越境ECにとって新型肺炎はどこ吹く風?業界トップ「天猫国際」打つ手すべてが当たる?
新型肺炎による中国消費者の「宅経済化」は、世界の小売業に大きな打撃となった。そして、オフライン中心の海外有名ブランドに、中国ビジネスの再考を促した。未進出ブランドの、中国オンライン市場への参入が相次いだのである。
そのため越境Eコマース(以下越境EC)中国ナンバーワン「天猫国際」は活況を呈した。その様子を見て行こう。
越境ECに追い風
天猫国際は2014年2月にスタートした、アリババの越境ECプラットフォームである。2018年、物流子会社「菜鳥網絡」のブロックチェーン技術を用いた偽物検査を導入し、トレーサビリティを強化した。翌2019年、米中貿易戦争に伴う国家の“大輸入戦略”採用により、越境ECは大ブレイクする。
調査機関iiMedia Researchの「2019Q3中国跨境電商市場監測量報告」による越境EC利用者推移は、下記の通り。
2016年 4100万人
2017年 6500万人
2018年 1億100万人
2019年 1億4900万人(推計)
2020年 2億1100万人(推計)
追い風に乗っていたのである。
2月の輸入商品は絶好調
昨年、天猫国際は“三新”政策を発表した。新品類の育成、新品牌(ブランド)の導入、新商品を最初に発売する、の3点セットで、輸入消費の多元化需要に応える。
それは順調に推移している。例えば昨年8月天猫国際に旗艦店を開設した「龍角散」は、月間売上げが100万元(1,520万円)を突破し、直近3ヶ月は、前月比119%ペースで伸びている。
またこの3ヶ月、20万を超える新アイテムが天猫国際にアップされた。前年比327%のペースである。2月以来、小型家電、厨房家電、美容家電、ゲーム機、ベビー用品、化粧品、スキンケア等は絶好調だ。最も伸びたのは、美顔器やその他美容機器で、前年比459%だった。
天猫国際には、現在78の国と地域から、2万2000のブランドが出店している。その80%以上は、中国初進出で、成長の促進剤となっている。また出店を加速するため、申請用に6大言語版を用意した。また海外ブランド開発チームが、5大陸20ヵ国で活動中だ。
さらに2月中旬、防疫体制下における、海外サプライヤーへのサポート細則を発表した。内容は、プラットフォーム利用経費や運送代行の減免、自動決算への参加を促す、低利融資を行う等である。
武漢での活躍
天猫国際は、封鎖された武漢でも大活躍した。2月末、天猫国際は各海外サプライヤーから、3200セットの生理用品を調達した。保税倉庫に集約後、寄付申請、通関を手早く済ませ、グループ物流会社「菜鳥網絡」が順次、武漢、宜昌など8カ所の病院へ配達した。武漢で働く女性医療スタッフたちは、防護服の着脱に時間がかかり、生理現象を我慢するのが常となり、衛生用品不足が、深刻な問題となっていたのだ。ドイツや韓国などの、海外5ブランドが、天猫国際の要請に応じた。
またマスクでも。イタリアで開発された、デザイン性に優れた高機能(PM2.5等極小粒子も防ぐ)のBANALE MASKと協力し、販売チャンネルを総動員して、最大限の供給を行った。
2019年に“双百計画”を発表、P&G、ユニリーバ、ジョンソン&ジョンソンをはじめ、100大規模ブランドの100万アイテムを扱うとして、関係強化を図ったのが役に立った。
まとめ
国家統計局発表の1~2月の小売総額は、5兆2130億元(約80兆円)、前年比20.5%の歴史的大幅減だった。しかし、それも天猫国際には、どこ吹く風だった。
昨年末には現在100万平米の保税倉庫に加え、国内20カ所、海外10カ所の拡大計画を発表していた。こうした打つ手が、全て当たり、防疫体制下で売上げを伸ばしている。
中国ビジネスはまた一段とオンラインにシフトした。これに対しどのような関係を構築するか、B2Bも含め、日本企業の大きな課題である。