
Japan Street完全ガイド|対象企業・費用・商談の流れを徹底解説
この記事でわかること
- Japan Streetの仕組みと参加条件
- 海外バイヤーの特徴と商談の流れ
- 費用・支援制度・成功事例
海外営業に挑戦したい中小企業に、展示会や代理店に頼らず販路を広げる方法として注目されているのが、JETROが運営するオンライン商談支援ツール「Japan Street」です。
本記事では、対象企業や商材の条件、費用、商談の流れ、そして成功事例までをわかりやすく解説します。
目次
1.Japan Streetとは?
Japan Streetは、JETRO(日本貿易振興機構)が運営するオンライン商談支援ツールです。
日本の中小企業や個人事業主が自社の商品を英語・日本語で登録し、海外バイヤーが自由に検索・閲覧できる「オンラインカタログ」として機能しています。バイヤーはJETROが各国で審査・招待した信頼できる企業に限定されており、不透明な取引のリスクを抑えながら販路を拡大できます。
商談はオンラインで行われ、JETROが日程調整や通訳を無料でサポートするため、海外営業に不慣れな企業でも安心して取り組めます。展示会や代理店を介さず、自社主体で海外展開に挑戦できる「低コストかつ安心の仕組み」として注目されています。
2.なぜ今、Japan Streetが海外営業で注目されているのか?
海外営業は中小企業にとって依然ハードルが高い
中小企業にとって、海外営業は依然として大きな負担を伴う挑戦です。展示会に出展する場合は数百万円単位の費用が発生し、さらに現地渡航費や宿泊費、通訳費も加わります。
また、現地の商習慣や法律に対応できる人材を確保するのも簡単ではありません。限られた人員で国内営業と海外開拓を両立させるのは難しく、結果的に「海外進出をしたいが踏み切れない」という状況に陥る企業が多いのです。
Japan Streetはこうした課題を解消する仕組みとして機能します。
オンラインで商談ができるため出張や展示会参加が不要となり、通訳もJETROが無料で支援します。これにより、資金力や人材に制約のある企業でも、安心して海外営業の第一歩を踏み出すことが可能となります。
代理店や展示会に頼らない新しい営業手法が必要
従来の海外展開では、現地代理店を通した販路拡大や展示会出展が主流でした。しかし、代理店を介すれば利益率は下がり、展示会は高コストのわりに成果が見えにくいという課題があります。
さらにコロナ禍以降は渡航制限や展示会中止も相次ぎ、従来型の営業手法に依存するリスクが浮き彫りになりました。
そのため、今は「自社が主体となって直接海外バイヤーとつながる方法」が求められています。Japan Streetは、商品を掲載するだけで世界中の信頼あるバイヤーに発信でき、商談依頼も直接届きます。
これにより、中小企業でも利益率を維持しながら効率的に販路を広げられます。展示会や代理店依存から脱却したい企業にとって、有力な選択肢になっています。
JETRO運営の公的プラットフォームだから信頼できる
海外営業において最も不安なのは、取引相手の信頼性です。一般的なBtoBプラットフォームでは、相手が本当に実在する企業かどうかを見極めるのは困難で、詐欺や未払いのリスクも少なくありません。
その点、Japan Streetは国の機関であるJETROが運営しており、各国の現地事務所がバイヤーを審査・招待しています。つまり、登録されているのは信頼できるバイヤーだけです。
さらに、実際の商談にはJETROの担当者や通訳が同席するため、言語や文化の壁を超えて安心して交渉できます。
こうした「公的機関が裏付ける安全性」は、海外取引に不安を感じている中小企業にとって大きな安心材料となります。Japan Streetは単なるオンラインカタログではなく、信頼性の高いビジネスの入り口として注目されています。
3.出品できる企業・商材の条件とは?
