アリババのオフィスツール・釘釘(DingTalk)は、ビジネス界を席巻するか?
アリババは2014年、オールインワンオフィスツール、釘釘(DingTalk)を開発し、利用の拡大を図ってきた。その公開5周年にあたり、中国ネットメディアには、釘釘を総括する記事が相次いでいる。日本での知名度は低いが日本語版もあり、無料ダウンロードできる。アリババは、このツールを使うことで、何を指向しているのだろうか。
釘釘(DingTalk)とは
アリババは2014年、中国企業の事務効率を高めるためのオフィスツールの開発に着手した。テスト版の後、2015年1月に初版を公開した。
現在のPC版トップリードには、「スマートワークスタイル、コミュニケーション&コラボレーションの再定義」と表現されている。そして、「シンプルで効率的でより安全なモバイル&クラウドオフィスを」と続いている。目指すところは何となく伝わってくるが、もう少し詳しくみていこう。
連絡先は、内部コンタクト(企業内)と、外部コンタクト(顧客や取引先)に分けられている。それぞれ離任の際は退出し、ビジネス情報は保護される。
コミュニケーションは、既読/未読を表示し、未読メッセージは、釘(DING)へ変換するため見逃さない。その他、24時間以内のメッセージ撤回機能や、グループチャットのスクリーンショット追跡機能がある。またビジネス通話は無料、少人数なら、どこでも高画質テレビ会議を利用できる。
釘釘5年間の総括
アリババは2019年7月、「釘釘未来組織大会」を開催した。ここで行われた5年間の総括では、「智能」「協同」「以人為本」「デジタル化」の4語が頻出した。これらが近未来の釘釘を表すキーワードだという。
近未来の組織とは、AIと協同し、自ら駆動するものでなければならない。そしてそれは企業の、人、財、物、事、の4要素をデジタル化することによって解決する。
これはアリババの新零售(ニューリテール)の戦略的思考にも一致するという。なぜなら、いわゆる新零售とは、企業と業務モデルの改変のことにほかならないから、と続いていく。
アリババグループは貿易をも含めた、外部ビジネス環境をより合理的に変革しようとしている。その中で釘釘は、内部環境を整える役割を負っている。アリババ流にいえば“阿里商業操作系統”戦略に載せるツールという。
最新データによれば、釘釘プラットフォームには20万の開発者が関与、ユーザー数は2億、企業内ネットワーク数1000万、サービス提供企業500万となっている。そして優秀な10万のISV(Independent Software Venders)たちを吸引した。これは当初の8倍にあたる。
まとめ
釘釘は、ビジネスに特化したSNSと考えれば理解しやすい。ライバル・テンセントのWechat
は、SNSというには、あまりにも巨大すぎる総合プラットフォームとなってしまった。公私混同による情報漏洩事故も起こりやすい。釘釘の狙いの1つは、ビジネスユーズをWechatから引き離すことで、これは一定の成果を収めている。
今後の目標はB2Bサイトで行っているように、中国のビジネス環境をアリババ流にアレンジすることである。そのためグループ外の中小企業、地方政府機関に釘釘の利用を促している。すでに5年間で投じた資金は、100億元に上る。最終的に行き着く先は、マイクロソフトのWindowsやOfficeにとって代わることかも知れない。アリババには確かなビジョンがある。これが成長の原動力となっていることは、間違いない。