
補助金を活用した海外営業・越境EC成功戦略【BtoB企業の実例付き】
目次
1. なぜ補助金が海外営業の「戦略」になるのか?
展示会頼みを脱却した企業が補助金で“攻め”に転じている
かつては「展示会で名刺を集めて、あとは代理店任せ」—これが多くの企業の海外営業でした。しかし近年、そうした手法だけでは思うような成果が出なくなっています。そんな中、注目されているのが「補助金を活用した戦略的な海外営業」です。単なる資金補填ではなく、計画的に販路を広げ、見込み顧客と直接つながる施策を設計・実行する企業が増えています。特に、Webマーケティングや越境EC、LinkedInを活用したデジタル営業といった分野では、補助金が非常に有効です。「補助金=予算確保」ではなく、「補助金=事業を仕組みに変えるツール」と捉えることで、展示会頼みから脱却し、自走する営業体制への転換が可能になります。
海外営業戦略と補助金は“セット”で考えるべき理由
補助金は単体で考えると「面倒な書類仕事」に見えるかもしれません。しかし、海外営業戦略を策定する際に補助金を前提に組み込むことで、より実行力の高い計画を立てることができます。たとえば、LinkedInでのキーマン接点作り→翻訳サイトへの誘導→Web面談→越境ECでの販売という流れを構築した場合、その各フェーズにかかる経費を補助金で支援できると、継続的に実行可能な営業フローになります。補助金を「戦略実行の起点」と位置付けることで、社内稟議も通しやすくなり、デジタル営業への社内理解を深める効果も。補助金は“予算”ではなく“営業設計”に活用する発想が、成功企業の共通点です。
BtoB企業にこそ、補助金は営業改革の突破口になる
補助金はBtoC向け製品だけでなく、BtoB商材にも幅広く使えます。実際、工作機械、素材部品、分析装置、計測器など、ニッチなBtoB製品を扱う企業が、海外営業のきっかけとして補助金を活用するケースが増えています。BtoBは1件あたりの商談単価が大きいため、「1件の受注を取るまでの営業プロセス」が長期戦になりやすく、施策の継続性が課題になります。そこで、戦略立案や営業支援ツールの導入、翻訳費、リード獲得広告などを補助金でカバーすることで、営業改革の“初期加速”が可能になります。展示会出展に比べて、補助金を活用した継続的な取り組みは費用対効果も高く、営業改革の突破口として非常に有効です。
2. 補助金と相性のいい「越境EC施策」具体例
ShopifyやAmazonでの販路構築に活用できる補助金とは?
補助金を活用すれば、越境ECの初期費用を大きく軽減できます。
たとえば「JAPANブランド育成支援等事業」では、Shopifyを使った自社ECサイトの構築、Amazon・Shopeeなど海外モールへの出店費用、商品ページの翻訳、商品撮影、SEO施策、広告出稿まで幅広く対象となります。BtoB企業であっても、見積もり依頼や資料請求機能を組み込んだサイトにすることで、オンラインでのリード獲得が可能です。また、現地向けの配送テストや物流オペレーション費用も一部対象になることがあり、「売れるか分からないけど試したい」という段階での活用も現実的です。補助金で“実験コスト”を軽減することで、越境ECに踏み出しやすくなります。
ECだけじゃない、SNS広告や翻訳にも補助金は出る
越境ECの成功には「作っただけ」では不十分で、集客施策と信頼構築が欠かせません。実は、補助金の多くはSNS広告や翻訳業務にも適用できます。たとえばFacebook広告・Instagram広告・LinkedIn広告・Google広告などが、対象経費として認められるケースもあります。特にBtoBでは、英語圏・東南アジア・中華圏などに合わせた細かなコピー・バナー運用が重要となり、翻訳費や現地向けのランディングページ制作も補助対象になります。こうした費用は自社予算だけではなかなか捻出しにくい項目ですが、補助金を活用すれば、計画的かつ継続的なプロモーションが実現可能になります。EC施策全体を「集客〜販売」までつなぐ構成で設計することが成功のコツです。
