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カリフォルニアと釧路の共通点

2023.08.21
大平裕佳

「北海道いいなあ、涼しいんでしょう?」
この夏本州のメンバーからはよく言われた。たしかに私の住む釧路は季節風の影響を常に受け夏は濃霧の日が多く、平均気温25度前後と他の地方より涼しい。その分冬は極寒。太平洋側なので雪は少ないし日差しは暖かいが、外は日中でもマイナス6度以下がデフォルトのためなるべく外出せず閉鎖的な時期が長い。私自身も、風光明媚なところ、開放感のある土地への憧れが幼いころから少なからずあった。そして私は高校を卒業してすぐ、厳しい気候の道東を離れてリフォルニア州LA近郊にあるロングビーチの大学へ進学した。

当時私は18歳。ドキドキしながらアメリカ生活を開始したが、あっという間に馴染んだことを覚えている。LA近郊は日本人向けのスーパーマーケットあり、日本の漫画やらテレビ番組やらのレンタル屋さんありで食とカルチャー面では日本を渇望する余地がなかった。加えて街にも同級生にも日本人がたくさんいた。湯船に入れなかったりバスの時刻表が意味なかったりとそれなりに色々あったが、カリフォルニアの明るい太陽の元では大した問題ではなかった。似たような境遇の日本人の友人に囲まれ青春を謳歌した。今思えば「もっとストイックにアメリカでしかできないことを満喫すべきだった」「自分を追い込み英語レベルを少しでもあげるべきだった」のだが、それを言っても当時の私には馬耳東風だろう。今でも私の中ではキラキラした大切な4年間だ。

大学卒業後は日本に戻った。東京にも住んだが全く馴染めず、そして今は釧路で家族と共に過ごしている。両親の元が一番心地よかったし、なにより生まれたばかりの甥っ子が可愛すぎた。そして自分の子どもの成長も両親に見せたかったし、自分の子どもたちにとっても祖父母が身近にいる環境がいいと思った。私の祖母は私が生まれたときには他界しており寂しい思いをしたこともその思いの根底にあるのかもしれない。

ということでイマココ、釧路でWebサイトの制作をしたり子どもたちに英語を教えたりしているが、こう振り返ってみると、カリフォルニアにせよ釧路にせよ、私はいつも「居心地の良さ」を追求してきたのだなと思う。些細なことではあるが、バス車内でイライラしている人がいればできるだけ離れて負のエネルギーを受けないようにするし、ファミレスでも「自分の子どもがこうだったら嫌」という高校生グループが隣のテーブルに来たら席の変更を打診する。差しさわりのない限り、居心地の悪さを我慢することは私の人生において意味がないと思っている。

居心地の良さとはいったい何だろう。居心地の良い場所というとふかふかソファと素敵インテリアのお洒落カフェなどがイメージされるが、居心地の良さを創り出すのはインテリアやファシリティではなく、そこに流れる空気が自分と波長が合うか、ということだと思う。そしてその波長はその場のメンバーが創り出している。「メンバーとの関係が良好」「メンバーと一緒に過ごすことが楽しい」「メンバーと一緒にいると落ち着く」と思えることが大きい。居心地の良さは空間のスペックではなく人が創っている、と言い換えても良いかもしれない。

ふと、Webサイトの制作でも居心地の良さを追求してるのかもな、なんて思った。良いWebサイトの指標は「総PV数」「来訪者数」「滞在時間」「再来訪率」などで、全て来訪者の居心地が良ければ高くなる数字。となるとWeb制作会社の私たちが作っているもの、追求しているものはサイトの居心地の良さなのだろう。必要な情報がすっと出てくる、表現が的確でわかりやすい、かゆいところに手が届く、など機能やデザインもこの居心地の良さに寄与するが、やはり一番大切なのは「人」。コーポレートサイトの場合はその会社がどんな性格で何を大切にしていてなにを作っていきたいか、みたいなパーソナルなことを表現することが居心地の良さを創る上で大事なんだと思う。だから私はWebサイトの制作ではその人なり、その会社なりをどう表現するかに注力する。

もちろん来訪者全員が満足する「居心地の良さ」は実現できないかもしれないが、そこは釧路だって万人受けしないのと一緒。再来訪率100%にすることはできなくとも、自身をしっかりと語り、その人(会社)にしかないユニークな表現を続けていけば長く暖かにそのサイトを愛してくれる人は必ず増えると思う。

釧路は空が広い。海の幸も山の幸も豊か。田舎でも都会でもない美しい街。スギ花粉もない。便利さやカッコよさ、野心や向上心ではなく居心地の良さを追求するのって、何かを創り上げるときに実は一番理にかなっているのではないかと思う今日この頃である。

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