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仏とホームページ

2023.04.24
佐伯典昭

私は当社でHP制作を担当しながら、本業は寺の副住職。親の跡を継ぎ地元に根差す寺を運営している。実は日本における寺の数はコンビニより多く、坊さん稼業なんてそこまで変わった職業ではない。ないのだが「私、実は坊さんなんです」と伝えるとクライアントも含め皆驚く。「スキンヘッドは伊達ではなかったのですね!」なんて言われたこともある。

そんな寺稼業、異色扱いはされるが、中身は至って普通の会社と一緒。最近は現代風も吹いている。単に仏の道を説くだけでなく、寺ビジネスもさかん、古くは幼稚園経営や不動産管理、お守りに代表されるグッズ販売などの多角化経営する寺も多いし、最近ではコンサート会場として解放する箱物ビジネスや、寺カフェ、寺バーなどの飲食も手がける同業者も多い。しかし私の寺は時代の最先端を行く寺ビジネスには手を染めず、しごく平凡に寺を運営している。我ながら割とオーソドックスな坊さんだと自認しているが、確かにHP制作を手がける坊さんはなかなかいない。これは不思議だ。私が思うに、寺稼業とHP制作は非常に相性が良い。相性の良さを感じる点は以下3つ。同業者にHPビジネスを勧めたい理由を考えてみた。

まずライフスタイルが合う。寺稼業で一番ネックなのは自由に外出できないこと。家族全員で出かけて家がもぬけの殻になることは許されない。世の中に多種多様な仕事があれど、待機時間の長さはTOPクラスだろう。最近は留守電や電話転送なので昔よりは改善しているが、とはいえ原則私は家にいなくてはいけない。365日24時間家にいても大してすることはなくなり、自宅で何かできることを探したくなる。そこでHP制作。パソコン1台でクリエイティビティのある仕事ができる。本業を邪魔することもない。家族の外出を笑顔で見送ることができる。この点だけでもHP制作業は寺稼業にとって実にありがたい。

次に、多種多様な人と交差する点が似ている。寺は人を選ばない。子どもも遊びに来るしおじいちゃんおばあちゃんもくる。背広を着たサラリーマンも、作業服を着た土木工事者も来る。仏様は間口が広い。HP制作も同様。子どもこそお会いしないが、ビジネスというものは本当に多種多様だと常々感じている。この仕事をしていなかったら知り得なかったビジネスや商材、サービスを知り、その本質を突き詰めて考えることができる。世の中の奥深さというか幅の広さを知ることができ非常にありがたい。世の中への好奇心が旺盛な私に、うってつけの仕事だと思う。

最後に、実は立場が似ているという点がある。坊さんというのは路傍の石のようなものだ。主役は参拝者であり、その参拝者の苦悩に対して何ができるというのではない。私がいくら仏に祈り、お布施を積んでもらったとて明日の状況を改善してあげることもできないし、その人を良い人に生まれ変わらせてあげることもできない。ただただ、寄り添い話を聞き、隣に存在するだけである。そして1年後、2年後再び参拝に来てくれた時に、その人の姿、苦しみが少しづつ変わっていくのを感じることができる。むろん私が何をしたわけではない。が、時間というか空気というかが人の苦しみを和らげ動いていることを実感し、そこに仏の存在を重ね合わせる。
HP制作も同様だ。その会社を体現したHPにしようと頭を捻りこだわり遂行し無事にローンチしたとしても、すぐその会社の売上が劇的に伸びるわけではない。その意味では実に無力だ。じゃああの苦労は無駄なのかと言えば、1年後、2年後の保守作業などで再度その会社と対峙するとその会社の姿が少しづつ変わっていることを感じる。HPを作るというのはクライアントにとっても自己を見つめ未来へ向かうという苦しいプロジェクトで、それが少しづつ会社を変え、なりたい姿に変える。HPはその傍で常に指針として存在し、会社を応援し続ける。それを見るのはとても嬉しい。ブランディングを軸にしたHPに会社を素早く劇的に変えること、いわば即効性はないが、確実に変えていく。それは坊さん稼業と似ているなと思う。

自分にできることには限りがあるが、人や企業に寄り添い変化する姿を実感できるのは嬉しいし楽しい。これからもHPに宿る仏を感じながら、家族に自由時間を提供しながら仕事を楽しもう。

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