中国人インバウンド集客法⑦~タイに学ぶ「おもてなしの心」~
固い“血”の繋がり、中国の旧正月ともに祝うタイ
海外から見た日本の観光産業の特徴といえば「おもてなしの心」がまず連想されやすいと思いますが、中国の人々も日本=「おもてなしの心」と感じているのでしょうか。どういうことかと申しますと、確かに日本は、世界の人々に対する「おもてなしの心」で突出しているように思えますが、中国の人々に限った話では、日本が劣っているかも知れないということです。この根拠は、中華圏の旧正月である春節での中国人旅行者の動向に表れています。
中国の旅行会社まとめやマスコミ報道によりますと、春節の中国の人々の渡航先はダントツのタイで、日本は2位だそうです。中国でのタイ人気は、春節に限らず通年を通じて不動で、その理由は、中華系の血を引くタイ人が多いこと、国同士が友好関係にあること、タイと中国は陸続きでアクセスしやすいこと、の他にタイの中国の人々を迎える姿勢にあるようです。
春節のタイは、中国同様の盛り上がりをみせており、春節を一緒にお祝いしたいタイ人も多くいるようです。さっそく、タイで中国人旅行者がどのように迎えられているのかをみていきましょう。
春節がタイの国民的行事に!?街中でお祝いムード
中華圏の旧正月である春節は、毎年1月後半から2月前半にあり、2月16日が春節だった2018年は2月15日から2月21日頃までタイや日本は春節を祝う中国人旅行者で賑わいました。
2018年は、日本の百貨店、ホテルなどが大挙して押し掛ける訪日中国人を見据え、中国風のイベントや装飾で迎えましたが、街全体や国をあげて春節に取り組むタイに比べれば見劣りすると言わざるを得ないでしょう。タイの首都バンコクや中国人が訪れるショッピングセンターは春節を祝うオブジェで溢れ、チャイナドレスを着て迎える店員も目立つったそうです。ホテルなど至るところで中国人旅行者向けのイベントも行われ、主要観光地やホテルは中国人でごった返していたといいます。
タイが国や街をあげてまで春節を盛大にお祝いする背景には、昔から行き来していた商人など中華系の人々の存在が大きいとされていて、中華系とタイ人との混血も多いそうです。中国は、タイの王室や有力政治家とも文化交流や中国系の血を引くなどの深い関係にあるといわれており、2国間の連携や歩みよりの成果が中国人旅行者増加の大きな背景にあるといえそうです。
微信(WeChat)で入国審査の書類を事前記入
タイが中国人旅行者を迎えるために取り組んでいることは、中国人の好む装飾やイベントだけではありません。
タイの主要空港では、中国語のアナウンスが流れ、空港施設や商業施設、寺院、ショーなどのパフォーマンスまでも中国語による説明があるといいます。また、日本同様に中国で頻繁に利用される決済手段である、電子決済サービス・支付宝(Alipay)や微信支付(WeChat Pay)にも現地の小売店、飲食店などが対応しており、中国人旅行者がスムーズに買い物したり、サービスを受けたりすることができるようになっています。
ここまでは、日本でも一部で行われている取り組みですが、タイがより多くの中国人を受け入れるために行っていることとしては、空港での混雑緩和のため微信(WeChat)で入国審査の際の査証(ビザ)取得に必要な書類を事前記入できるサービス提供や、観光地への中国語ができるボランティア派遣など、国や地域を挙げての取り組みが目立ちます。
タイの事例をみていえることは、より多くの中国人旅行者を呼び込み、商品を購入してもらったりサービスを利用してもらったりするために、国や地域、空港などが一丸となった取り組みを行っているということではないでしょうか。タイのように国ぐるみ、地域ぐるみの取り組みは難しいかも知れませんが、日本でわれわれが個人レベルで、できることはまだあるはずです。タイのようにチャイナドレスを着て迎えるとまではいかなくても、中国の文化や年中行事を把握し、一緒に祝うほか、中国語、電子決済をはじめとする中国の生活スタイルを理解した1歩踏み込んだ「おもてなしの心」という意味で、タイから学ぶことは多いのではないでしょうか。
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