最近企業の海外進出に関する相談が増えている。アフターコロナだし、未曽有の円安だし、当社は海外コミュニケーションに強いし…と、相談が増えるのも必然。そして相談を受けながら、BtoB製造業は本当に今過渡期だな、と痛感する。ノウハウもないし社内体制も整っていない。長いこと護送船団方式で商売をしてきた影響は本当に大きい。そこで当社は「いながらグローバル」というサービスを作った。
いながらグローバル
https://cospa-tech.com/service/commu/
「日本にいながらグローバルで商売をしよう」という試みを支援するサービスだ。海外進出に興味がある、踏み出したい、でも二の足を踏む、という人は是非検討してほしい。まずは始めることが最も大切だと考え、「はじめの一歩」に特化した、導入ハードルの低いサービスにしている。
と、ここまでが前置きなのだが、このサービスを展開するにあたって随分市場調査もやった。特に日本企業が多く進出するベトナム商圏について随分詳しくなった。ご存じの通り、ベトナムは親日派が多く国民性も似ており真面目、1990年代から多くの日本企業が進出している。市場としても成長性が高い上に日本製品に好意的で、これから海外進出を考える日本企業がまず進出先に考える国のひとつ。とはいえ近年それも変化している。ベトナムでまだ日本企業は勝てるのか。勝つとしたらどのような分野か。その変化の風を以下にまとめておきたい。
◆ベトナムで「日本企業」はもはやオワコン?
多くの国でMade in Japanの神通力は消え失せたとの記事を見かける。確かにベトナムにおいても日本企業にかつての神通力はない。というよりも、アメリカ企業だろうと中国企業だろうと「どこの国の企業か」で何かを判断することがなくなった。優良企業か否かは個々の企業ごとに個々が判断する。よって冒頭のような「日本企業はオワコンか」という問い自体がもはやナンセンス、という結論に至った。
◆コロナ前後で市場はどうなった?
飲食、小売、旅行…ビックリするレベルで縮小した。ベトナムは、日本に比べて良しにつけ悪しきにつけ動きが激しい。コロナ初期、日本企業の動きが縮小するや否や日本語学校などの関連サービスも全く見なくなった。そしてアフターコロナの戻りはボチボチ。ただ内需は拡大しており、最近ホーチミン郊外にできたイオンは活況の様相を呈している。その他コンビニエンスストアやデリバリーサービスも元気。オンライン決済も定着し、BtoC分野についてはコロナ前よりバージョンアップして戻ってきた。一方で「パパママショプ(小規模小売店)」は苦戦。ベトナム商業はパパママショプが小売りを牽引して今に至るが、コロナがその淘汰の波を運んできてしまった印象がある。この傾向は中長期的に続くだろう。
◆日本企業の良いと言われるところはどこ?
前述の通り、今や「どこの国のか」で企業や製品を選んでいない。ただローカル企業と比べると外資系企業という範疇で日本企業も良い印象を抱いてもらえる面はある。労働者の賃金が高い、キャリアステップできる、製品クオリティが高い、安心できる、ただし購入価格は高い。など。もちろんこれらは「外資系企業」全般の印象であり、別に日系企業に限ったことではない。
ただ、唯一BtoB製造業の世界に限れば「日本ブランド」へのリスペクトがまだ少し残っている。BtoB製造業は設備の大きさや価格の大きさから「信頼と実績」が大きくものをいう世界。「安かろう悪かろう」は困るのでクオリティに対する目が厳しい。日本企業の99.99%を追求する能力(製品そのものだけではなくプロセスや運用も含めて)が使い勝手や耐久性などの面で差をつけ、鉄道などのインフラ関係を中心に「選ばれる」地位にある。とはいえ、カタログ上で見るスペックは他国の企業のものと同等というケースも多く、数値化されたものではない。いかにこの数値化されていない「信頼と実績」を維持するかがポイントだろう。
◆日本企業に求められるものは?
これは圧倒的に価格。ベトナムは成長途上で世界各国の名だたる企業が進出してきているため日本とは比べ物にならないくらい競争も激しい。その中で日本企業の製品・商品の商売には大抵工夫がない。高クオリティで安いものがどんどん出てくる市場なのだから、もっと頭を使い賢く商売すべきだ。
日本企業の成功事例で真っ先に思い浮かぶのがエースコックである。エースコックの即席麺「ハオハオ」はもはやベトナム国民食。認知率100%を誇り、今や即席麺の代名詞にまで成長した。徹底的にローカライズされた味、ハオハオ(好き好きという意味)という親しみやすいネーミングもさることながら、圧倒的に支持される理由は「一食25円」という価格。ベトナム市場に徹底的に向き合い、この低価格で提供する仕組みを構築したエースコックに敬意を表する。
もちろん日本企業の品質を追求する力や弛みない努力は素晴らしい。素晴らしいが、それだけではもう勝てない。世界ではそれを凌駕するサービスが次々に生まれている。日本ブランドだけでは勝てない時代なのだから、徹底的に世界市場に向き合い、プラスアルファすべき点は何なのか、どう勝っていくのかを深くしつこく考えることが肝要である。