え方も似ているだろう」と勘違いしがちで、それが通らないとなると、一気に「信用できない」となりがちです。「似ている部分もあれば、違う部分もある」という、当たり前の前提で、いちいち驚いたり怒ったりせずに、戦略的に付き合っていくことが重要かなとおもいます。

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