中国インターネット報告を読み解く② モバイルアプリの消長を決める90后。
今回はビジネスについて分析する。中国の地下鉄に乗ると、若い乗客はほぼ全員スマホ画面と首っ引きである。スマホビジネスの消長を決定するのは彼ら90后(1990年代生まれ)以降の若者たちだ。その彼らは、アプリの開発者にして消費者である。第44回「中国互聯網絡発展状況統計報告」(以下報告)から何が見えるだろうか。
主力はモバイル
中国インターネット界の特徴は、モバイルに大きく偏っていることである。報告によると、ネットユーザー8億5400万人のうち、8億4700万人、99.1%は、モバイル機器、スマホを利用している。
現在では5年前、4Gの黎明期に比べ、ブロードバンド帯の速度は6倍に上昇、実質的な料金は90%下降している。このため中国人ユーザーは、月平均7.2GBを使用、これは世界平均の1.2倍だ。年間ではモバイル553億9000万GBを使用、これは前年比107.3%増と2倍以上になっている。
2018年の11月11日独身の日セール(双11)でも、売上の90%はスマホ経由だった。ちなみに、中国の固定電話普及率は、2006年にピークの26.7%を記録した。その後は下がり続け、2017年には13.7%となった。2018年6月の省別普及率を見ると、1位・北京…29.2%、2位・上海…27.8%、最下位の広西省は5.6%しかない。ちなみに2018年の日本は65.2%である。2017年は71%だった。
中国は、固定電話が普及する前に、モバイル時代が到来したのである。有線でパソコンに接続し、ネットを閲覧していた期間はほとんどない。
ネット通販アプリ
報告によると、2019年6月、中国のネット通販利用者は6億3900万人、2018年12月批で2871万人増、ネットユーザー全体の74.8%を占める。増加率の高いのは、ローエンド市場と越境Eコマースである。
ローエンド市場の中心は、中小都市や農村で、ここでの利用が大きく伸びた。そこへ寄り添ったのが「拼多多」である。共同購入方式による低価格販売を武器に、中小都市、農村の主婦に、初めてのネット通販利用を促した。同社は2015年の設立以来、わずか3年で、米国ナスダック市場への上場を果たしている。今ではネット通販1位2位のアリババ、京東もこれら地域への戦略を強化、激戦となっている。
越境Eコマースは、海外ハイエンド商品の需要増、2019年1月の電商法施行による代理購入業者のパワーダウン、越境Eコマース試験区での新しい貿易システム研究の進化、などの理由により、注目度は増す一方である。
動画視聴アプリ
報告によると、6月のネット視聴ユーザー数は、7億5900万人、2018年12月比3391万人増、ネットユーザー全体の74.8%を占める。最近の特徴は、コンテンツ視聴型の動画視聴アプリから、若者を中心に“短視頻”投稿シェア型アプリへ、視聴傾向が変化している。
日本でも知名度を上げたTikTokは、その典型だ。いずれも複合型アプリで、解説するのも、今後の消長を占うのも難しい。さらに新しいアプリも続々と登場している。これらはネット通販の販促手段ともなり、KOL活躍の場でもある。音楽、文学、ゲーム、娯楽と商売が協同して、新しい娯楽を生み出しているとも言え、まったく新しいネット界の中心となっている。
まとめ
中国では、公的部門、ビジネス部門、エンタメ部門、それぞれ日本の人口をはるかに上回るユーザー数を持っていた。したがって有力なアプリに、出品したり、広告を出稿したりする効果は、計り知れない。
また越境Eコマースの2018年総額は9兆1000万元、そのうちB2Bは5兆7000億元。B2Bシェアは、62.6%に達し、B2Bにも大きなビジネスチャンスが眠っている。中国ビジネスは、常に進化を続けている。よいプランさえ持っていれば、タイミングを逸した、ということはない。積極的に働きかけたいものである。