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頭になぜ林檎を乗せるのか

2021.01.10
篠崎レイ

遡ること、あれは5年前の夏。
フリーランスに毛が生えた程度のWeb制作会社を経営していたころの話です。

20代半ばでえいや!と立ち上げた会社ではりつつ、
幸いなことにメンバーにもお客様にも恵まれ刺激の多い日々を過ごしておりました。
が、まあ、若者が陥りがちな
「なんか人として、事業として、ヒトクセあったほうがいいんじゃない?」
といった思考に囚われる毎日でした。

「一角の人物になりたい欲」とは恐ろしいもので、
またそれに20代のアクティブパワーがかけ合わさり、
「頭に林檎でも載せたプロフィール写真を撮ろう」と思い至りました。

なんで?って思いますよね。
私も今ではそう思います。なんで?

ただ、当時の自分としてはそれが最大の「クリエイティブ」だったのです。

林檎といえば知恵の実です。
人間を人間たらしめた知恵の実。
それを頭上に掲げることによって「なんかクリエイティブな雰囲気」を
醸し出せるのではないかと目論んだのです。

結果として、これは「狙った効果は得られないけれど、結果としてやや成功」でした。

まず、誰にでも「ツッコミ」を入れられるようになりました。
私のプロフィール画像を見た人のうち、体感8割程度の方が
「これ林檎ですか?なぜ乗せてるのですか?」と声をかけてくださるようになりました。

「しめた!お客様との会話のきっかけになるぞ!」と思った私は完全に味を占め、
それから毎年1月1日に林檎を乗せプロフィール写真を刷新することにしました。

とはいえ、ただ撮り直すだけでは面白くありません。
なので、品種を変えることにしました。
初年度は近所のスーパーでなにげなく買った「ふじ」でしたが、
その次は「ジョナゴールド」、またその次は「紅玉」など
誰も気がついてくれないちょっとしたチェンジを仕込みまくりました。

そして毎年毎年、お付き合いのある方々に向けて、
今年のプロフィール写真と品種情報と新年の挨拶とを送り続けました。
そうこうしている内に「林檎の人」と呼ばれるようになり、
お客様から新規のご紹介をいただく際にも「ああ、あの林檎の人」と認知され、
オープニングトークは林檎で完結されるようになりました。

私はこれこそが、ブランディングだと思っています。

まずは「こう見られたい自分」を定義し、
「どう表現するか?」を考え、
またそれを「継続」し「発信」していく。
その繰り返しにより「認知」され馴染んでいく。
まさにブランディングではないでしょうか?

ただ、私の失敗としては、最初の目的を達成していないのです。
本来であれば「クリエイティブ」と感じてもらうのが目的であり、
「会話のきっかけ」や「林檎の人」として認知される事を目指していた訳ではない。
なので「狙った効果は得られないけれど、結果としてやや成功」と捉えています。

正しい認知のされ方は非常に難しいですね。
今ならもう少し、効果から逆算して違うアプローチができたかな、とも思います。

ただ、結果として、あくまで棚ぼたですが得られた効果は私の財産となりました。
ので、今年も若気の至りとしか言いようのない林檎を乗せて
写真を撮り直すのでした。

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