参加できる日本企業の条件
Japan Streetは、中小企業から個人事業主まで幅広い事業者に開かれています。ただし、参加には一定の条件があり、輸出に必要な情報や体制を整えることが求められます。主な条件は以下の通りです。
- 商品情報を英語で登録できること(製品名・説明文など)
- 製品画像や必要情報の準備(MOQ、輸出価格、HSコードなど)
- 商社・代理店の場合は製造元の承諾が必要
- 海外拠点を持つ日系企業も利用可能
これらは一見するとハードルが高いように思えますが、JETROが登録や取引に関するサポートを提供しているため、輸出初心者でも安心して挑戦できます。
対応する商材ジャンル
Japan Streetで取り扱える商材ジャンルは非常に幅広く、製造業から食品、伝統工芸品まで網羅されています。
海外市場で人気のある商品群を以下に挙げます。
- 食品・飲料(加工食品、日本酒、茶、調味料など)
- 日用品・雑貨(キッチン用品、掃除用品、家庭用品)
- 化粧品・美容関連(スキンケア、メイクアップ製品、ヘアケア)
- 伝統工芸品(陶磁器、漆器、和紙、刃物など)
- アパレル・ファッション(衣類、バッグ、靴、アクセサリー)
- 文具・オフィス用品(筆記具、手帳、事務用品)
- 家具・インテリア(木製家具、照明、寝具)
- 機械・産業資材(部品、工作機械、工具など)
- その他(アウトドア用品、ペット用品、ベビー用品など)
このように、ジャンルを限定せず多様な商品が対象となるため、幅広い業界の日本企業が活用できるのが特徴です。
4.どんな海外バイヤーがいる?
海外バイヤーの登録条件
Japan Streetに登録できる海外バイヤーは、誰でも自由に参加できるわけではありません。JETROが各国の事務所を通じて審査・招待した、信頼性の高い企業だけに限定されています。
- 過去の輸入実績や事業規模をチェック
- 取引の信用度を審査し、不透明な企業は排除
- 輸入商社、小売チェーン、EC事業者、ホテル・レストラン、ドラッグストアなどが対象
- 一定の購買力や販売網を持つ企業のみ登録可能
この仕組みにより、「商談をしても成約につながらない」といったリスクが低減され、日本企業は安心して海外バイヤーと交渉できます。
公的機関によるフィルタリングが担保する信頼性は、Japan Street最大の強みのひとつです。
海外バイヤーの業種と国
Japan Streetには幅広い業種のバイヤーが参加しています。
具体的には以下のような業種が中心です。
- 食品分野:輸入商社、スーパー、レストランチェーン
- 化粧品分野:ドラッグストア、ECプラットフォーム、専門ショップ
- 雑貨・アパレル分野:セレクトショップ、百貨店、量販店
- 機械・資材分野:産業部品商社、ディーラー
- ホスピタリティ分野:ホテルチェーン、外食事業者
地域別に見ると、扱う商材や取引の傾向にも特色が見られます。
地域 | 特徴・傾向 | 主な注目ポイント |
---|---|---|
アジア | 最大の市場。中国・韓国・ASEANで需要が強い | 食品・日用品・生活必需品の継続的ニーズ |
欧州 | デザイン性・伝統工芸への注目が高い | サステナブル素材・クラフト性が評価されやすい |
北米 | 健康食品や機能性商品へのニーズが拡大 | 高品質・安全性・付加価値のある食品・美容品 |
中東 | ハラール認証食品や化粧品の需要が伸長 | 認証対応商品が成長のドライバー |
オセアニア | 日本製品への関心が拡大中 | 日用品・食品・ライフスタイル系への需要 |
中南米 | 日本ブランドへの関心が拡大中 | 差別化できる商材、安心感ある日本ブランド |
業種・地域ともに幅広い層のバイヤーと接点を持てるのが、Japan Streetの大きな魅力です。
5.費用は?Japan Streetは本当に無料?
