B2B視点から見た日中の繊維産業②、求めらる国際貿易物流プラットフォーム。
中国繊維メーカーの東南アジアシフトは、当面続く。日本向け輸出企業は、互いに協力し、納得ずくで進めていて迷いはない。しかし現実には、問題が山積みだ。とりわけ早急に改善すべきは物流である。モノ作りの現場においても、製品の販売においても、現在、最大のネックである。どちらもまだ、ソリューションは得られていない。日本国内には、これといったプラットフォームは見当たらない。現状についてまとめてみよう。
モノ作り
生産現場を行き交うのは、繊維原料や完成品だけではない。大は工場設備たとえば自動裁断機から、小は繊維製品に縫い込む洗濯ネームまで数限りない。いちいち、どの国の産品が使用可能か精査し、どのようなキャリア―で工場に運べばよいか、プランを組み立てる必要がある。
日本人、中国人を問わず、ベテランの知識と経験による最適(最廉価)メーカーや産品の目利きは可能だ。しかし、国境を2つ以上跨いだ場合のシュミレーションまでは難しい。
例を挙げると、カンボジア東部に立地した工場群は、最初から隣国ベトナム、ホーチミン港からの輸出を想定している。カンボジア国内で手配できる繊維原料や付属品は、ほとんど何もない。縫製するだけである。中国から原料を陸路まは海路で、日本から値札を空路で、ベトナムから段ボールやビニール袋を陸路で輸入するとしよう。しかし、それらすべてのコスト管理、スケジュール管理は、まず不可能である。無償提供か、有償買取りかという貿易形態の問題もクリアしなければならない。結局、中国生産より高く付いたことも、初期にはざらだった。
商品の流通
日本の流通大手イオンの場合を取り上げてみよう。同社は、日本、チャイナ、東南アジアの3地域カンパニー制を敷いている。「トップバリュー」などのPB商品を、中国、東南アジア各地で、幅広く生産し調達している。どの地域で商品を調達しても、3カンパニーの店舗へ流通させなければならない。
PB商品調達の中心は、中国である。そして販売の中心は日本だ。流通制度の設計は、日本への輸入、中国→日本がメイン、東南アジア→日本がサブである。日本からの商品供給は、無視してよいレベルである。問題は中国→東南アジア、東南アジア→中国である。このルートは、多岐に渡る上、これまで利用してきた日系のフォワーダー(国際貨物輸送業者)では、十分に対応できない。三国間貿易(日本から見て)の経験を欠き、最良のパートナーでもアドバイザーでもない。何とか優秀な現地企業と信頼関係を築く必要がある。
イオングループで商品調達と物流を担うトップバリュー(株)のベトナム法人社長(ホーチミン駐在)は、日々この問題に忙殺されているという。
新プラットフォーマー「運去哪」
中国では、貿易体制を改革しようとする機運が盛んだ。越境Eコマースの発展を後押しするため、全国35カ所に越境EC試験区を作り、研究を重ねている。現行の国際貿易体制を否定するわけではなく、プラスアルファの枠組みを付加しようとしているようだ。
また「運去哪」というベンチャー企業が、ワンストップ型国際オンラインサービスプラットフォームを構築している。国際物流には、税関や銀行を含む、さまざまなプレイヤーが関与する。これら一連の業務を全面的にオンライン化し、一元的に提供するものだ。
提携する多数のプレイヤーから、荷主にとって最適な提案をした業者を選定する。アドバイザリー業務も行うため、繊維貿易に精通したプレイヤーも見つかるだろう。なかなかのソリューションに思える。今年中に、日本、ベトナム、タイ、米国にも拠点を開く予定だという。これは3国間貿易にフォーカスした動きだ。うまくいけば大化けする可能性を秘めている。
B2Bプラットフォームには大きなチャンスが眠っている。しかし、日本の動きは、あまり聞こえてこない。頑張ってほしいものである。