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インバウンドは日本にとって幸か不幸か

2023.03.16
高畑龍一

コロナ禍がようやく一応の収束をみせ、街に海外からの観光客が増え始めた。迎える私たちの反応も様々だ。商機と考える人、活気を喜ぶ人、うんざりする人。私たち自身は、これからの日本はインバウンドなしでは立ちいかないと考えている。その理由と、そして推進する方法を考える。

■インバウンドが必要だと思う理由1:経済

日本はすでに成熟した平和な国である。餓死する人も戦死する人もほとんどいない。このような国はヨーロッパに多く存在する。イタリア、スペイン、フランス…どこも歴史や文化遺産が豊富で観光地として人気がある。日本を含めて、これらの国に共通するのは「成熟した穏やかな雰囲気」だろう。経済成長著しい新興国には流れていない空気。これが人の心を惹きつける。しかも日本は欧米の生活様式を取り入れながらも東洋の思想で成り立つ国、他の成熟諸国であるヨーロッパの国々とは全く違うカルチャーがある。これは私たちの大事な資産だ。工業立国ニッポンが観光立国に転換するのは自然な流れだろう。

■インバウンドが必要だと思う理由2:安全保障

日本は、アメリカと中国の間に位置していて、その国民性は真面目で穏やか。どう考えても危ない。そんな日本が頼るべきはソフトパワーだ。つまり「日本は良い国、壊すなんてとんでもない」と思ってくれる世界の人を増やすこと。無害でユニーク、心を癒してくれるマスコット的存在になるのが一番だ。
そもそも日本人の根底にあるのはアミニズム、其処ここに神が宿っているという感覚。日本のアニメが世界に受け入れられたのも、この日本の感覚が関係している。未熟な主人公が友人と協力して多くの試練を乗り越えて何かを達成するという話は古の神話のようだ。これが世界に受け入れられている(特に元々は多神教の温暖なエリアで)。
中国では、日本のアニメは道徳の教科書のような役割をしている。ハードな受験戦争で恋愛も友情もなく過ごしてきた若者が晴れて大学生になり、親元を離れて自由を謳歌、そして日本のアニメに深入りする。ホロホロと泣きながらアニメを読む19歳の心には、日本への共感、好意、憧憬が刻まれる。そして来日してアニメの聖地を訪ねる。いろいろな人と出会う。日本人に銃を向けようとは思わなくなるだろう。

■インバウンドで大切なこと

では、どのように推進するか。日本人が古来から大切にしてきた「人の気もちになって考える」「相手を思いやる」を徹底して考えれば良いと思う。相手が外国人だと「自己主張するのが常だ」とか「しっかりYesとNoを」などと語る人もいるが、そんなことを求めて日本に来る人はいない。
海外のお客様に喜ばれることは本当に簡単なことだ。例えばレストランのメニューには日本語だけでなく写真を掲載する。相手の言語に合わせるときは、無理をせずシンプルな表現にする。何かを説明する際は相手のバックグラウンドを考えて話す、など。
特に最後の「相手のバックグラウンドを大切に考えて話す」というのは、我々が普段子どもやお年寄りに接するときに自然とやっているのと同じだ。なぜこの品を我々が大切にしてきたのか、背景にどのような歴史があるのか、どうやって生み出されたのか、これまでどのような人がどのような思いで使ってきたのか、などを丁寧に話されると誰でも心が動かされる。しかし相手の文化や常識を踏まえて話すべし。聞き手が自分との接点を見出したり共感すると、一気にファンになってくれる。

■インバウンドの施策

あとはどうリーチするか。旅行客が最も重要視するのが「口コミ」なので、SNSの活用は必須だ。インスタグラムはもちろん、中国系SNSも使う。Google Mapの確認や口コミサイトの状況なども随時チェックしなくてはならない。
しかし、インターネットの世界では、SEOやらインフルエンサーやら小手先と思える施策が跋扈している。提供する情報やコンテンツの方がはるかに大事。これこそが人の心の琴線に触れる。どのようにユニークな体験を提供するか、モノではなくコト・ヒトを消費してもらうか、に焦点を当てる。結局、インバウンドにおいても手段ではなく、中身が大切なのである。

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