越境EC×BtoB:直接販売ではなく“商談入口”にも使える
「越境EC=直接販売」と思われがちですが、BtoB企業にとっては「商談の入口」として活用する事例も増えています。たとえば製品カタログ的な構成で見積もり依頼フォームを設け、問い合わせベースで商談を誘導するスタイルです。このような設計でも補助金の対象となり、Web構築費やCRM連携、翻訳や動画制作、広告まで費用支援が可能です。また、BtoB企業の場合は「いきなり売る」のではなく「比較検討される入口に立つ」ことが重要。越境ECを情報発信のハブとして設計し、そこに補助金を活用することで、営業接点を持てる確率が大きく変わります。営業の一部をECが担うような設計を、補助金で支えるイメージが現実的です。
3. 【実例あり】補助金で海外顧客を開拓したBtoB企業の取り組み
地方製造業がEC×補助金で東南アジア企業と直接取引に成功
ある地方の工作機械メーカーは、これまで海外営業のほとんどを展示会に依存してきました。しかしコロナ禍を機に展示会が減り、受注も激減。そこで挑戦したのが、Shopifyで構築した越境ECとFacebook広告を組み合わせたデジタル施策です。JAPANブランド育成支援等事業を活用し、サイト構築費、翻訳、SNS広告費を補助金でまかない、約3ヶ月でシンガポールとインドネシアのバイヤーから問い合わせが入りました。直接販売には至らなかったものの、オンライン商談とサンプル出荷を通じて信頼関係を構築し、半年後には定期受注がスタート。従来の営業と比べ、移動や展示会準備の負担を大幅に削減しながら海外販路を開拓できた好事例です。
自動車部品メーカーがLinkedIn×補助金で欧州バイヤーと接点獲得
欧州市場に関心を持ちながらも接点がなかった自動車部品メーカーでは、補助金を活用してLinkedInを中心としたデジタル営業に挑戦しました。海外営業部門では英語でのコンテンツ発信に不安があったため、翻訳・ライティング・画像作成・広告運用などを外注。その費用を補助金でカバーしました。投稿設計から広告配信までを戦略的に進めた結果、ターゲット企業の購買担当からのDMや資料請求が相次ぎ、6件のオンライン商談に発展。実際の契約までには至っていないものの、「海外とのやり取りが社内に根付いた」「営業の武器が可視化された」という組織的な効果も大きく、来年度も同様の施策を拡張予定とのことです。
受託加工業が“翻訳された提案書”で現地商社から引き合い
特注部品の加工を行う中小の金属加工業者が取り組んだのは、営業資料の多言語化と、Webサイトの英語対応でした。補助金を活用し、会社案内・製品仕様・納品体制などを英語と中国語に翻訳。単なる直訳ではなく、海外バイヤーが理解しやすいようにストーリー仕立てで資料を構成しました。さらに、Webサイトにも翻訳版を掲載したところ、JETRO経由で紹介されたタイの商社が関心を示し、すぐにオンライン面談へ。その後、PDF化された翻訳提案書を送付したことが決め手となり、現地製造業へのOEM供給が始まりました。少額の補助金でも、「翻訳の質」と「営業資料の整備」によって商談が動くという好例です。
4. 今すぐ始める!補助金×デジタル海外営業の実践ステップ
まずは情報収集|無料で相談できる支援窓口を活用しよう
補助金を使いたくても「何から手をつければいいか分からない」という方におすすめなのが、JETROや中小機構、各地の商工会議所の無料相談サービスです。制度の紹介だけでなく、事業計画のアドバイス、申請書の添削、実績報告のフォローまでサポートしてくれる窓口もあり、初めての申請でも安心です。たとえば、JETROでは業種別・国別の支援担当者が在籍しており、商談先の紹介や競合情報の提供を受けることもできます。また、都道府県や市区町村が独自に実施する補助金もあるため、自社所在地の産業振興課などに問い合わせると意外な制度に出会えることも。自社単独で進めようとせず、まずは「相談から始める」ことがスムーズな第一歩です。
