中国のオンラインオフィスツール思いがけず全盛に、日本のカウンターパートは何を選ぶべき?
新型肺炎の防疫体制下、中国人の“線上(オンライン)”依存は高まる一方だ。ショッピングや動画視聴、ゲームなどの私生活はもとより、今や仕事や学校もである。春節明け、テレワーク、在宅学習が一気に拡がった。
中国のオフィスワークでも、普通SNSとOffceソフトにZoomやSkypeなどビデオ会議を組み合わせて使う。しかし実際にテレワークを強制されてみれば、統合型の利便性は大きかった。そしてオンラインコミュニケーションツールの需要が爆発した。実際にどのようなツールが利用され、日本企業はどうすべきなのか、検討してみよう。
IT巨頭のラインナップ
中国IT巨頭の力は強い。それぞれ以下のようなコミュケーションツールを用意している。
アリババ 釘釘(DingTaik)…2015年発表のオールインワンオフィスツール。
テンセント 企業微信(WechatWork)…2016年発表、釘釘への対抗商品。
バイドゥ 百度HI …社内ツール「百度HI」をオープン化、ビデオ会議等、無償で提供中。
ファーウェイ WeLink …やはり社内ツールをオープン化、クラウドのサービスの一環。
バイトダンス 飛書 …IT、メディア、法律、リテール、教育等、特定業界を狙う。
以下最重要の、「釘釘」と「企業微信」を取り上げる
釘釘(DingTaik)
中国企業の事務効率を高めるために、開発されたオフィスツールである。モバイル&クラウドオフィス、全てのワークシチュエーションに対応するスマートワークスタイルを提供するという。情報はAIにより分類され、セキュリティは銀行レベルを謳う。
消費者向けネット通販イメージの強いアリババだが、創業事業はB2Bであり、常に中小企業のビジネス環境の改善、取引の近代化に貢献してきた。その面では筋金が入っている。
2月上旬には、7日連続でダウンロード数トップを記録した。同下旬には、システムを5.0版にグレードアップした。新しいサークル機能や、健康管理、非接触勤務の推進など、時流に即した機能を追加した。日本語版がダウンロードできる。
企業微信(WechatWork)
アクティブユーザー11億を誇る国民的SNS微信(Wechat)から発展したオフィスツールである。企業は微信企業公衆号を取得して、微信でビジネス情報を発信していた。アリババの「釘釘」開発意図は、この部分をテンセントから引き離すことだった。それを見たテンセントが今度は、釘釘を意識して、新しく企業微信をスタートさせた。
スマートビジネスを追求するオフィスコミュニケーションツールとして、骨組みは同じである。強みはやはり、テンセントの持つ、強力なネットインフラとの連携だ。2万1000のパートナー、470万のシステムと接続し、ミニプログラム、企業間決済など、13類390種に上るオンラインサービスを利用できる。ダウンロードは英語版。
まとめ
それでは日本企業は、どれを選べばよいだろうか。これから中国ビジネスを本格展開という企業は「釘釘」だろう。日本語版がダウンロードできるし、今回の防疫体制下で、最もユーザー数を伸ばしている。アリババの動きをトレースするのは、中国ビジネスの基本でもある。
中国担当社員がみなWechatを利用しているレベルの企業なら、「企業微信」もありだ。Wechatの使い方にさらに習熟できれば、これも大きなプラスとなる。
その他のバイドゥ、ファーウェイ、バイトダンスも巨大な影響力を持つ。彼らの取引先企業はそれぞれ「百度HI」「WeLink」「飛書」を利用しているかも知れない。しかしそれは参考にとどめておきたい。中国ではアリババかテンセントどちらかで、用の足りることが多いからである。