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多言語サイトの心得

2020.12.13
中島嘉一

多言語ホームページとは、日本語のほかに英語や中国語などの外国語ページも備えるホームページのことです。一般的には、ホームページの右上に言語切替ボタンを設置して、言語を選ぶようになっています。また、ユーザーが見ている場所(ニューヨークや北京など)によって、自動的に言語を切り替えてくれます(ニューヨークなら英語で表示するなど)。

こうすることによって、外国の人にもホームページを読んでもらえるし、Googleなどの検索サイトで探して見に来てくれるようになります。ブランドのコンセプトや商品/サービスの特徴がしっかり伝わり、それが口コミに乗ることも期待できます。日本に興味がある外国人の中には日本語に堪能な方もいますが、それでも、英語や中国語で読めた方がはるかに便利です。

特に多言語ホームページが活躍するシーンがいくつかあります。

■越境EC
世界的にウィズコロナで経済が停滞する中、オンライン物販(EC)はむしろ活況を呈しています。日本製品のクオリティの高さには定評があるので、いまこそ海外に向けてアピールするチャンスとも言えます。英語のECサイトに慣れている人がほとんどなので、まずは英語ページが必須です。

■インバウンド対応
コロナ流行が収まれば、インバウンドも徐々に回復してくることが期待されています。イギリスの海外送金会社「Remitly」が行った調査では、日本は世界の人が「移住したい国」の第2位になっています。また、日本インバウンド・メディア・コンソーシアム(JIMC)が行った調査では、日本は中国人が「アフターコロナに行きたい国」でダントツの一位になっています。2019年の3,188万人の水準に戻ることを期待しましょう。

■在日外国人
忘れてはならないのが、日本に住んでいる外国人です。約300万人の方が居住しており、大阪市や茨城県、広島県の人口を上回るほどの大きな市場です。日本語に堪能な方もそうではない方も、英語や中国語で情報収集できれば、とても便利になります。まずは在日の外国人がお客様となり、その方の母国に口コミが広がるという効果も期待できます。

多言語ホームページ制作の落とし穴

「そうか、では多言語ホームページを作ろう」となっても、コトはそれほど簡単ではありません。気をつけるべき点がたくさんあります。

■翻訳
まずは言語です。翻訳と聞いてまず思いつくのがオンライン翻訳ですが、まだまだ実用的とは言えません。どの程度かを知るためには、日本語→外国語を訳してみて、そこで翻訳された外国語→日本語に再度翻訳してみると分かります。

たとえば、

眼から鱗のもちもち感!

を訳してみましょう。

Google 翻訳(日→英)
The chewy feeling of scales from the eyes!

Google 翻訳(英→日)
目からうろこ状の歯ごたえ感!

なんか恐ろしい感じがしますね。こんな文章が次々に出てきたら、読み手が混乱すること必至。ブランドのイメージも損なわれてしまいます。いまのところは人間翻訳、特に専門用語に長けた翻訳会社や翻訳者にお願いするのが安全です。

■イメージ
何気なく使ったイメージが誤解を生むこともあります。

例えば、熊。

相手がアメリカのビジネスマンや投資家の場合、「ベア」と聞くと株式など相場の「価格下落」「弱気」をイメージしてしまいます。熊が前足を振り下ろす仕草に由来する言い方です。蛇足ですが、その反対は「ブル」(牡牛)。牡牛が角を突き上げる仕草をすることから、「価格上昇」「強気」を象徴します。

こんなに勇ましい熊であれば問題ないと思いますが、もっとカワイイ熊の場合、中国で問題になることがあります。「クマのプーさん」の文字もイラストも政治的にNGとされているからです。ちなみに、NGワードやイラストが入っていると、ホームページ全体が中国から見えなくなることもあるので、注意しましょう。

■文化の違い
「眼から鱗」も「熊」も、誤解されるのは文化が違うからです。

有名な話では虹の色があります。

日本では「虹は7色」が常識となっていますが、アメリカでは6色、ドイツでは5色など、数え方が違います。2色という地域や、そもそも虹の色の数を意識しない地域もあります。たしかに虹の色はグラデーションなので、何色に分けるかは勝手です。なぜ私たちが「虹は7色」と思うのか。それは、私たちが「虹は7色」と教えられて育ったからです。

もう一つの有名な例は「肩こり」です。

私たちは「肩こり」と「肩が痛い」を区別しますが、英語や中国語では区別しません。

英語だと、
shoulder ache(肩の痛み)
stiff shoulder(硬い肩)

中国語だと、
肩膀疼(肩が痛い)
肩膀酸疼(肩が痛い)

と、味も素っ気もありません。

これらの例から分かることは、「7色の虹」も「肩こり」も実体ではなく、言語によって作られた概念だということです。日本語の中で育ったからこそ、私たちは「7色の虹」や「肩こり」を感じます。

つまり、文化の違いとは言語の違いです。言語が違えば、見えている世界が違う。言語が違えば、単語やイメージの意味が違う。ここに多言語化の難しさと面白さがあります。

言語の違い = 文化の違いを意識して言葉を選び、イメージを選び、メッセージがきちんと伝わるようにしなければなりません。


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