新型肺炎⑦バイドゥ(百度)の戦い、基金、アプリ、AIプラットフォームで防疫体制に貢献
2020年1月末、バイドゥ(百度)は新型肺炎対策として3億元(47億円)を拠出し、基金を設立した。これは1月段階では5位タイの高額である。しかしBATの中では、アリババ、テンセントほど注目を集めなかった。ところがここへきて、情報発信やAIプラットフォームの開放で、存在感を見せ始めている。防疫体制下におけるバイドゥの戦いぶりを見て行こう。
基金とアプリによる貢献
基金の正式名称は「疫情及び公共衛生安全攻堅専項基金」といい、新型肺炎等の新疾病薬の研究開発や、防疫活動、公共衛生安全情報の普及や啓蒙活動のために出資する。バイドゥは、人工智能技術、スパコンの計算能力等を提供し、研究開発をサポートしていく。また得意のビッグデータ、分析技術でも防疫体制に貢献する。
そして百度アプリには、リアルタイムの患者数を表示する“抗撃肺炎”チャネルを、百度地図には、診療可能な病院情報掲載の“発熱問診地図”を設置した。
ただし、アリババの支付宝、テンセントのWechat等のスーパーアプリは、みな同じような情報発信体制を敷いている。そのため評価の高い百度地図に“新冠病例曾活動場所”を追加して、武漢以外の北京、広州、深圳、鄭州など49都市における、病例の発生場所や関連情報をアップした。また高速道路等のリアルタイム交通状況も発信しているが、これは帰省者動向の収集に役立っている。
AIによる貢献①一括検温ソリューション
バイドゥは自ら開発したLinearFold法というRNA病毒分析(27秒で分析、従来は55分)システムを無償開放した。ISMB(声明上科学分野最大の国際会議)や生命情報科学誌「Bioinformatics」で高い評価を得ているという。
またAIを利用した、一括体温測定ソリューションを提供した。現在、大部分の空港や駅では、基本的に一対一の検温体制だ。これが人の流れを阻害し、大量接触による感染リスクともなってしまう。バイドゥの方式は、従来型赤外線検出技術をAIに組込み、検温と顔識別で高熱の対象者を検知し、大人数にスピード対応する。マスクをかけた人の識別にも、定型モデルの開発により、対応しているという。
これはすでに、北京清川駅に採用された。1人ずつ通過の条件でも、1分間200人の検温を実現した。
AIによる貢献②防疫状況調査
また住宅地での接触リスクを避けるため、バイドゥは急遽「智能外呼(コール)プラットフォーム」も提供した。これはコミュニティの状況確認や、再訪問の約束等に、電話やインターフォンの数百倍の効率を発揮している。AIオペレーターが1対1のコールを一括で処理してしまう。人間なら1日100~200コールのところ、AIは10万コールが可能だ。これにより調査目的の対人接触のリスクは低下し、防疫体制下での調査効率は、各段に上昇する。さらに自動で防疫情報を分析し、統計報告まで作成してくれる。
このプラットフォームは、北京海淀上地街道、西安、上海宝山、温州市瑞安、福州倉山区等、十数地区に投入された。すでに累計100万コールを超えている。
まとめ
またバイドゥは“AI開発者戦疫守護計画”も発表した。開発者のため技術サービスと、オンライン教育課程を、無償提供する計画だ。AIプラットフォーム「百度大脳」を、防疫関連の技術開発企業に利用してもらう。また100に及ぶオンラインAI教育過程を開放し、技術者の力量向上をサポートする。
新型肺炎との戦いは、ヤマ場を迎えた。科技(テクノロジー)企業は、前線医療の支えとして、ますます重要性を増している。IT各社は社会の公器として、どう立ち向かうか。企業の力量が問われているところだ。