世界中どこでも人の取り合いだ。私たちも微力ながら採用活動に励んでいるが、コロナ禍で経済が停滞して失業率が上がっている中国では都市間の人材誘致合戦がヒートアップしている。
家賃や起業支援金もさることながら、驚くのは(条件をクリアすれば)都市戸籍をプレゼントするという施策だ。しかも、上海、広州、アモイ(厦门)といった人気都市の戸籍で、これは強力な切り札になり得る。都市戸籍と農村戸籍の区分がある中国では、社会保障や子女の教育などさまざまな面で都市戸籍が極めて有利なのだ。戸籍が得られるなら、腰を落ち着けて働いて子育てしようという気になる。優秀な人材が多いとなれば企業誘致もしやすくなるし、企業活動が活発になれば街も潤う。さらには、そういう人材の中から起業して成功する人も出てくる。
中国各地で大学卒業生「奪い合い」 家賃補助、起業支援、戸籍取得の優遇策
https://www.afpbb.com/articles/-/3419375
一方、日本では東京都では「外国人起業家の資金調達支援事業」を始めた。
東京都産業労働局政策企画局:外国人起業家の資金調達支援事業
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/06/27/09.html
最高1,500万円の融資が受けられるというのがウリで、なかなか魅力的な制度なのだが、ゆえに噛みつく人もいる。
ひろゆきさん、1500万円「使い切ったら中国に戻るだけ」東京都の”外国人起業家支援策”に「アホ」
https://www.chunichi.co.jp/article/527173?rct=societynews
借入金は家賃や人件費、仕入に使われるので、日本国内に還流する。その結果事業が軌道に乗らなくても、日本人が起業して借金が返せなくなるのと変わりない。そもそも上海や広州の戸籍だったら1,500万円以上の価値があるだろう。「上海か東京か、どちらで働こうか」と考えるくらいの優秀な人を引っ張ろうとするなら悪くない制度だ。うまくいくかどうかは審査の腕次第だろう。