中国は人材育成にすべてを賭ける?直播電商(ライブEコマース)学科登場、eスポーツ学科も強力に推進
北京財貿職業学院と京東物流教育賦能学院が、共同で“社交新零售直播電商課程”を立ち上げ、その始業式を行った。学科名には、中国小売業の最新トレンドがすべて詰め込まれている。社交=共同購入、新零售=OMO(Online Merges Offline)、直播=ライブ放送、そしてプラットフォームとしての電商=ネット通販である。この新しい状況に対応すべく、人材を育成しようというのである。中国の対応はとにかく早い。以下、実際の取組みを見て行こう。
2年で29の新職業を認定
中国は時代に合わせて“新職業”を認定している。そして必要な人材の育成を図る。すぐに手を打つのである。人力資源社会保障部、国家市場監管総局、国家統計局の連合で、2019年4月には、以下の13職業を新たに認定した。
人工智能技術人員
物聯網(IOT)技術人員
大数居(ビッグデータ)工程技術人員
雲計算(クラウドコンピューティング)技術人員
数字化(デジタル化)管理師
建築信息模型技術員
電子競技(eスポーツ)運営師
電子競技員
無人機駕駛員(ドローン操縦士)
農業経理人
物聯網安装調試員
工業機器人系統(ロボットシステム)操作員
工業機器人系統運維員オペレーション&メインテナンス)
続いて2020年3月には、次の16職業を認定している。
智能製造工程技術人員
工業互聯網工程技術人員
虚偽現実(VR)工程人員
連鎖経営管理師
供応鏈(ブロックチェーン)管理師
網約配送員
人工智能訓練師
電気電子産品環境保護検測員
全媒体運営師
健康照護師
呼吸治療師
出生缺陷防控咨詢師(コンサルタント)
康復輔助技術咨詢師
無人機(ドローン)装調検修工
鉄路総合維修工
装配式建築施工員
eスポーツ人員養成コース
これらの公表は、学生にとって進路への指針になる。また教育機関にとっても、学科の新増設等の参考になるだろう。例えば2019年の公表では、Eスポーツには、華北伝媒学院、山東体育学院に講座がある、と明示していた。
その公表後、半年を経た2019年の下半期には、Eスポーツ教育関連のさまざまな記事が出た。
・上海には、電子競技の専門学校が存在しない。関連専攻コースのある学院として、上海七煌電競培訓学院、上海戯劇学院電競専攻、上海体育大学電競解説専攻、を挙げている。これでは不足で、専門学校を作るべきという論調だ。
・成都には、専門学校、四川成都翼梦電子競技培訓中心がある。また七煌電競、四川伝媒学院は関連コースを開設したとして、それぞれの短評を載せている。
また「電子競技運営師」というサイトがあり、ここでは、山東公路技師学院、濰坊技師学院、北京吉利学院など、主に北方の4施設を紹介している。
今年4月には、河南省・鄭州市にある、河南零控傲游電子科技公司の設立した専門学校が紹介された。
どうやら中国全土に、電子競技運営師と電子競技員の養成学校があるようだ。しかも解説者養成コースまである。産業として育成しようという意思は、十分すぎるほどである。
まとめ
今回の社交新零售直播電商課程も、eスポーツ人材育成と同様の流れに見える。
有名“網紅”のコンバージョン率(商品申込みや購入を達成した割合)は75%以上という高さだ。商品の浸透はどんな宣伝よりも速い。こうした新しい状況に対応するため、企業(京東)と専門学校が共同して、新しいコースを開設した。
万物がライブ視聴できる新時代に際し、その問題の本質を見極め、企業と政府に新しいEコマースの発展を促す。それらの実現に寄与する人材育成が目標だ。
他の新職業に対する対処もおそらく同じだろう。中国は、おそるべきスピード感で、新職業を認定するとともに、人材供給への道筋まで付けている。これに対して日本内閣府の産業分類をみると、農業、鉱業、製造業など旧態依然のままである。一体どうやって新産業を育てていくつもりなのだろうか。