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中国は穏やかな国になる(初夢)

2023.01.19
高畑龍一

「人が多い」「爆速で経済成長」というのが中国人の考え方の大前提だったのだが、それがいよいよ変わりそうだ。そこで、楽観的な予想をしてみることにする。結論は「中国は穏やかな国になる」だ。

中国の人口、2022年に減少-毛沢東時代の1961年以来
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-01-17/ROLXNCT1UM0W01

日本のバブル期を知る者にとっては、少し前の中国には懐かしい空気が漂っていた。イケイケどんどん、周りの目は二の次、早く行かないとチャンスがなくなる。しかも中国は、人口ははるかに大きいし、経済の変化もはるかに速い。事業を興し、人をたくさん雇っててモノを作ったり大量に出店。その利益で不動産を買いまくれば、その価格も爆上がりし…。じっくり腰を落ち着けて額に汗を流すというのは愚か者だと言われていた。

家庭においても、奥さんが家事や育児に時間を取られるのは損だ、そんなのは安いベビーシッター兼お手伝いさんに任せて、奥さんも働いた方がいいという。実際に稼ぐよりも払う方が安いのだから合理的ではある。しかし、子供の教育は重要で、いい大学に行かせないと競争社会から脱落してしまう。だからいい小学校に入るために、その学区にあるバカ高いマンションを買わねばならぬ、そのためにさらに稼がなきゃ…というように、イケイケがぐるぐると循環していた。景気もよくなるわけである。

しかし、人口増加が頭打ちになり、高齢化社会にも突入した。「世界一の人口大国」の座はインドに奪われ、アメリカからは露骨に敵視される。下手に金持ちになるのもリスキーだし、「いや待てよ、億ションに住んで、BMWに乗って、毎日ご馳走を食べているが、これって幸せなのか」という疑問も頭をよぎる。振り返ってみると、カネを使う以外に芸がない。揃えたブランド品もメンツのため。ワタシって何なのか。

そうして、ある人はクルマに詳しくなる。メーカーの歴史や独自のメカに目を向けると面白くなり、2年おきに新車に乗り換えていたのをやめて少しカスタムしてみる。ある人は美術に詳しくなる。作家の考え方や当時の社会風俗に興味が湧いて、現代の若い作家を支援するようになる。家庭でも真面目に子供に向き合ってみると、意外な個性があることに気が付く。ベビーシッター任せにはしていられない。一流大学に入れるよりも、その個性を伸ばしてあげた方がいいかなと思うようになる。

翻って、今度は自社の製品がダメダメに見えてくる。きちっとコンセプトを立てて、品質を上げていかなければならない。そのためには、個性的なプロダクトデザイナーが必要だ。クリエイティブなエンジニアも必要だ。質が高い加工ができる設備も必要だ。昔のように売上倍増が続くわけではないが、高付加価値な製品を世に出していけば、客にも喜ばれるし利益も確保できる。これっていいことなのでは?

ビジネスの側がこのように変わってくると、人材の側も変わる。「そんなのパパッとすぐにパクれますよ」では誰も雇ってくれない。自分なりの考えやスキルが求められる。そのためには学歴だけではダメで、その代わりに、さまざまな経験をしたり、いろいろな教養を身に付けるようになる。その頃には、父親に買ってもらったフェラーリではなく、本人の中身で評価されるようになる。

こうなるとイケイケどんどんは影を潜める。己の価値を客観視できるようになるので、逆に他人の価値を理解し認めるようになる。そうして互いに気を使うようになり、穏やかな社会が生まれるのだ。

いや、これって、日本が数十年もかけて到達した境地だ。西欧などは数百年もかかっている。しかし、イケイケどんどんが中国人の本性だとすれば、この境地にもあっという間に達する可能性がある。いずれにしろ、そうなった場合、日本と中国は協業できるのか、競争するのか。競争するとすれば勝者はどちらか。中国の人口減少は日本の将来にも関わってくると思います。

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