2019年を振り返る⑥BtoB型ユニコーントップ10金融編、アント・フィナンシャル、阿里雲、京東数科、壹賬通
中国ネットメディアに、2019年BtoB型ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上、設立10年以内の未上場ベンチャー)の特集記事が掲載された。2018年、BATによるto Bシフト宣言以来、中国でもBto B市場への関心は高まっている。200社を超える中国ユニコーン企業のうち55社をto B型と認定している。1位から4位は金融とクラウド、6位以下にはAI関連が並んでいる。これらを前編、後編4社ずつに分け、8社を選んで紹介していこう。そこから何が見えてくるだろうか。
1位、アント・フィナンシャル 1430億ドル(企業価値、以下同じ)
アント・フィナンシャルはアリババの金融子会社である。その企業価値は、他のユニコーン54社の総和に等しい。そしてアリババ本体の香港市場上場の成功により、アント・フィナンシャルの上場にも期待が高まっている。12月末には、香港、内地A株(上海か深圳)同時上場のうわさが出回った。
もともと支付宝(Alipay)の運用会社だったが、2013年のMMF「余額宝」小口金融商品「花唄」の大ヒット、さらに信用スコア「芝麻信用」の定着により、超巨大な存在感を獲得した。
現在の収入構成は、支付宝収入と技術サービス収入が、それぞれ45%ずつ、その他10%は金融クラウド、オープンプラットフォーム、ブロックチェーン技術など、ハードなB2B技術である。3年後は、技術サービスの比率を3分の2まで高める予定だ。
2位、阿里雲 385億ドル
阿里雲は、2009に年設立された、アリババのクラウドコンピューティング子会社である。アリババの11月11日(双11)独身の日セール売上げが、2009年の5000万元から2019年の2684億元へ5368倍に拡大するのを、後方システムから支えた。
現在は、杭州市政府とのAIプロジェクト“城市大脳”や、鉄道総公司との乗車券販売プロジェクト“12306網站”その他、中国石化、徐工集団、国税総局、海関(税関)総署、国家天文台、微博、中国煙草総公司等の大組織と提携している。
世界200以上の国と地域に展開、クラウドサービスの世界シェア4位に位置し、AWS(アマゾン)、Azure(マイクロソフト)、Googleの米国勢を追っている。
3位、京東数科 71億ドル
京東数科は、ネット通販2位、京東の金融部門が、名前を新たにスタートしたものだ。多くのの商品ラインアップを持つ。
個人金融では、白条、京東支付、京東小金庫、産品衆籌、小白卡等で、金融、決済、財産管理、保険、証券取引までカバーしている。
企業金融では、京保貝、京小貸、京東企業金采、京東快銀等で、担保融資や信用供与を行う。
またフィンテック商品も開発し、資産管理、顧客管理、AI投資顧問、リスク管理等にも対応する。アリババより小ぶりだが、水も漏らさぬフルラインである。
4位、壹賬通 71億ドル
壹賬通は、2015年設立された、大手金融集団・平安グループの金融テック企業である。英文名は OneConnect、企業使命は、科学技術を用いて、金融をよりシンプルにすることだ。
壹賬通の科学技術はAIとブロックチェーンが中心である。AI研究者はビッグデータだけでも200名を超え、計算能力は世界トップ100に入る。虹彩識別、声紋識別、微表情識別、語彙識別でも世界最先端水準にある。
ブロックチェーンでは、海関総署や工信部(工業情報省)などの技術標準となっている。2019年6月段階で、累計250のブロックチェーン技術特許を、国内外に申請している。
まとめ
1~4位の4社は、アリババ系、京東系、平安系と、いずれも大手企業グループ会社であった。IT巨頭の力を改めて認識させられる。
なかでもアリババの力は強大だ。直系のアント・フィナンシャルや阿里雲はもとより、後編で紹介するAIユニコーンにも出資している。来年のIT界もアリババ中心に展開するのは、間違いなさそうである。