発展する中国の“夜経済”は都市発展の新しいエンジンに“不夜城”争いは激化の一途
中国官製メディアの光明網は、2019年の旅行業界を振り返り、文化と旅行の“初歩融合”を果たした1年、と総括した。続いて2020年の3つのキーワードを挙げた。注目はその中にある“夜経済”である。他のネットメディアでも、盛んに夜経済の分析が行われている。その理由は何か。論点と合わせて探ってみよう。
旅行業界3大方向性の1つ
旅行業界3つのキーワードを見てみよう。
1 文旅融合-郷村旅行、研修旅行、レジャー目的、医療ツーリズム等の文化融合型が大きく伸びる。博物館等の公共文化施設と、研修旅行は相互作用で発展する。
2 夜游経済-夜経済は2019旅行業のホットワードだ。政府のサポートもあれば、消費傾向の勢いもある。例えば北京市商務局は昨年7月、“繁栄夜間経済促進消費増長措施”なるサポート政策を発表している。
3 提質昇級(サービスレベルアップ)-2019年は旅行業界のモデルチェンジイヤーとなった。景観、ホテル、民宿等において、管理強化とサービス品質のアップを達成した。
夜経済は流行語に選出
キーワード中のキーワードは、2の夜経済である。北京第二外国語学院副教授は「現在、多くの企業が夜間旅游市場への参入している。比較的成熟した繁華街に、夜間演芸などの産品を開発し、早期の投入を目指す。ポイントは“留客”つまり滞留時間にある。ここをブレイクできれば、夜経済の大きなポテンシャルに行き着く。」と述べている。
日本には“夜経済”という概念は存在しない。一方中国ではネット辞書に解説が出ている。それによれば夜経済とは、当日18時から翌深夜2時までに発生する、サービス業を主体とした経済活動を指す。夜経済の発展は、都市の消費需要を喚起し、産業構造の調整に寄与する、とある。また夜経済は12月、中国国家語言資源監測研究中心による「2019年度中国媒体10大新詩語」にも選ばれ、流行語になった。
夜経済、喚起の背景
夜経済という言葉が急速に浸透した背景は何か。発達した大都市の人々は、仕事と生活の両面において、大きなプレッシャーにさらされている。夜間の休息は充電ステーション、幸福感の源流である。もっと充実させるべきという認識だ。
一方、中国の夜経済は、単一経営から多元化経営への発展過程にある。かつては飲食や買い物など、昼間の経済活動の単なる延長だった。営業時間の延長によって客数を増やした。次にバー、ナイトクラブ、カラオケ、ダンスホールなどの施設が加わった。例えば北京・三里屯は、有名なバーの密集地域だ。
やがて、夜間の観光や演劇などのアミューズメント新業態が出現する。桂林や南京の夜間クルーズ船、珠海の“情侶大道”はその存在だけでカップルを集めている。発展段階は、各地まだら模様だ。そして各都市は、その発展段階に関わりなく、本気モードに入っている。
まとめ
最後に、テンセントと瞭望智庫(国策研究シンクタンク)共同の「中国城市夜経済影響力報告2019」を見てみよう。それによれば、中国消費の60%は、夜間に発生して、夜経済の発展は、都市を活性化に導く新しいエンジンと定義している。そして夜経済に強い都市トップ10を発表した。重慶、北京、長沙、青島、深圳、広州、済南、成都、西安、石家庄である。日本人の多い上海は、意外にも11位であった。
こちらは、当日18時から翌朝6時を対象として、全国28省50都市の153商圏を調査している。テンセントのプラットフォーム、WechatやQQ、騰訊微視、騰訊新聞、騰訊看点などを参考に指数を算出している。確かなデータである。こうした分析と、それにともなう提言は、今後ますます増加するだろう。国を挙げて夜遊びを奨励してるようにもみえ、若干の違和感もないではない。
2019年、中国不夜城ナンバーワンの座は、ダークホースの重慶市が獲得した。首位争いの激化は間違いなさそうだ。