2019年を振り返る④インターネット界10大事件後編、微博、滴滴出行、網易、ファーウエイ、水滴筹
前回に続き、2019年後半の事象を見て行こう。事件は10月以降に集中した。
微博MCN
微博とは中国版twitterと呼ばれるミニブログである。MCN(Multi-channel Network)とは動画投稿者のサポートやマネジメントを行う組織・機構の総称だ。
2018年9月、微博は2000を超えるMCNと提携関係を結んだ。4.6万のアカウント、60分野をカバー、ウインウインのオープンな関係を構築するとした。
10月、微博は突如炎上した。創業途上の面白エピソードと名乗るアカウントが「ニューメディア巨頭硬直した死体の舞台劇」という作品をアップした。「これは現場の真実を物語る。トラフィックはゼロだった。」と暴露した。しかし、MCN蜂群文化公司から改めて投稿すると、トラフィックは爆発的に増加した。微博は公平性の確保について、釈明を迫られた。
滴滴出行、女性差別?
11月、滴滴出行は殺人事件以降、停止中の乗り合いサービス「順風車」を、ハルビン、北京など7都市において、試行期間を経た上で再開すると発表した。しかし、試行期間中の運用案では、男性客と女性客の利用時間が異なっていて、物議をかもした。男性5:00~23:00、女性は5:00~20:00、つまり女性は20:00以降利用できない。少なくない女性ネットユーザーが、女性差別であると声を上げた。滴滴は最終的に、男女同一運用とし、議論を収束させた。
網易(ネットイース)人員整理
11月、「網易の人員整理、病に侵された警備員まで追放。網易は悪夢。」と題する一文がアップされた。文章の作者は、網易で受けた数々の不公平な待遇について記していた。拡張型心筋症と診断された後、人事からさまざまな嫌がらせを受けた、という内容である。
これも、ネット上で激しい議論を巻き起こした。官製メディア「人民網」までネット世論のデータを公表した。これを受けて網易も公式に反応せざるを得なかった。当該の人員は粗暴で、妥協できない等の問題点や、会社の行動を事細かに反論した。結局両者は1週間後に和解し、騒ぎは収束した。
ファーウエイ251事件
11月、ネットメディアにある「刑事賠償決定書」がアップされた。これがファーウエイ251事件として、論争を引き起こす。ファーウエイに12年勤務したR氏は、2018年12月、離職に際し30万元(470万円)の退職金を受けとった。ところがのちに、企業秘密漏洩、恐喝に当たるとされた。そして2019年8月、証拠不十分で釈放されるまで251日間拘束された。
刑事賠償決定書は、R氏による国家損害補償の訴えである。ネット世論は、巨大企業ファーウエイの法務部門は強大な力を持ち、個人など吹き飛ばしてしまう。正義が実現することを望む、などR氏に同情的だ。怪文書が出回るなど、今も訴訟の行方が注目されている。
水滴筹の実態暴露
水滴筹は、大病に備えるクラウドファンディングプラットフォームである。公式サイトには、延べ2億5000万人の“愛心人士”が参与、200億元(3100億元)の命を救う寄付金が集まったとある。
11月、この水滴筹の実態が、潜入報道によっ暴露され、大騒動となる。各病院にスタッフを配置し、寄付を求める病人の争奪戦を行っていた。あるスタッフは月間35本の契約を集めないとクビという。ただし1本につき150元の手数料を受け取り、玄関1万元(15万6000円)を稼ぐ人もいる。患者の資産は関係なく、100万長者でも申請できる。
これに対し水滴筹は声明で、一部地域に、個々の担当者による違反があった。再び不祥事が起これば、水滴筹を公益機関に譲渡してもかまわない、と述べた。
まとめ
秋以降は、IT巨頭が批判される流れとなった。しかし最後の水滴筹を除けば、騒動は告発者の意図をはるかに超えていた。インターネット時代の恐ろしさ、危うさを、IT巨頭が身をもって体現した下半期だった。来年の中国ネット界はどのような事件が待っているのだろうか。