阿里巴巴(アリババ)YunOS(ユンオーエス)とは何か徹底解説
ピッチで目を引くYunOSの文字
2016年12月8日から18日までの日程で開催された「FIFAクラブワールドカップジャパン 2016」だが、日本からは鹿島アントラーズが出場し、日本のクラブチームとしては大会史上初めて決勝進出を決め、大いに盛り上がった。
クラブチーム世界一を決めるこの大会の正式名称は「阿里巴巴 YunOS Auto プレゼンツ FIFAクラブワールドカップジャパン2016」だった。大会名、広告看板にも書かれていてピッチでも目立っている「YunOS」とは一体何だったのだろうか。
YunOSの前史は黒歴史?
YunOSは、もともと「阿里雲OS(アリユンオーエス)」と呼ばれていた。当初はクラウドサービス用のOSとして開発された。それをベースにして、独自開発によるモバイル用OSを目指して2010年から開発が始められたのだ。
しかし、正真正銘の独自開発のOSを目指すとなると、使えるAPPが無くなってしまうという問題に直面した。そこで仕方なく独自開発のOSは諦めて、Androidベースで開発を進めた結果、2011年に「阿里雲OS1.0」が誕生したのだ。
このOS、当初は中国製のモバイル機器にも一部採用されていたが、2012年に「阿里雲OS」を搭載したAcerのスマートフォンが、Googleから圧力によってリリースの直前に急遽販売中止に追い込まれた。
Google側が問題視したのは、阿里雲OSは独自開発と言いながら実際はAndroidをベースにして作られたOSであるという事がひとつ目だ。ふたつ目に、阿里雲OSはGoogleのコントロールの枠外にありながら、APPには互換性を持たせているので、阿里雲OSが普及すればGoogleの市場を脅かすことになりかねないという点だ。
こうして誕生したばかりの阿里雲OSはモバイルに搭載することができなくなり、一時はどん底に突き落とされたのだ。ここまでのYunOSの歴史は、FIFAクラブワールドカップのスポンサーとしては黒歴史と言ってもいいかもしれない。
しかし、ジャック・マー氏はこの問題を解決しようと思案した。結果、阿里雲OSをAndroidベースとせずに、独自のOSとして生まれ変わらせるしかないと決断したのだ。
(出典:https://zh.wikipedia.org/wiki/AliOS
https://www.appland.co.jp/blog/%E9%98%BF%E9%87%8C%E9%9B%B2os%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%90%E3%83%90alipay%E4%BA%91os%E5%A4%A9%E8%AA%9Ealisoft%E6%B7%98%E5%AE%9D%E7%B6%B2k-touch%E3%82%BF%E3%82%AA%E3%83%90%E3%82%AA/
https://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/coltop/15/121539/032700037/)
YunOSとして生まれ変わった後YunOS Autoに
阿里雲OSは新たに開発を見直し、2013年に阿里雲OSからYunOSに名前を変え、ロゴも一新した、2014年「YunOS 3.0」のリリースで完全にAndroidから独立した独自開発のOSとして生まれ変わった。
後に「YunOS 5.0」までバージョンアップされ、現在ではYunOS 6の開発に至っている。YunOSは魅族(MEIZU)、小辣椒、朵唯(Doov)といったローエンドの国内メーカーのモバイルに搭載され、YunOSが搭載されたモバイル機器は着実に中国国内でそのシェアを伸ばしている。
近いうちに中国国内のスマートフォンのOSのシェアではYunOSがiOSを抜いて第二位に躍り出るかもしれないと言われている。YunOSはもとがクラウド用のOSであったため「モノのインターネット」(IoT)との親和性が高い。モバイルだけではなく、自動車、テレビ、エアコン、冷蔵庫、電子レンジなどへの導入も見据えているようだ。
2016年11月の広州でのモーターショーでは「YunOS for Auto」をバージョンアップし、これに伴い呼び名を「YunOS for Auto」から「YunOS Auto」に変更するという発表があった。このように、阿里雲OSは今日の「YunOS Auto」にまで発展してきたのだ。
(出典:http://www.alios.cn/)
トヨタからアリババへ
トヨタは2014年の大会を最後に、1981年から継続していたスポンサーから撤退している。トヨタに代わって2015年からスポンサーになったのが阿里巴巴だ。そして、このタイミングで発表されたのが、上海汽車(SAIC)集団と阿里巴巴とが共同出資して「インターネット・カー・ファンド」を設立するというニュースだった。
(出典:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160602/mcb1606020500013-n1.htm)
さらに2016年7月には「インターネットカーRX5」が発表された。このRX5のOSには「YunOS Auto」が使われており、WiFiやGPSに依存せずに瞬時に正確な位置情報を取得できるインテリジェントマップや、走行中に360度の自撮りが可能な4台のアクションカメラなどの機能が搭載されているのだ。
また、モバイル決済システムの支付宝(アリペイ)も搭載されているので、駐車場やガソリンスタンドでの料金支払いなど、乗車したままでの決済ができる。まさに次世代のスマートカーが実現しようとしているのだ。
FIFAと阿里巴巴との協賛契約期間は2022年までの予定だ。この間に日本人には「トヨタカップ」としてお馴染みだったFIFAクラブワールドカップが、今度は「アリババカップ」として浸透し、そしていつの間にかそれに対して何の違和感もなくなるのだろう。その頃の世界の自動車業界の勢力図はどのようになっているのか、興味深いところである。