2019年を振り返る①、5つのキーワードで読み解く中国の小売業界、直播(ライブ配信)の時代が到来
12月となり中国ネットメディアでも、1年を振り返る記事が花盛りだ。その中からいくつかの業界について紹介したい。まず小売業界である。今年は、さまざまな新しい商業モデルの実験が行われたが、キーワードは5つであるという。順に見て行こう。
下沉市場
下沉市場とは、三線級以下の地方都市市場である。一線級都市とは、北京、上海、深圳、広州を指す。二線級都市も日本での知名度は高い。一二線級都市は飽和状態となり、三線級以下の途方都市が、小売業の焦点となった。直近の中国のモバイル通信ユーザーは11億3600万人、そのうち三線級以下は6億7000万人と過半を占める。
この市場を開拓したのは、共同購入スタイルの拼多多で、同社急成長の原動力となった。
今年は、ネット通販大手が自社の共同購入プラットフォームを大強化した。アリババの聚画算、京東京喜、蘇寧拼購である。双11では激戦が展開された。
社区(コミュニティ)団購
社区団購は、本物のLBS(Location Based Serice=位置情報サービス)である。C端(消費者)がB端を駆動する商業チャンネルで、団長の力が大きく作用する。昨年来、蘇寧など大手を含め、多くの企業が参入し、激戦を展開中だ。
食亨会、十荟团、鄰鄰壹などの企業は、数千万元以上の融資を獲得した。その一方、呆萝卜は、資金が“断裂”したものの、九死に一生を得た。また松鼠拼拼は、大規模なリストラを発表している。明暗ははっきりしてきたようだ。
買菜
今年は、ネット通販巨頭、食品スーパー、不動産管理会社、ベンチャーなどさまざまな企業が、社区の新零售市場に参入した。デリバリー最後の100メートルを抑えるためだ。
社区団購は、利益が上がらず、大半の企業は欠損を出している。十分な資金の背景は欠かせず、大手が有利となる。
美団は1月に“美団買菜”業務を上海で開始、3月は北京、11月には華南にも展開した。アリババの盒馬鮮生は3月、上海で“盒馬菜市”1号店をオープンした。またグループの餓了蘑は、買菜業務を全国500都市に拡げた。蘇寧は4月、“蘇寧菜場”をリリースしている。
資本市場では、朴朴市場、誼品生鮮などの5社で25億元の融資を集めた。
直播(ライブ)
最近発表された「直播生態趨勢発展報告」によれば、すでに動画配信は、新時代の新産業である。とくにネット通販+ショート動画の組み合わせは、1000億元(1兆5500億円)級の市場を創造した。
アリババ、京東、蘇寧ら大手は、自身のプラットフォームに、ショート動画を取り込んでいる。11月には、小紅書、拼多多が、直播への進出を発表、TikTok、快手など短視頻(ショート動画)各社も“重要戦場”と位置付けている。新しい情報伝播コミュニティが形成され、そのレベルも不断の発展を遂げている。直播の爆発力は、継続するだろう。
外資撤退
北京物美集団が、METROを買収、蘇寧は、家楽福(カルフール)の株式80%を握った。
ト蜂蓮花は、上場を取りやめた。
1990年代、カルフール、ウォルマート、METRO、ト蜂蓮花、易買得、ロッテマートなどが続々と進出、外資大型SCの黄金時代を現出した。しかし、コストの上昇、過当競争、ネット通販の急発展等により衰退へ向かった。苦境に直面し、オンライン販売へ進出し、フードデリバリーと提携したが、回復しなかった。
まとめ
外資の凋落は、新時代の幕開けだ。最も注目されるのは、ライブによる販売促進の展開と、“到家”、最後の100メートル配送の進化だろう。社区団購と買菜は、来年には、はっきり勝負がつきそうである。ただし、不確定要素も多い。中国は、ベンチャーに限らず、大手も斬新なコンセプトで切り込んでくるからだ。新業態のウオッチは、今年同様に欠かせない。