日野自動車の不正発覚が止まらない。親会社であるトヨタの豊田社長は「極めて残念」と言っているが、もっと深刻な問題なのではないか。
ついに小型トラックも出荷停止となった日野自動車! 基準値合格もみたび試験不正発覚
https://bestcarweb.jp/news/493510
報道によれば、日野が独自に開発した技術に固執するあまり不正に検査したということのようだ。難しい技術であり、そこにエンジニアの思いが詰まっていたとは理解できる。とは言っても、言わば未完成のものを無理に市場に出すというのはないだろう。トラックドライバーの間では「パワーがない」「燃費が悪い」という評判も出ていたという。
トヨタの方にも実害が生じている。小型バスや小型トラックの出荷が停止されているのだ。豊田社長の内心は怒り心頭のはずだ。
トヨタの小型バス『コースター』、燃費性能が諸元値満たせず…日野エンジン搭載
https://response.jp/article/2022/03/04/354858.html
実は、この『コースター』は名車の誉れ高い一台だ。1962年に登場して以来、なんと110か国で人々の生活を支えている。車体が頑丈でロードクリアランスもたっぷりあるので、舗装されていない道路も苦にしない。そもそも壊れにくいし、壊れても簡単に修理できる。数十万キロは平気で走る。2017年には24年ぶりにモデルチェンジして4代目となって、ますます評判が高まっている。
中国にいた頃も「『コースター』の中古を持ってこれないか?」と聞かれたことは一度や二度ではない。「パレードの時に政府の役人が乗っているのをニュースでよく見ていて、共産党御用達として有名。だから企業が取引先を空港まで迎えに行く時などに使うとメンツが立つ」のだという。中国メーカーがライセンス生産している『ハイエース』とは違って、一目で「トヨタ製」だと分かるのもポイントだそうだ。
「右ハンドルだけどいいのか?それに中古車は登録できないのでは?」と聞くと「問題ない。左ハンドルに改造する。ナンバーも手配できる」と言う。深圳で左ハンドル化したという『ランエボ』を見せてもらったことがあるが、少なくとも見た目は問題なし。この手の作業はお手の物だ。しかし、偽ナンバーをつけているのが見つかって、こちらにトバッチリがこないとも限らない。だから、丁重にお断りしていた。
バスやトラックは、工業製品としての真価が問われる。真価が認められば、ブランド認知に大きく寄与してファンが拡大する。それが「本国で不正検査していたらしいよ」となればどうなるのか。EV化で日本メーカーの地盤沈下が懸念される中、残念では済まないだろう。