2020年の中国越境コマースはどうなる(後編)利用者2億1000万人の成長市場に賭ける、天猫国際、海囤全球
各国の郵政事業体は、国際小口荷物では圧倒的な力を持ち、それを近未来の成長エンジンと捉えていた。今回は民間事業体である。こちらもさまざまな記事やデータが発表されている。今後の見通しについてみて行こう。
利用者5年で5倍に激増
直近、民間メディア調査機関iiMedia Research「2019Q3中国跨境電商市場監測量報告」(以下、報告)を発表した。中国越境EC市場の現状と未来の発展趨勢を分析したものだ。それによれば、海淘用戸(越境EC利用者)は激増している。
2016年 4100万人
2017年 6500万人
2018年 1億100万人
2019年 1億4900万人(推計)
2020年 2億1100万人(推計)
と5年間で5倍のペース伸びている。越境ECプラットフォームの掲載商品は増加、経営効率はアップ、品質保証も充実し、さらに多くの消費者を引き付けている。
2019年11月の第2回輸入博覧会(上海)では、契約額711億3000万ドル、前年比23%増を記録した。
アリババがダントツに
次は企業別ランキングである。アリババによる網易考垃(ネットイース・コアラ)の買収以後、市場には重大な変化が進行しているという。Q3のシェアは、下記の通り。
天猫国際(網易考垃含む)52.1%
海囤全球(京 東) 15.1%
唯品会 10.5%
小紅書 4.8%
奥買家 2.2%
蘇寧国際 1.5%
その他 13.8%
越境ECは、物流、倉庫など巨大なオフライン運営コストがかかる。2トップの連合は、資源の有効利用を促し、また消費者の信頼を勝ち取るメッセージにもなるという。
ただし、購入者の40.6%は、かつてニセモノをつかまされたことがある、と回答した。そこで報告は、各プラットフォームの“信任度”も調査している。それによれば、
網易考垃 8.41
天猫国際 8.32
海囤全球 8.19
蘇寧国際 8.01
など知名度の高い大企業が上位にならび、信認されていた。
将来の形勢
越境ECにはどんな未来が開けているのだろうか。ネットメディアは次の4つを挙げている。
1 高成長は継続
越境ECはまだ未開拓の分野が多数あり、巨大なポテンシャルを有している。新規参入者、消費者とも順調に拡大してきた。さらなる高成長の大波を迎えるかも知れない。
2 プラットフォーム間の競争は激烈に
アリババの考垃買収により、一強体制に。しかし、新規市場参入を目指す優良なサプライヤーの獲得合戦は延々と続くだろう。一強であるがゆえに、多企業から強烈なプレッシャーを受ける。そしてかえって企業間競争は激しくなるだろう。実際、唯品会のQ3決算内容は悪化した。
3 オフラインからオンラインへ
越境ECでもオンラインオフライン結合は、必然の形勢だ。オフライン体験の有無は大きな影響を及ぼす。オフライン商店へ引き込んだ上、オンラインで注文する方向だ。将来の新零售(ニューリール)は越境ECを含むものとなる。
4 ブランド保護
越境ECのリピーターの多くは、中産階級以上の優良消費者群だ。彼らは価格以上に品質を重視する。一方当局は、越境ECに対する管理監督を厳格化している。消費者権益の保護をさらに一歩進めるには、品質の確保、ブランドの育成と保護しかない。
まとめ
郵政事業体、民間事業体とも業容拡大に向け、気迫は十分である。一方税関等の管理当局は、監督管理を強める方向だ。実際、電商法施行直後は、厳しくなっていた。しかし、その後は、増加する荷物に対応しきれていない印象だ。郵政事業体も民間事業体も、税関の顔は立てつつ、あまり干渉してほしくない、というのが本音だろう。当局側もこの熱気に、冷や水を浴びせるのは本意ではあるまい。中国越境ECの未来に、陰りはなさそうだ。