中国向けマーケティング、広告編⑥ KOL、MCNによる新しい広告とメディアの複合「微博」「淘宝直播」
今回は中国向けマーケティング広告編の最後として、「微博」と「淘宝直播」を取り上げる。微博は、中国ネット界を見渡しても、この10年、安定した地位にある。「淘宝直播」はネット通販の始めた動画サイトのはしりだが、このところ急速に存在感を高めつつある。
微博(ウエイボー)とは
微博は化粧品KOLランキング5位を占めている。
微博は、ミニブログまたは中国版Twitterと解説されることが多い。微博(新浪微博)は2009年8月、試験運用を開始した。このときは、娯楽や生活情報をシェア、交換することを目指した。実際に立ち上げたときは、メール機能や転送機能などSNSの体裁を整えていた。
そのため瞬く間に浸透し、5ヶ月後の2010年1月には7500万人のユーザーを獲得していた。最新のQuestMobile2019年秋季モバイルアプリランキングによれば、最新のユーザー数は4億2665万となっている。
微博は戦略として、当初から有名人による発信を重視してきた。これは功を奏し、今でも有名人や外国人にとって最も手軽な発信ツールだ。日本人タレントもファン獲得に向け積極的に利用している。ちなみに2019年3月の日本人タレントのフォロワー数ランキングは
1位 蒼井そら 2位 福山雅治 3位 福原愛 4位 水原希子 5位 古川雄輝 というやや意外な顔ぶれである。昨年から始めた木村拓哉は、この時点で12位だった。乃木坂46や渋谷ハロウィーンの様子など、豊富な日本情報がアップされている。
KOLに高い利便性
微博の正規広告は、「微博広告」が扱う。広告を、動画視聴、検索、情報、暴露、の4種類に分け、各業種別に基本のアイデアを準備している。広告技術に長けた印象だ。成功例として、スマホで快進撃中のOPPOを紹介している。何と3億5000万人が視聴したという。
微博に対するKOLの投稿は、そのまま広告といってよい。微博側は登録を個人と官方に分類して対応している。官方とは、網站(政府機関等)、媒体、高校(大学等)、企業などである。かつてはKOL用の微博達人というカテゴリーまで作っていたが、今はなくなっている。あまりに増えすぎ、差別化できなくなったためとみられる。しかしかえって、投稿へのハードルは下がった。文字投稿に関してはTwitterと同じ140字制限があり、もともと平等だ。
2014年、米国ナスダック市場へ上場、これはアリババと同期である。そのアリババとは2013年から提携していた。2018年には微博への出資比率を高めている。
淘宝直播とは
そのアリババは、微博だけでなく、「快手」など他の短視頻アプリとも提携している。それだけでは飽き足らず、自らも動画投稿を手掛けている。
2016年3月、アリババは通販サイト「淘宝」の動画テストを開始した。同年4月、女優papi醬による実演販売を放映したところ、50万の視聴があった。翌月には、視聴者は1000万、動画の投稿者は1000人を超えていた。以後順調に発展し、2019年1月には、独立のアプリとなった。
スマホでは淘宝アプリの下部に表示される。画像とキャッチコピーに惹かれて、タップすると、商品紹介動画が始まる。従来に加え、新しい商品の検索方法が増えた感覚である。
直近のニュースによると、10月中旬、ボルクヴァルト車(旧西ドイツのブランドを2015年、中国企業が復活させた)の販促活動を淘宝直播で行い、1623台、2億2000万元(32億円)を売上げたという。
まとめ
短視聴とネット通販の共同販促活動が、大きな効果を挙げている。ますます盛んになるのは確実だ。否応なく、両者の距離は縮小していく。
そして投稿の生産者、消費者とも90后以降の若い世代が大部分を占めている。各アプリ、投稿内容の精査はするが、敷居は下げ、投稿を募る方向だ。やがて従来のSNSにとって変わる可能性も無きにしも非ずだ。一、方世代間ギャップの拡大にも貢献する可能性も十分だ。中国社会イノベーションの最前線であることは間違いない。