中国におけるドローン産業の現在〜高度人材育成のフェーズへ移行か〜
中国のドローンメーカー「DJI」が10月31日に発表した199gのトイドローン「Mavic Mini」が、注目を集めている。現在、世界的に高まる無人航空機「ドローン」産業の拡大と、中国との関係について解説する。
そもそもドローンとは
「ドローン」とは、無人航空機のことを指し、日本の航空法第2条では「構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの」と規定されている。元々は飛行機に無線操縦機を取り付けるなど軍事目的で開発された技術だったが、近年ではプロペラを複数搭載したいわゆる「マルチコプター」が空撮・測量・スマート農業など様々な産業で活用され、その市場を拡大している。
ドローン産業における中国のポジション
このような市場の中で、中国は非常に大きな地位を占めている。
例えば、先述した中国の深センに拠点を置くDJIは、世界の民間用ドローン機体の台数シェアにおいてその70%を占めている。ちなみに、次点のParrot社(仏)はシェア14%、3位の3D Robotics社(米)は、シェア4%となっている(2016年時点)。
そして、ドローンに関する国別の特許出願件数についても、中国が10,922件と、アメリカの8,994件を上回る件数となっている。
<出典:特許庁 平成30年度 特許出願技術動向調査報告書>
国土が広く、農業・物流分野において中国国内では需要に事欠かず、今後も市場は拡大し続けるだろうというのが専門家の観測だ。
人材育成に向けた動きが活発化
このように市場の拡大や技術の革新など進境著しい中国で、2019年に入ってからドローンに特化した人材育成を目指す動きが始まっている。
まず、4月に国務院の組成部門の一つである中華人民共和国人力資源・社会保障部が、新しい職業として13の職業を公示。その中で、人工知能やネットワークの設計者などと並び、9番目の新しい職業として「ドローンパイロット」を提示した。
その主な業務は、以下の7点としている。
1 ドローンの電子制御系のメンテナンス
2 運行計画の策定
3 飛行環境・気象条件の分析
4 ドローンの操縦
5 飛行データの収集
6 飛行結果の検証と効果測定
7 機体の検査・整備
<参考:http://www.mohrss.gov.cn/gkml/zcfg/gfxwj/201904/t20190402_313702.html>
また、6月には日本の文科省にあたる中華人民共和国教育部が中等職業学校専門分野目録の増補版を公示し、46の新しい職業専攻科目が追加された。そこには、ドローンに関する専攻科目として以下の項目が紹介されている。
職業名:空撮・測量
業務:ドローンによるマッピング 地理情報収集
職業名:無人航空機の制御とメンテナンス
業務:組み立て、修理、アプリケーションの制作、制御
<参考:http://www.moe.gov.cn/jyb_xxgk/s5743/s5744/201906/t20190618_386269.html>
これらの動きは、拡大する市場に適した人材を育成していこうという国家戦略の現れとも言える。同時にドローンの運行に関しても体制の整備を進めており、1月には中国民用航空局が2015年版「小型無人機の運行規定」に、ドローンの速度・業務内容による分類を追加した検討案を公表し、年内の公布を目指してパブリックコメントを募った。
<参考:http://www.caac.gov.cn/HDJL/YJZJ/201901/t20190104_193830.html>
そして、3月には浙江省が省レベルで初となるドローンに関する管理規則を施行している。
<参考:http://www.caacnews.com.cn/1/10/201904/t20190404_1270786.html>
中国におけるドローン産業の進歩は、まさに日進月歩であるが、日本においても経済産業省が主導し、高度な情報化社会を実現するプラン「society5.0」において、ドローンが物流などにおいて重要な位置づけを担っており、国内ドローンメーカーによる機体開発も行われている。
日本でも日本郵便や楽天などが物流に関する実証実験を進めているが、それらと並行して、過疎化が進む地域ではドローンによる通学児童の登下校時の通学路の見守りなど、ユニークな実験も行われている。
このような取り組みを紹介し、また、中国における人材育成ノウハウを取り入れることで、ビジネスのチャンスが生まれるのではないだろうか。