新型肺炎④日系企業も活躍、「富士フィルム」医療事業部、技術力と対応能力で防疫体制に貢献
中国ネットメディアには、新型肺炎に対する戦い“抗撃疫情”という見出しが躍っている。目立つのは、やはりIT巨頭BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)だ。強力な自社メディアを利用し、さまざまな実用サイトを素早く立ち上げた。日系企業の話題は、ほとんど見かけなかったが、2月に入り「中国科学網」に富士フィルムの取組みが紹介された。富士フィルムも新型肺炎の最前線に有り、という見出しである。詳しく見て行こう。
富士フィルム医療事業部
中国における富士フィルムの知名度は、それほど高くない。日本のイメージを代表しているのはトヨタや資生堂、ソニーなどやはり消費者向け企業である。もっとも日本人でもフィルム生産終了後の同社イメージは、あいまいだろう。富士フィルムの中国進出は早かった。1984年に北京事務所を開設、それ以来、蘇州富士胶片映像有限公司、富士胶片中国投資有限公司等、いくつもの合弁企業を設立している。早くからしっかり中国市場にコミットしていた。
その富士フィルムは、中国が新型肺炎防疫体制下に入ると同時に、緊急対応チームを立ち上げた。医療事業部のDR(Digital Radiography=デジタルラジオグラフィー)部門、体外診断部門、内視鏡部門が臨戦態勢入りした。
24時間エンジニア待機
富士フィルムの医療事業部は、もともと前線支援チームを持ち、営業、物流、メンテナンス、顧客サービスを連動させていた。窓口の富士フィルム医療技術顧客センターでは、春節期間中も毎日8人が出勤し、最前線の設備運用、メンテナンス、突然の検査需要に対応した。オンラインでの問い合わせには、必ず応える24時間“安心サービス”を提供している。
この24時間ホットラインには、必ずエンジニアが待機、遼寧者、黒竜江者、甘粛省など、遠方の病院もサポートする。設備がダウンすれば、速やかな再開を目指し、一部のエンジニアは、自ら車を運転し駆けつける。
武漢近隣への緊急案件
1月23日、緊急チームは武漢市の北に隣接する河南省・信陽市の人民医院から緊急の注文を受けた。しかしあいにくエンジニアは出払い、当日届ける手段はない。この危機は、かつて専門教育を受けたエンジニアで、現DR営業部員のTに託された。彼は機器を配達し、無事に設置を終え、病院スタッフに操作トレーニングを施した。このスピード対応に、病院から大いに感謝された。機器はすぐに大活躍し、新型肺炎への感染が疑われる26人の検査に用いられた。
富士フィルムのエンジニアの中にも、武漢に滞在、または立ち寄ったため、自宅で隔離されているメンバーもいる。彼らは再び最前線で働くのを楽しみにしているという。防疫に最善を尽くすのは、富士フィルムの基本だ。また緊急対応チームは、2003年のSARSの防疫に参加した、経験豊富なメンバーを抱えている。これも同社の真摯な姿勢の支えとなっている。
まとめ
記事は最後に、富士フィルムの最新医療技術に触れ、概ね好意的な内容に終始している。他の日系企業に関するニュースは、義援金に関連するものだ。
1月末、トヨタと現地法人豊田1000万元(1億6000万円)、資生堂とソニーは100万元、キャノンは先端CT設備を武漢市に寄贈した。
しかし具体的行動を紹介されたのは、今のところ富士フィルムくらいである。もちろん記事として取り上げられない、さまざまな努力が為されているだろう。他の日系企業にも真価を見せてもらいたいところである。