BaiduのProject Apollo(阿波羅)「アポロ計画」
2017年4月18日、中国の大手検索サイト“Baidu(百度)”は自動運転車向けソフトウェアプラットフォームなどをオープンソース化する取り組み「Project Apollo(阿波羅)」を発表しました。プロジェクト名のApollo(アポロ)は、月面着陸を実現させた米国のアポロ計画にちなんだものだといいます。その「アポロ計画」にスポットをあててみました。
目次
Baiduの自動運転車への取り組み
自動運転車はBaiduが高い期待を寄せている分野の一つで、2016年にアメリカに自動運転車チームを設けて、北京の高速道路や一般道で路上試験を行った後、2016年11月には浙江省烏鎮で自動運転車の試運転を行っていました。
しかし2017年に入り、2014年からBaiduの主任科学者としてAIユニットの指揮を務めてきた吳恩達(Andrew Ng)博士が退職し、その後程なくして、シニアVP兼自動運転ユニットGMを務めていた王勁(Wang Jin)氏も、自身の自動運転車開発企業を立ち上げるために辞任するという大きな苦渋を味わうことになりました。しかしそのような経緯を経て生まれたのが「Project Apollo(阿波羅)」です。
Project Apollo(阿波羅)とは
「Project Apollo(阿波羅)」と銘打ったプロジェクトは、“Baidu(百度)”の自動運転車向けオープンプラットフォームで、ハードウェアとソフトウェアの両方をインクルードしており、自動車業界や自動運転業界のパートナーを対象として、車両・ハードウェア・ソフトウェアそれぞれのプラットフォームやクラウドデータサービスなどを含む、包括的なハードウェア/ソフトウェアサービスソリューションが提供され、障害物検知、ルート計画、車両制御、車両OSやその他の機能に加え、テストツールまでオープンソース化します。
パートナーは、関連するクラウドデータサービスも利用可能であり、同プロジェクトを通じて提供される技術を利用することで、自動運転技術の研究と開発に参入する障壁が低くなり、技術革新の速度が高まるといい、Baiduは自動車メーカーと自動運転車開発企業の協力関係を構築することにより、自動運転車開発を促進するとともに、パートナーによるアライアンスも構築する考えで、互換性の高い車両やセンサ、各種部品を提供することで、多彩なパートナーの参加と協業を促し、新しいエコシステムの構築を目指しています。
アポロ計画の始動
Baiduの取り組みについて、“陸奇”集団総裁兼最高執行責任者(COO)は「中国は世界最大の自動車市場を抱えるうえ、中国政府の支持もある」と強調しています。また、Baiduは中国政府とAIの一体開発を進めており、政府の計画にもとづいてAIに関する研究所を設置しています。中国政府は「自動車大国」から「自動車強国」への転換を目指しており、自動運転をその転機に位置づけているのです。
Baiduが北京市の国家会議センターで開いたAI開発者大会で、陸集団総裁が「アポロは世界最強最大の自動運転開発連合となった。3~5年以内に中国は自動運転でトップに立つ」と力強く宣言すると、4,000人が詰めかけた会場から拍手が起こりました。
2017年7月5日、Baiduは、自動運転の開発連合「アポロ計画」を始動したと発表したのです。米フォード・モーター、独ダイムラーなどの自動車やITの世界の大手企業約50社が参画して、2020年までの完全自動走行をめざし、AIを活用した世界規模での取り組みが始まりました。
Baiduは自動運転を制御するソフトをプラットフォームとして提供する役割であるため、ソフトを動かす半導体を提供する画像処理半導体(GPU)大手の米エヌビディアやインテルも参画します。
自動運転開発連合「アポロ計画」の主な参画企業
自動車 | 米フォード、独ダイムラー |
第一汽車、北京汽車、長城汽車、東風汽車、奇瑞汽車、江淮汽車、長安汽車 | |
自動車部品 | 米デルファイ、独コンチネンタル、独ボッシュ、独ゼットエフ |
IT | 米エヌビディア、米インテル、米マイクロソフト、中興通訊、紫光展鋭 |
自動運転の開発では、独BMWやインテルなどの連合が21年までの自動運転車の市販をめざしており、最近は米デルファイ・オートモーティブがその陣営に加わり、日本勢ではホンダはグーグル系企業と組み、トヨタはエヌビディアなどとそれぞれ提携しています。
アポロ計画のスケジュール
さらに、自動運転プロジェクトの進捗に関するスケジュールも発表されており、7月までにまずは限定的な環境下における自動運転技術を公開し、その後年末を目処にシンプルな市街地の自動走行が可能になる技術を公開する予定で、2020年までに高速道路と都市部の公道で完全な自律走行可能な機能を実現させるとのことです。
アポロ計画のスケジュール(予定)
2017年7月 | 閉鎖された場所での実験 |
9月 | 限定した道路での実験 |
12月 | 簡単な道路での実験 |
2018年12月 | 特定の高速道路と一般道での実験 |
2019年12月 | 試験版の実用実験 |
2020年12月 | 完全自動運転 |
「アポロ計画」の動向
2017年10月、 Baiduの自動運転車プラットフォーム「Apollo(阿波羅)」が初のアップデートを実施しました。Apollo 1.0 上に構築された Apollo 1.5 は、障害物検知、走行プランニング、クラウドシミュレーション、高解像度マップ、エンドツーエンドのディープラーニングといった5つの追加的なコア機能が利用できるようになり、自律走行運転の開発加速に向けてデベロッパーやエコシステムのパートナーにより包括的なソリューションを提供できると会社声明の中で説明しています。
同時に、100億人民元(約1,700億円)相当の 「Apollo 基金」創設も発表しました。これは、今後3年間で100の自動運転プロジェクトに投資を行うものだといいます。
Baidu は中国国内外で企業提携を加速させており、7月には Microsoft が Azure を活用してクラウドインフラサービスを中国国外にいる Apollo のパートナーに提供すると発表しており、それ以降、Apollo は「Hyundai Motor (現代自動車)」「ROS」「esd electronics」「Neousys Technology」 のほか、「Momenta」 や「IDriver + Technologies(智行者科技)」といった自動運転関連スタートアップを含む70社と提携しています。
更にBaidu は、LiDAR(レーザー画像検出と測距)センサーメーカーの「 Velodyne」 のほか、自律テクノロジーに関する教育とコンペを行っている「Udacity」とも協業していく予定だとのことです。
Baidu はどうやらApollo のパートナー「北汽グループ」との提携で、2019年までにはレベル3の自動運転機能をもつ車を生産し、2021年迄には完全自動運転のレベル4に移行する予定のようです。参考:「北京自動車グループとBaiduは戦略的協力協定を締結」
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