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私の仕事哲学(北海道編)

2022.10.17
中島嘉一

先週仕事で北海道に上陸した。コロナ禍でしばらく北海道を訪れておらず、相当気合の入った出張だった。その気合の矛先は自然と「食」にも向く。何せ当社のメンバーには世界各国津々浦々にいるので北海道にも在住者がおり、さらに今回は山口県在住のメンバーも合流する。久しぶりに彼らに社長らしく「奢る」という重大任務も果たせるのだ。食材の宝庫、北海道が舞台であることも本望である。

ということで北海道での本番仕事前のミッションは「すすきのにて、3名でジンギスカンを食べられる店を予約する」こと(ジンギスカン、と限定したのは私の独断である)。このミッションを大したことではないと感じた方はこの任務の真髄を理解していない。某口コミサイトによれば、約300店舗の候補がある。300からベストオブベストを選ぶためには、フィルターは相当洗練されたものでなければならない。まずは書類選考で10件程度まで絞る必要がある。集中して向き合っても4時間くらいは要する非常に厳しい戦いだ。

一般的にネットでお店を選ぶ際にキーとなるのは口コミの点数と内容、そして立地や金額だろう。私は違う。まず点数など気にしたことがない。立地や金額は書類選考を通過してからで良い。口コミは拝見するが、個人的感想など一切スルーし、店側の主張の裏付けとしてのみ参考にしている。そんな私のベストオブベストのための書類選考フィルターは以下である。

・現地だからこそ食べられるお店か。
・メニューに特色そして哲学はあるか。
・飲み放題のメリットをどう提示しているか。
・ビールは札幌ならではのクラシックか。

要は「独自性」と「地域性」を店としてきちんと昇華していることが重要なのだ。
レビューサイトのメニューについても鵜呑みにしない。コロナ以後、特にコースメニューは改変が行われた可能性が高い。投稿された日付までチェックするのが真の任務遂行である。

そして最後のフィルターは「先進性」。新しいものを取り入れお客様にメリットを打ち出す姿勢は、デジタルを扱う我々の思想と親和性が高い。予約システムの自動化や注文方法、決済方法までチェックする。ただしここはその店主のポリシーなどもあるから、上述2点からすると優先順位は劣るかもしれない。

そして、晴れて書類選考通過組の10件には電話をする。言葉を返すようであるが、ここはアナログに電話である。何故ならこの電話は情報の宝庫だからだ。営業時間であるのに留守電になっている、出ない、というのは論外だし、かといってワンコールで出られるのも不安になる。ちょっと無理目なこと(例えば大人数だったり直前予約だったり)をお願いしたときに「全然大丈夫ですよ!」と言われるのも不安になる。そしてその電話で得た情報を加味し再度シミュレーション、ここなら皆楽しめるだろうという絵が頭に浮かべばOK、フィニッシュと相成る。

こうして我々は1軒のベストオブベストに辿り着いた。最後の任務である予約はWeb予約システムから行った。完璧だった、ここまでは。
が、予約完了から30秒後、私のケータイに電話があった。このお店からだ。早速の予約確認かと思ったがそうではない。なんと、店の独自性として評価していた「鹿肉」が品切れだったのだ。言うまでもなく「独自性」は私のお店選びのキーである。北海道ならではの食材を北海道で食すという貴重な体験ができないとは何たることか。そしてこの時すでに時遅し、私の店選びのために残された時間はすでになく、歯軋りをしながらも「では鹿肉はなしで良いです」と言わざるを得なかった。悔しい。最後の最後までお店選びのために時間を使い切ってしまい、予約後の不測の事態に対処する余裕がなかったのが敗因だった。

そして数時間後、我々は北海道での仕事前にジンギスカンを楽しんだ。久々にリアルに対面した社内メンバーにも喜んでもらい、食事会として大成功、大いに盛り上がった。この時間のために頭をフル回転させ知恵を絞り、移動の時間をすべて調査に費やした甲斐があったと私も一応満足であった。

ただし、本音を言えば、もちろん100点満点ではなかった。何せ鹿肉が食べられなかったのである。「私もまだまだだな」と自嘲しつつ、次なる標的、来週の友人との会合に向け完璧なお店探しを追求するのである。

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