【有料級徹底分析】中国インターネット広告市場① ~ 2019年を総括!~
今日は中国のメディアから「2020年 中国インターネット広告市場 年次総合分析」というレポートを紹介します。
このレポートでは、中国インターネット広告市場について、2019年の振り返りと2020年の展望について、各種の統計や資料を使ってまとめられています。
大きく3部にわかれていますので、ここでもそれに沿ってご紹介しようと思います。
第1部は「2019年の市場のホットスポット」、第2部は「2019年の革新的なケーススタディ」、そして第3部は「2020年の展望」という構成になっています。
まずは、レポート全体のまとめ(前書き)です。
2019年は、マクロ経済の低迷とネットユーザーの成長鈍化の影響を受け、中国のインターネット広告市場は総体的に悪化に向かい、企業間の競争が激化しましたが、その中にも活気はあり、ビリビリ動画、知乎などの新興プラットフォームが注目を集めました。2020年、新型肺炎感染拡大の影響を受け、市場全体が深刻な危機に陥りました。肺炎感染拡大と生産活動、生活の長期的共存、いわゆる「withコロナ」がコンセンサスになりつつあり、今後企業は積極的に新興のメディアリソースを開拓し、マーケティングモデルを革新して長期的な発展を求める必要がある、と書かれています。
では、今日はまず第1部「2019年の市場のホットスポット」をご紹介します。
目次
マクロ経済環境の悪化、デジタルマーケティング市場の落ち込み
・中国は経済構造の調整期に入り、経済成長は年々下降していて、2019年GDPは6.1% と前年度に比べて0.5%のマイナスです。
・広告は経済のバロメーターですから、不景気につれて広告の勢いも低下しています。
・2019年の広告主の予算額はここ数年で最低となり、増加予定の広告主は33%のみ、
・2020年は新型コロナの影響で引き続き悪化が予測されています。
デジタルマーケティングは「保有量競争」の段階に突入、タオバオとTikTokのユーザー増加が突出
・2019年、中国のインターネットは全面的な「保有量」時代に突入しました。MAUは10.18億で前年比2.31%の増加、すでに成長は限界に近付いています。
・新たなテクノロジーによるトラフィックの拡大が始まり、今後の「保有量」競争は避けられないでしょう。
・トップ勢の中でもすでに優劣の差が出始めていて、特にTikTokは動画をブースターにしてユーザー獲得で快進撃を続けています。
ニューメディア広告リソースで人材・物資の欠乏状態、マーケティングイノベーションが鈍化
・各種の垂直分野のユーザー増加率は前年比減少。うち、情報、入力ソフト、オーディオエンタメ、アプリケーション管理、動画分野についてはは15%の増加
・ツール、ブラウザは減少
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・動画分野では、ショート動画プラットフォームが爆発的増加で、TikTok、快手など圧倒的強者が出現しています。コンテンツも、従来のエンタメやお笑いものから、知識・文化にまで広がっています。また、eコマースはすでに全国民の認知度を獲得し、トップKOLの販売効果が明らかとなり、広告主もKOLに予算をつぎこんでいます。
・オーディオプラットフォームのユーザーも12.79%の増加で勢いがあります。「ヒマラヤ」「トンボ」などのアプリでは音声広告モデルをすでに確立し、マネタイズチャネルも確保しているので、今後IoTの普及に伴い大きな速成長が見込まれています。
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・入力ソフト、アプリケーション管理などでもユーザーの急速な成長がみられます。ただし、この分野は慢性的に広告枠が不足しているうえ、ツール型アプリケーションなのでユーザーの広告受容度が低い、マーケティングモデルのイノベーション不足などの問題があり、努力が必要とされています。
インターネット広告市場規模の成長減速、検索連動型広告は衰退
・eコマースとライブコマースの融合的発展で、急成長が続いています。
・ソーシャル広告は潜在力が巨大、「ニッチコミュニティ」が急成長期に入っています。
・検索連動型広告は衰退ですが、メーカーはビジネスモデルチェンジの課題に直面しています。
・動画広告市場は安定維持、特にショート動画は増加が顕著です。
以下、分野別に少し細かく見て行きましょう。
●eコマース:圧倒的なユーザー量と成熟した商業モデルでアリババがトップです。
●ソーシャル広告:WeChatがトップ、ウェイボーはマクロ経済の影響で減少、ビリビリ動画、知乎などのニッチコミュニティの発展が目覚ましく、市場の注目を集めています。
●検索連動型広告:減少傾向です。Baiduなどの企業はモデルチェンジを迫られていますが、ユーザーの検索行動を活用し、AI分野への進出で復活を狙っています。
●動画広:全体的に安定しています。中でも「MangoTV」は良質な自社コンテンツで若年層ユーザーを吸収していて、2019年の広告収入は33.5憶元、急成長を続けています。
●ライブ配信:ライブコマースは2019年に大収穫となりました。タオバオ、テンセント、蘇寧、知乎など多種多様なプラットフォームが続々と参戦しました。トップライバーの購買誘導力は強大で、広告主も高額の予算投入を行い、現時点でライブ市場の勢いは非常に大きいです。また、潜在力が大きな分野として、知識系、「情報シェア・宣伝による販促」分野が挙げられています。
広告主の変化:飲料、食品業界ブランドが勃興、自動車・インターネットは減少
・2019年広告投入の主要業界:飲料、食品業界ブランドはトップ継続。自動車・インターネットは減少となっています。
・現在の広告市場のメディアリソースの増加減速と、マクロ経済不景気という状況を併せてみると、今後のトップ10は分散化傾向になるだろう、ただし、食品・飲料・薬品などの分野、トップ独占系傾向は続くだろう、としています。
デジタルマーケティングの二極分化が顕著、ライブコマースの迅速な発展
・ライブコマースは2017年に出現し、2018~2019年に爆発的な発展を遂げました。2020年の新型肺炎の感染拡大が推進力となり、デジタル化、eコマースへの転換という課題を抱えていた小売業にとって、ライブコマースは重要な手段になりました。また、KOLの影響力も拡大が続いており、李佳琦やviyaのようなトップライバーは各ブランドからひっぱりだこで、こうしたKOLたちの影響で、TikTok、快手、タオバオのライブ配信は大量のフォロワーを獲得しました。ライブコマースはコンバージョン率が高いため、広告主への訴求力も高く、5G商業化と技術の進展の中、今後も発展が予測されています。
技術の発展でニューメディアのリソースが成長、IoTがビジネスチャンスを拡大
・今後5G技術の商業化で、さらにトラフィックの増加が予測されています。1つにはオフラインの伝統的メディアのデジタル化というルート。もう1つは、スマートハウス、ウェアラブル機器、スマートカー、工業インターネット、IoT機器の参入です。
・5Gの商業化がIoT定着の駆動力となり、AI、ブロックチェーン、デジタルツイン、エッジコンピューティングなどがIoTの安定運営をサポートする、としています。
・IoTはすべてのプラットフォームを連結させ、市場の潜在力は巨大であるとしています。
・ただし、課題もあります。それは、新たな広告形式の確立です。
現在市場にある広告形式はあくまでも「スクリーン上の視覚表現」。多様で複雑なIoTという新たなメディアに対応する、新たな広告形式を開発する必要がある、と提言しています。
第1部はここまでです。次回の第2部は「2019年の革新的なケーススタディ」についてとなります。