インド製造業が絶好調！最新PMIから読む「今すぐ調査すべき海外市場」2025年版
1.インド製造業は今、なぜ好調なのか？
PMI急上昇──2025年6月の速報値が示すこと
2025年6月、インドの製造業におけるPMI（購買担当者指数）が61.0という高水準を記録し、国内外のビジネス関係者から注目を集めました。PMIは50を超えると景気拡大を示しますが、60台に達するのは稀で、製造業の成長が非常に力強いことを意味します。特に注目すべきは、新規輸出受注の増加です。これはインド製造業が国内需要だけでなく、海外市場への供給力を強めている証拠といえます。さらに、企業の雇用意欲や購買量も上昇しており、国内生産基盤の強化が数字からも明らかです。こうした数値をもとに海外市場調査を行えば、どの分野に外部需要が集中しているかを把握し、自社の製品やサービスとのマッチングを精度高く検討することができます。今後の営業戦略立案においても、こうした定量データの活用はますます重要になるでしょう。
政策支援が追い風に：“Make in India”の進化系
インド政府が掲げる製造業振興策「Make in India」は2025年現在も進化を続けており、製造業の成長を後押しする大きな要因となっています。法人税の優遇措置や輸出支援策、産業インフラへの投資、海外企業誘致のための規制緩和など、実務的な施策が着実に展開されています。重点産業（EV、医薬品、半導体など）への政策集中もあり、インド市場は単なる低コスト生産拠点から、付加価値の高い供給地へと転換しつつあります。海外営業を仕掛ける企業にとっては、こうした政策背景を理解することで、現地の成長分野や潜在ニーズに合わせた提案を行うことが可能になります。政府発信の中期ビジョンや投資報告にも目を通すことで、より立体的な市場理解が得られます。
世界が注目する“チャイナ・プラスワン”としての存在感
地政学リスクや人件費の高騰を背景に、多くのグローバル企業が中国依存からの脱却を模索しています。その中で、“チャイナ・プラスワン”戦略の移転先として最も注目を集めているのがインドです。インドは人口規模や人材供給力、英語の普及率に加え、技術教育を受けたエンジニアの数でも世界有数の水準にあります。さらに、スタートアップエコシステムや製造業支援政策の後押しもあり、外資企業にとって新たな生産拠点・開発拠点としての魅力を増しています。インドはただの代替国ではなく、長期的に投資対象として見られる存在になりつつあります。海外市場調査では、“なぜインドなのか”という問いに明確な答えを持つことが、経営層や海外営業戦略において信頼される判断につながります。
2.成長が著しいインド製造業の注目分野
EV・自動車部品分野：日系企業にも商機あり
インドのEV市場は、国内需要と輸出の両面で急成長しており、日本企業にとって非常に大きなビジネスチャンスとなっています。政府主導で進められる電動車の普及促進政策や税制優遇により、車体メーカーだけでなく、バッテリー、モーター、制御ユニットなどの部品供給業者への期待も高まっています。現地生産拠点を持つ大手企業はもちろん、中堅・中小メーカーでも高品質・高信頼性な部品を提供できれば、技術提携やOEM供給の対象となる可能性があります。海外市場調査では、単にEVが伸びているという認識ではなく、「どの部位」「どの構成品」が急成長しているのかを特定することが重要です。現地プレイヤーとの補完関係を築ける領域を見極めることで、より実践的な営業戦略を描けます。
化学・医薬品：ジェネリックの世界的供給地に
インドは今や“ジェネリック医薬品の世界的供給地”としての地位を確立していますが、その強みは医薬品にとどまりません。API（原薬）、中間体、バルク化学品、さらには農薬や化粧品素材に至るまで、化学系のサプライチェーンを網羅できる生産体制を構築しています。欧米企業は品質と安定供給力を重視しており、日本企業が持つ技術力や製品安定性との親和性は高いといえます。また、最近ではインド企業自らが海外進出を加速しており、共創型パートナーを求める動きも活発です。海外市場調査の段階では、単に「輸出されている品目」だけを見るのではなく、「どんな技術・素材が必要とされているか」「どこで日系企業と相乗効果が出せるか」を丁寧に拾うことが成果に直結します。
アパレル・繊維：バングラデシュの次を狙うポジション
インドの繊維産業は、原材料の調達から紡績・染色・縫製・出荷までを一貫して国内で完結できる点が大きな強みです。近年では、バングラデシュやベトナムからの発注を切り替える動きもあり、再評価が進んでいます。特に注目されているのが、サステナブル素材の採用や短納期への対応力です。欧米のSPAブランドを中心に、小ロット・多品種・環境配慮型製品への需要が拡大しており、それに柔軟に応えられる中堅縫製工場がインド西部や南部に集積しています。さらにインド政府も輸出振興策として繊維クラスター支援やFTA活用を進めており、輸出競争力の底上げが進行中です。市場調査では、どの地域にどの機能を持つ工場があり、どのような顧客層と取引しているかを把握することが、営業活動に直結します。今後のアパレル分野では、「安さ」より「品質」「対応スピード」「持続可能性」が勝負を分ける基準となっていくでしょう。
