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世界認識の休校期間

2022.01.27
高畑龍一

とうとう息子の保育園がコロナで休園になってしまった。ということでイクメンぶりに拍車をかけざるを得なくなったのだが、彼の言葉が急に発達する時期だったおかげで楽しめている。
今日も、オムツを替え終わった時に突然「ありがとう」と言われて驚いた。こういう場面で親に礼を言えと教えたことはないが、それまでよほど気持ち悪かったのでホッとしたのか、謎である。さらに、Youtubeでアンパンマンを見つけて、こちらを振り向いて「アンパンマンがいた」と言った。いままでは、アンパンマンを見て「アンパンマン!」と言っていたのだが、第三者の存在を意識するようになったということだろう。着実に上達している感がある。
しかし、1階の居間にいて2階の遊び部屋に行きたくなると、いまだに「下に行く」と言う。上下の概念はあるようだが、まだ単語と結びついていないのだ。「2階は『上』だよ」と言うと、キョトンとした顔をして「上」とオウム返しするが、どこまで分かっているのか全く不明。
いずれにしろ、彼と過ごしていると、世界の認識と言葉は表裏一体の関係だということが実感できる。対応する言葉を知らない分野は、彼にとっては混沌とした世界。それが霧が晴れてくるようにどんどんクリアになってくるのだから、これから毎日がますます楽しくなるはずだ。
翻って、大人とて混沌とした世界に生きていることに変わりはない。なにしろ人間が分かっているのは宇宙の5%だけなのだし、私たちが口を酸っぱくして言っている「メッセージ発信」の「メッセージ」も、そもそもは言葉にならないものを言葉にしようとする試みだ。「上下」のように、何かを逆に認識している可能性すらある。
謙虚に楽しく霧を晴らしていきたいと思い直した休園3日目だった。

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