アリババの越境EC輸入編、「天猫国際」、ライバルを買収し圧倒的な存在へ、新型肺炎どこ吹く風の絶好調
今回は輸入編である。2019年は米中貿易戦争の余波で、輸入ビジネスには追い風が吹いた。しかし、2020年の越境ECは、新型肺炎の世界的影響で4~5%の前年割れ必至と見られている。
インバウンドは壊滅、越境ECも振るわない、となれば日本企業は、どうすればよいのだろうか。トッププラットフォーム、アリババ「天猫国際」の動きからヒントを探ってみたい。
多彩な輸入品プラットフォーム
越境EC輸入プラットフォームを代表する「天猫国際」は、トップとはいえ、輸出とちがってライバルは多彩だ。「週刊互聯網」による2020年4月のトップ10ランキングを見て行こう。日本人ビジネスマンにも、有益な情報のはずである。
1位 天猫国際(アリババ)
2位 蘇寧全球購 su1ning2
3位 京東全球購 Jīngdōng
4位 唯品国際 Wéi pǐn
5位 小紅書
6位 聚美極速免税店
7位 網易考垃(ネットイースコアラ)
8位 洋碼頭
9位 亜馬遜(アマゾン)
10位 1号店1号海購
天猫国際の歴史
天猫国際は2013年7月から海外サプライヤーの募集を始めた。香港の化粧品会社「卓悦網」台湾のテレビショッピング「東森厳選」、日本の健康通販「ケンコーコム」、など140店舗に出店を求め、形を整え、2014年2月、現在の天猫国際アプリがスタートした。
2015年6月、韓国館をオープン、以後米国、英国、フランス、スイスなど11の“外国館”を各国大使館の協力を得て設置した(今はない)。
2018年2月、物流子会社「菜鳥網絡」とブロックチェーン技術利用のトレーサビリティ追跡で、偽物を排除する体制を構築した。
2018年11月、上海で第一回中国国際輸入博覧会開催、輸入拡大が国策となり追い風に。
2019年3月、「全球商家大会」を開催し新戦略を発表した。北米、欧州、東南アジア、オセアニア等、6カ所に設置した買付けセンターを中心に、重点ブランドと関連商品の輸入を強化する。これまで77の国と地域から4,000品種、2万の海外ブランドを導入したが、2024年までの5年間で、120ヵ国の8,000品種まで拡大する。
2019年9月、ライバル「網易考垃」を20億ドルで完全買収した。その結果2019年第3四半期の天猫国際+網易考垃のシェアは52.1%とダントツの存在となる。
法令順守
商品カテゴリ―は、化粧品・スキンケア、食品、ベビー用品、服飾・靴鞄、生活・デジタル機器の順である。中国人消費者の海外ブランド志向が強い商品群が並んでいる。化粧品・スキンケアのサブ・カテゴリ―は詳細を極め、巨大産業なのは一目瞭然だ。
2020年6月中旬時点において、92ヵ国、5,100品種、2万5,000ブランドと表記されていて、2024年までの5ヵ年計画は順調に進んでいるようだ。
天猫国際は、海外のサプライヤーに対し、120時間以内の出荷、14日以内の到着と、物流過程の“見える化”を要求している。その他、各業界別にも細かい規則を定め、その通達の総数は193にも及ぶ。
これには2019年1月1日に施行された、電商法の影響を受けている。同法は事実上、個人代購業者の手足を縛る内容だ。逆に天猫国際のような正規の輸入業者には、有利に働く。そのため「環球網」など官製メディアは、当社は電商法の要求事項を遵守する、とアリババに何度も言わせている。
まとめ
新型肺炎防疫体制下の2020年3月、天猫国際へ新たに出店した海外ブランドは、327%増、商品数は20万に及んだ。インバウンドが期待できず、中国ネット通販へ進出しようとする場合、やはり強いプラットフォームが選ばれる。中国の越境ECは、減少予想だが、トップ企業には関係ない、ということだろうか。アリババ全体の2020年1~3月期決算は、売上935億元(1兆4,400億円)前年同期比51%増と、新型肺炎など全くどこ吹く風だ。
日本企業は、アフター・コロナの新時代に向け、新商品開発を急ぎたい。「天猫国際」をはじめ、売り先には困らないはずである。