中国ライブコマースの未来はどうなる?「淘宝直播新経済報告」から見える、アリババVSその他の構図
1年前、中国小売業のキーワードは「社交電商」「社区団購」だった。拼多多の大成功した共同購入型ネット通販の応用が、話題の中心だったのである。現在それらは影を潜め、直播電商(ライブコマース)一色に塗りつぶされている。中国ネット界は、文字から映像へ、急速に重心を移している。直播電商はその象徴だ。近未来を探ってみよう。
淘宝直播新経済報告
アリババの発表した「2020年淘宝直播新経済報告」によれば、2019年、淘宝直播のGMV(成約総額)は2000億元(3兆300億円)を突破した。光大証券のデータでは、同年の全国直播電商規模は4400億元(6兆6700億円)である。アリババは全体の45%を占めているのだ。
その果実の多くは、配信者の配信者の功績に帰するという。淘宝によれば、2019年中、100万の配信者が淘宝直播に加入した。そのうち177名は、年度GMVが1億元を突破している。配信者の役割はますます大きくなるとして、今年2月、全国のオフライン商業者に、直播の門戸を開放した。ブランドの販売員、農民、裁判官、博物館員、理髪師等、さまざまな職業を持つ人たちが、ライブ配信の世界に参入してきた。
この1年、淘宝直播の年間ユーザー数は4億を超え、それにより400万の雇用をもたらした。3年間の平均成長率は150%以上だ。天猫の蒋総裁(不祥事で更迭)は「淘宝直播は、新経済の大門を開いた。」と胸を張った。
MCNとともに成長
今後、配信者たちとの独自エコシステムを拡大し、さらに成長をうながす。現在、淘宝直播は1000を超えるMCN(配信者マネージメント)と関わっているが、そのうち100以上のMCNは、今期1億元以上の収益を上げる可能性があるという。
淘宝直播のライブ配信エコシステムは、プロの領域に達している。コンテンツ設計、商品選択など専門のMCN機構には、未来が開けている。それに伴い、新しい職業も芽生えてきた。淘宝直播への新サービス提供企業は、ここ半年で200社を超えている。
智聯招聘の「2020年春季直播産業人材報告」によれば、直播関連の求人は前年比132%も伸びている。関連業種の平均賃金は9845元(15万円)に達し、活況である。
今後のトレンドは、オフラインストア、オフラインマーケットが淘宝直播にデビューすることだという。1年以内に、20万のオフライン商店と100のオフラインマーケットの利用を見込む。来年には商店主がスマホを片手にライブ配信を始めているだろう。
京東と拼多多
ライバルの京東と拼多多は、どうしているのだろうか。京東は2016年にライブ配信のテストを行っている。このタイミングは淘宝と変わらない。しかしその後、京東の話題はあまり聞こえてこない。2019年末、孵化100個商家、10個億級商家案例計画を提出した。100の企業を養成、10個の1億元プロジェクトを達成しよう、というのだが、反応はあまり芳しくない。最近、京東直播の責任者は、規模化、品質化、生態化をキーワードに掲げ、ライブコマースのアップグレードを図ると表明した。
拼多多は2019年5月、ライブ配信のテストを開始した。拼多多への出店者は、ライブ配信を、短視頻の「快手」に頼っていたが、2020年1月、すべてのユーザーが、拼多多プラットフォーム上で、ライブ配信できるようになった。参加出店者を増加させ、優待政策とセットでさらなる吸引を目指す。ただし、淘宝直播、抖音、快手らとの距離は大きい。柱がなく、強力なブランドもないからだ。
まとめ
アリババは、淘宝直播こそ最も価値あるライブ配信プラットフォームと、自己評価している。しかし、短視頻の抖音、快手、動画配信のB站、斗魚、SNSのWeChatまで含め、競争は多元化している。今のところ淘宝直播VSその他の構図に間違いないが、強力かつ個性的なライバルがひしめいている。この先は、面白くなる、と言うしかない。