Japan Streetの大きな特徴は、基本サービスがすべて無料で利用できる点です。
商品登録や掲載、バイヤーとのマッチング、商談日程調整、オンライン会議ツールの利用、さらに通訳サポートまで、企業が負担する費用はありません。
これにより、展示会出展や渡航費など数百万円規模のコストがかかる従来型の営業活動と比べて、大幅なコスト削減が可能です。
ただし、商談後にサンプル品を送る際の送料や、実際の輸送費などの実費は企業負担となります。とはいえ、初期投資がほぼ不要で海外営業を始められるため、リスクを抑えつつ販路拡大に挑戦できるのは大きなメリットです。
6.提供されている主な機能・サービス
Japan Streetは、単なる商品紹介の場にとどまらず、成約を目指すための多機能な商談支援プラットフォームです。主な機能は以下の通りです。
- オンラインカタログ掲載
企業は自社商品の情報や画像を登録し、世界中のバイヤーが検索できる状態に。 - 検索・問い合わせ機能
バイヤーはキーワードやカテゴリで商品を探し、興味があれば商談依頼を送信可能。 - オンライン商談ツール
Zoom等の会議ツールを利用して、JETROが商談をセッティング。 - 通訳サポート
必要に応じて、無料で通訳が同席し、言語の壁を解消。 - フォローアップ支援
商談後の追加調整や再打ち合わせもサポートされる体制。
これらの機能により、企業は商品を登録するだけで、出会いから商談、成約後のやり取りまでをスムーズに進められるのが特徴です。
7.実際の商談の進め方
Japan Streetでの商談は、初めて海外バイヤーとやり取りする企業でも安心して進められるように設計されています。
問い合わせからフォローアップまで、JETROが一貫してサポートする流れが整っています。
① バイヤーからの問い合わせが届く
まず、海外バイヤーがJapan Street上で商品を検索し、商談依頼を送ります。この依頼はJETROが一度受け取り、審査した上で企業に転送されます。
企業は相手の情報を事前に把握でき、安心して対応できます。
② 商談日程の調整と事前共有
商談が成立すると、JETROが双方のスケジュールを調整し、オンライン会議ツールを設定します。
さらに、バイヤーの要望や質問事項が事前に共有されるため、企業は準備を整えてから商談に臨めます。
③ オンライン商談の実施(通訳・JETRO同席あり)
当日の商談はZoomなどで実施され、JETROの担当者と通訳が同席します。言語や進行の不安が解消されるため、企業は自社商品の魅力を伝えることに集中できます。
商談は30分から1時間程度が一般的です。
④ 商談後のフォローアップ
商談終了後、JETROは両者にヒアリングを行い、追加打ち合わせや資料提供などを支援します。
成約に至らなかった場合でも、改善点や次のステップを見据えたフォローアップが受けられるのが特徴です。
8.他のJETRO支援と併用するとさらに成果が出やすい
Japan Streetは単独でも成果を出せますが、他のJETRO支援と組み合わせることで販路拡大が加速します。
ECや展示会への展開、さらに外部プラットフォーム連携まで視野に入れた総合的な戦略が可能です。
Japan Mall・展示会出展への展開
Japan Streetで一定の成果を出した企業は、JETROの他支援プログラムへの展開機会も得られます。
代表的なのが「Japan Mall」で、海外ECプラットフォームと連携して商品を販売する仕組みです。
また、Japan Streetで評価された商材は、JETROが主催する海外展示会や商談会への出展を案内されることもあります。
オンラインを入口にオフラインやECに販路を広げられるのは、Japan Streetを活用する大きなメリットです。
JAPAN LINKAGEによる他プラットフォーム展開
JETROは「JAPAN LINKAGE」という仕組みを通じて、Japan Streetに登録された情報をAlibabaやorosyなどの民間BtoBプラットフォームと連携させています。
これにより、企業は一度の登録で複数の海外販路に同時展開でき、営業効率を飛躍的に高められます。特にリソースの限られた中小企業にとっては、情報を使い回して露出を増やせる点が大きなメリットです。
