今年は久しぶりに一家で愛媛に帰省。
映画『すずめの戸締り』に感動の涙を流し2回も映画館に足を運んだという娘にフェリーを体験させてあげたく、片道は船旅にした。
大阪南港へは大阪市内から30分。瀬戸内海と言えども、立派に港の雰囲気が漂う。
娘は初めての船旅に興奮しっぱなしで船内を大探索。船中ではお風呂に入ったり一緒に宴会したりと大満喫の船旅であった。
思えばフェリーには学生時代からお世話になった。愛媛から大阪に行く手段として修学旅行でも利用した。そのころの定番、雑魚寝がなくなり全て個室となっていたことには時の流れを感じずにはいられなかったが。
出港から8時間の非日常体験で、我々は愛媛の東予港に到着する。
そこから実家まで60分。途中、昔よく行ったイオンや地元シンボルの松山城が目に入り、懐かしい気分になる。自分も幼いころ楽しんだ山の上公園で、何度も滑り台を楽しむ娘。そのはしゃぐ姿に、久しぶりに感じる「ザ・帰省」の感慨にふけってみた。
いよいよ父と娘の再会だ。
こちらの方が少し緊張する。母は大阪でよく娘に会っているのだが、出不精の父は4年ぶりなのだ。お互いにおじいちゃん、孫と頭でわかっていても、娘も父もすぐには実感が湧かないだろう。
父が「大きくなったね」と話しかける。
娘が「こんにちは」と応じる。
たった一人の孫なのだから他に言いようがあるだろうと思いつつ、たどたどしい感じが微笑ましくもある。それでも時間を一緒に過ごしていると、ようやく少し打ち解けてきた。
かたや、トイプードルのぴーちゃんは娘のことを一発で思い出した。そして、すぐに娘とじゃれあい始めた。上海時代に飼っていた犬で、娘が0歳から3歳までいっしょに暮らしていた。それから4年経っても全く忘れていなかった。これには少し感動した。
ぴーちゃんと娘が共有した時間が大切なのだろう。群れを愛するのは社会性の動物である人間と犬に共通した本能。日々五感で相手の存在を認識し、愛着の土壌を作るのだ。
では、メタバースで一緒にいた時間はどうだろうか。共有した時間となるのか?
父と娘の場合は、ちょっと厳しい感じがする。犬と娘の場合は、もっと厳しい感じがする。
メタバースは意味なく一緒にいる場ではない。目的があって集まる場だ。
五感が刺激されないメタバースで群れは形成できるのか。
我が愛犬はどうすれば楽しめるのか。
ようやく団欒ムードとなった家族の姿を横目に見ながら、新たなテーマが生まれた正月になった。