3.日本企業が参入するための市場調査の進め方
どの分野が自社製品と親和性があるかを見極める
海外市場調査を始めるにあたって最初に考えるべきは、自社の製品や技術がどの業界・市場と親和性があるかを見極めることです。インド市場ではEV、医薬品、繊維など様々な製造業が成長していますが、すべての分野にチャンスがあるわけではありません。たとえば、自社が持つ精密加工や素材、部品、制御技術が、どの業界で特に評価されやすいのかを明確にすることで、調査の方向性が定まります。また、既に他国で成果が出ている事例があれば、それをヒントに類似市場を絞り込むことも有効です。現地の業界構造や技術レベルを理解しながら、自社が提供できる価値が“通用するのか、競合とどう差別化できるのか”を冷静に分析することが、営業活動の無駄を省き、成果を高める第一歩になります。具体的な仮説を持ったうえで市場調査を始める姿勢が重要です。
海外市場調査に使える“無料”データとツール
海外市場調査は、予算が潤沢でなくても“無料ツール”を活用すれば、かなりの情報が得られます。たとえば、Googleトレンドを使えばインド国内でどのキーワードが検索されているかを確認でき、現地の関心分野を把握できます。Trade Mapでは製品別の輸出入統計を国別にチェックでき、業界動向のヒントになります。JETROやIBEF（India Brand Equity Foundation）の公開資料も、業界構造や企業の投資動向をつかむのに便利です。さらに、LinkedInでは現地企業の活動や投稿を通じてリアルな情報を収集でき、営業先候補の選定にも役立ちます。これらを組み合わせ、断片的ではない立体的な理解を目指すことで、調査が実際の提案や商談につながる確度が高まります。
市場調査から営業活動につなげるためのステップ
市場調査で得た情報を成果に変えるには、“営業行動につなげる”設計が必要です。まず仮説ベースで有望な業界や企業群をリストアップし、実際に現地の展示会情報やオンライン発信などを通じて、ニーズや関心があるかを検証します。次に、営業ターゲットとなり得る企業のキーマンを特定し、LinkedInやメールを活用して接点をつくります。反応があれば、簡単な資料送付やオンライン商談に進み、相手のニーズを掘り下げながら提案を最適化していきます。このように、調査→仮説→接点づくり→検証→実行というサイクルを意識して行動することで、単なる情報収集に終わらず、案件創出につながる実践的な営業戦略が構築できます。計画と実行をつなぐ意識が成果を左右します。
4.インド製造業の成長にどう向き合う？営業戦略の見直しどき
成長する市場に取り残されないために必要な視点
インド製造業が急成長を遂げる中で、日本企業が取り残されないためには「市場を見る目」と「動くタイミング」が鍵となります。特に、単に成長しているという表面的な情報ではなく、どの分野でどのような技術や製品が求められているか、現地企業の課題は何か、といった具体的な構造的理解が不可欠です。競争が激化する中、すでに多くの企業が現地化や提携、販売チャネル開拓を進めており、出遅れることで選ばれにくくなるリスクも高まっています。海外市場調査を通じて成長セクターのニーズを把握し、自社が提供できる価値とマッチする部分を探ること。さらに、それをいかに早く実行に移すか。今まさに、待ちではなく“仕掛ける営業”に転換するべきフェーズです。
数字に頼りすぎない。現地で起きている“体感値”とは
どれほどデータや統計を読み込んでも、それだけでは見えてこないのが「現地の空気感」や「企業の決断の温度感」です。インドでは制度が急に変わることも多く、実務レベルでの混乱やギャップも多々あります。海外市場調査で数字を見ることは大切ですが、それだけに頼ると、ズレた仮説のまま動いてしまうリスクもあります。たとえば、ある業界で需要が伸びているとされていても、実際に現地企業がどのような購買基準で取引先を選んでいるか、どんな営業方法が信頼を得やすいか、といった“人と人”の要素は現場でしか得られません。現地視察やオンライン商談でのヒアリング、現地スタッフからの声など、数字の裏側にある“体感情報”を取りにいく姿勢が、営業成果の精度を大きく左右します。
海外営業で成果を出すための“動ける”戦略とは？
インド市場のように成長スピードが速く、変化も激しい市場では、「綿密な戦略」よりも「素早く動ける戦略」が成果を生みます。すべての調査や社内調整を終えてから動くのでは遅く、まず仮説を立て、試験的に動いて反応を見ながら軌道修正していくアプローチが重要です。そのためには、マーケティング、営業、製品担当が連携しやすい体制をあらかじめ整え、小さく動いて大きな学びを得る“アジャイル型の営業”を設計することが有効です。海外営業で成功している企業は、調査結果をすぐ社内アクションに落とし込み、現地パートナー開拓や展示会参加、SNS活用など複数のチャネルで同時進行させています。“調べてから動く”ではなく、“動きながら調べる”ことこそが、今の時代の営業戦略です。