また、Japan Streetに登録していることでJETROの他支援事業への参加選考が有利になるケースもあります。公的支援と民間プラットフォームの両方を活用できるJapan Streetは、海外営業戦略の中核的存在となり得ます。
9.Japan Streetを活用した成功事例
株式会社丸中(大阪) – タオルメーカーが中国市場に参入
大阪の老舗タオルメーカー株式会社丸中は、Japan StreetとChina Japan Streetを活用して中国の雑貨店バイヤーとマッチングしました。オンライン上のやり取りから有償サンプルを提供し、販売テストで好評を得て追加発注につなげることに成功しました。
従来は展示会に頼っていた海外営業を、オンライン活用へシフトしたことで、少人数体制でも新たな販路を開拓できた好例です。代理店を介さず直接バイヤーと交渉することで利益率も高まりました。
Japan Streetが提供する低コストかつ信頼性の高い商談環境が、中小メーカーにとって実際に成果を生み出す力となったことを示しています。
北浦ファーム(山梨) – 英国バイヤーにブドウを輸出
山梨県の北浦ファームは、Japan Streetを通じて英国のバイヤーと出会い、シャインマスカットの初輸出に成功しました。オンライン商談を経て、実際にバイヤーが農園を訪れ、生産工程や品質を確認したことが決め手となりました。
高品質なブドウを求める海外市場に対して、自社の強みを丁寧に伝える姿勢が評価され、継続的な取引が始まりました。地域商社や自治体の支援も加わり、Japan Streetを起点に地域一体で輸出を実現した点が特徴です。
農家が直接海外バイヤーと取引できる仕組みは画期的であり、農産物輸出の新たな可能性を示した事例といえます。
フンドーキン醤油(大分) – ハラール市場で販路拡大
大分県の老舗調味料メーカー、フンドーキン醤油はJapan Streetを活用し、東南アジアのバイヤーとの商談機会を得ました。特にマレーシアでは現地企業と合弁会社を設立し、ハラール認証製品を製造販売する戦略を展開。JETROの商談支援を受けながら販路を拡大しています。
Japan Streetで得た問い合わせを契機に、商品改良や現地ニーズへの適応を進め、ASEAN市場での存在感を高めました。伝統的な日本企業でも公的支援とデジタルツールを組み合わせれば、ハラール市場のような特殊分野で成果を上げられることを示す好例であり、海外営業戦略の参考となります。
10.まとめ
Japan Streetは、JETROが運営する公的なオンライン商談支援プラットフォームとして、中小企業や個人事業主にとって非常に有効な海外営業の手段となります。
基本的な利用は無料で、通訳や商談調整まで手厚くサポート。対象商材やバイヤーは幅広く、地域ごとの多様なニーズに対応できます。さらに、Japan MallやJAPAN LINKAGEとの連携により、他の販路にも展開可能です。
実際に成果を出している企業も多く、展示会や代理店に依存しない新しい海外営業の形として注目されています。海外展開を検討する企業にとって、まず挑戦すべき選択肢のひとつと言えるでしょう。

監修者紹介
中島 嘉一 代表取締役
SNSリンク:https://linktr.ee/nakajima
株式会社コスパ・テクノロジーズ 代表取締役。
愛媛大学情報工学部卒業後、船井電機にて中国駐在し5,000人規模の組織管理とウォルマート向け海外営業を担当。
上海で起業し通算10年の中国ビジネス経験を持つ。Web制作・デジタルマーケティング歴13年以上で現在は英語圏・中華圏を中心とした海外展開支援のスペシャリストとして活動。
多言語Webサイト構築、越境EC、SNS・広告運用を駆使して企業の海外顧客開拓から、国内向けWebサイト制作・ブランディングまで、戦略立案から実行まで一貫サポート。
海外ビジネスに関するセミナーやイベントに登壇するほか、SNS総フォロワー5万人以上、中小機構海外販路開拓アドバイザーとして中小企業から上場企業まで幅広く支援実績を持つ。