中国向けマーケティング、広告編④ KOL、MCNによる新しい広告とメディアの複合化、「小紅書」
中国ネット界は短視頻(ショートビデオ)の全盛時代が訪れている。TikTokのリップシンク動画を投稿しSNS形成という手法は、手軽にしてかつ、国際性を備え、今や若者ネット文化の焦点の1つである。そして広告業界にも大きな影響を及ぼした。投稿内容は、即広告であり、広告は即内容に転化を繰り返す。そしてより強く対象にアピールできる。影響力の差はあれ、投稿者は誰もがKOL(Key Opinion Learder )になり得る時代である。そしてアプリ自体もめまぐるしい変化を続けている。今回から2回に分け、KOL広告について分析したい。
KOL分析
短視頻ビッグデータを扱う「微播易」と「中国伝媒大学広告学院」は提携し、「2020中腰部KOL営銷発展報告」というレポートを発表した。それによれば最近の傾向は、以下の通り。
1 プラットフォームの精緻化、複数に投稿する傾向、組み合わせ化。
2 単独のKOLから組織化、さらに複合化、AI化。
3 トップクラスのKOLに成果が集中、ミドルクラスKOLは“新戦場”を模索。
NHKでも中国「網紅」(中国版ユーチューバー)を特集する番組が放映された。今では網紅などのKOLは、組織的に育成する時代となった。MCN(Multi-channel Network)
=動画制作者のサポート組織が、ますます栄える。
また3のクラス分け基準はよくわからないが、トップクラスの単価は、ミドルクラスの2.2倍とされている。
化粧品KOLの実態
KOL広告ビジネスの代表は化粧品である。化粧品メディア「聚美麗」の発表した「中国化粧品KOL社交内容営業調査報告」によると、化粧品ブランドがKOLと提携する理由として、MCNとよい関係を持ちたい、直接、有力な投稿者をキャッチしたい、広告代理店を巻き込みたい、などを挙げている。相反する内容を含み、互いに新たな広告の形を模索している最中のようだ。KOLのよく使用するメディアは、
小紅書…24.1%
Tik Tok…18.3%
Wechat…14.8%
淘宝直播…13.0%
微 博…11.9%
B 站…7.8%
快 手…7.5%
の順に挙げられている。このうち淘宝直播は、ネット通販首位、アリババの運営だ。ネット通販が動画投稿機能を強化しているのだ。反対にSNSのWechatや微博、短視頻のTikTokや快手は、ネット通販機能を付加または強化している。首位の「小紅書」は、初めから複合アプリだ。すべてのアプリが複合化、融合化しつつある。KOL広告の立場から、今回は小紅書を取り上げる。
小紅書
小紅書は、海外商品の買い物経験や情報を、社区(コミュニティ)でシェアする草の根運動からスタートした。やがて情報は、買い物から、観光、スポーツ、不動産、ホテル、など多方面に拡大した。これらの情報蓄積を核に2014年、小紅書福利社というサイトを立ち上げる。海外ショッピングのデータ分析、買い物事情など豊富な情報源から、推奨商品と推奨ルートを提示するとともに、独自の越境Eコマースプラットフォームを構築していった。
一方、投稿口コミサイトとしても、若者層の支持、女性層の信頼を獲得し、独自の地歩を固めた。2019年6月、小紅書の月間アクティブユーザーは8500万、登録ユーザーは2億を突破した。
小紅書はKOL広告の方針「品牌合作人平台昇級説明」を発表した。広告主、MCN、KOLの3者それぞれのために開かれている。ただしフォロワー数が1000に達してからのことである。具体的には
1 投稿を商業用途とメモ書きに区分。
2 自社によるKOL養成。
3 トップKOLのロイヤリティ維持に注力。
以上の3点を挙げている。
まとめ
小紅書の広告内容は、比較的マイルドだ。オフライン店舗へ導こうとするO2O広告も少ない。サイト内の調和を維持しつつ、常に新しい広告スタイルを模索していくという。
小紅書は、商業化へのルートを変更する可能性を秘めている。当面、KOL広告プラットフォームのリーダー的存在として、大注目アプリであり続けるだろう。