小さく試して、勝ち筋を補助金で加速させる
いきなり大規模な海外戦略に補助金を使うのではなく、まずは小さな施策から試して「反応がよかった部分」に集中投資するのがおすすめです。たとえば、まず1ページだけの英語LPを作って広告配信し、CV率が高かったら本格的な多言語サイトを作る、といった段階的なアプローチです。補助金はあくまで「事前に決めた事業」にしか使えないため、申請前に簡易なテストマーケティングをしておくと、説得力ある申請書が書けるうえ、成功率も高まります。また、試した施策がうまくいけば、そのまま補助金を使って拡張すればよく、無駄がありません。特にBtoBでは、最初の1件を得るまでの“壁”が高いため、慎重かつ実行力あるアプローチが結果に結びつきます。
補助金を「営業仕組み化」の起点にする考え方
海外営業は属人的になりがちで、担当者が変わるたびに顧客リストや対応履歴がブラックボックス化してしまうこともあります。そこで補助金を活用して、Webフォーム設置、CRM導入、マーケティングオートメーション整備などを行い、営業の仕組み化に取り組む企業も増えています。特に、BtoB製造業では「製品説明→資料請求→商談予約」という流れをシステム上に構築することで、営業活動が可視化され、属人化を防ぐことができます。これにより、補助金の役割が「単発施策の支援」から「営業体制全体の改善」へと広がります。制度をうまく活用して、短期成果だけでなく長期的な営業の土台作りにつなげる視点を持つことが、競合との差を生むカギとなります。
5. 補助金を活かして海外営業を“仕組み化”する時代へ
単発の支援ではなく「営業投資」としての補助金活用を
補助金は一過性の「ラッキー予算」ではなく、未来につながる「営業投資」です。たとえば、翻訳されたコンテンツ、整備されたWebサイト、可視化された広告運用データなどは、補助期間が終わってもその後の営業活動に残り続けます。逆に「補助金が終わったから施策もやめる」というスタンスでは、何も残りません。補助金は“継続投資のための起爆剤”として活用するのが成功パターン。自社の営業資産を蓄積する意識を持つことで、今後の海外営業に再現性と拡張性を持たせることができます。営業が属人的だった企業ほど、補助金をきっかけに仕組み化へ進む好機と捉えるべきです。
越境ECやデジタル営業の導入は補助金で“社内合意”を得やすい
海外営業の新施策を始める際、「社内の理解を得にくい」「前例がない」という声が多く聞かれます。しかし、補助金を活用することで、社内への説得材料が生まれます。「自己資金は最小限」「実験的にトライできる」「成果が出れば拡張」といった構成は、稟議が通りやすく、現場と経営の両方にとって納得感があります。また、補助金がつくことで“施策の本気度”も社内に伝わりやすく、チームを巻き込む起点にもなります。特に、Webや広告に馴染みのない業界ほど、第三者(公的機関)による支援があることで、信頼と安心感が生まれます。導入に慎重な企業こそ、補助金をきっかけに小さく始め、組織的な転換につなげていくべきです。
営業部門が主体となって補助金を活用する流れへ
これまで補助金は「総務や経営企画が調べて申請するもの」という認識が強いものでした。しかし近年では、営業部門が直接活用を検討し、戦略に組み込むケースが増えています。特にデジタル営業や越境ECでは、営業現場が課題を最もよく理解しているため、必要な施策やコスト感も把握しやすく、補助金活用の設計に向いています。営業主導での補助金活用により、「本当に必要なことに使われる」補助金となり、成果に直結しやすくなります。今後は、営業部門が「施策設計 → 補助金選定 → 社内合意形成 → 実行」までを一貫して担う体制が、海外販路開拓の主流になるでしょう。主体的な活用こそが、補助金の本当の価値を引き出します。
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。