車載インターネット、中国はBATの争い、日本は自動車メーカー主体、日本にIT巨頭存在せず?
日本では、トヨタやベンツ車とドライバーの会話するTVコマーシャルがおなじみだ。「ヘイ、メルセデス!」は耳に残る。トヨタのコネクティッドカーのCMも、何となく頭に入ってくる。IOTの一環として、車もネットにつながるのだなあ、といった漠然としたイメージを抱く人が多いだろう。そして開発の主体は、トヨタはベンツなど、自動車メーカー、と思われている。IT大国と呼ばれるようになった中国では、どうなっているのだろうか。
中国の主要プレイヤーたち
北京の調査・研究開発期間、前瞻産業研究院のデータによれば、2017年、世界の車載インターネット市場規模は525億ドルだった。それが5年後の2022年には1629億ドルまで増加すると見られている。そのうち中国の市場規模は114億元(2017年)、530億元(2022年)、年平均成長率36.0%が予想されている。世界でもっとも熱い市場とみられているのだ。主要プレイヤーと見られているのは、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)を始めとするIT巨頭たちである。自動車メーカーは受け身の存在であり、それが当然と見られているようだ。各社別に見ていこう。
バイドゥ(百度)
百度はパソコン時代、中国最大の検索エンジンとして、強者の地位にあった。しかし、モバイルの時代に入り、アリババ、テンセントほど目立たない。車載インターネットは、反転攻勢の機会である。2017年11月、自動運転で国家AIプロジェクトの指定を受け、多方面にわたる自動車業界との提携関係があるからだ。
(2017年)
4月 奇瑞汽車と、車載インターネットで、全面提携。
8月 江准汽車と、無人運転車の量産で提携。
10月 北京汽車と、AI+自動車システム、で提携。
(2018年)
3月 長城汽車と、人工知能プラットフォームで提携。
4月 東風汽車と、人工知能システムで提携。
6月 BMWと、車載インターネットで提携。
7月 ベンツと、自動運転、車載インターネットで提携。
8月 長安汽車と、自動運転、車載インターネットで提携。
11月 自動運転車(紅旗L4級)共同開発。
(2019年)
1月 威馬汽車と、戦略提携。
4月 広州汽車と、地図と位置情報で提携。
7月 吉利汽車と、AI、無人運転で提携。
最多の提携先を誇っている。
アリババ
アリババは、車載インターネットに進出したのは最も早かった。
2014年7月、上海汽車と、インターネット自動車戦略とその応用サービスで戦略提携。
2018年8月、東風汽車と、デジタル化、智能化、オンライン化応用で提携。
2018年9月、上海汽車と、クラウドコンピューティングで提携。
2019年1月、BMWと、アリババのスマートスピーカー「天猫精霊」の採用で合意。
上海汽車と緊密な関係を保持、逆にこれが裏目に出て、敬遠されている可能性もある。提携先は最も少なく、このままでは影響力の拡大は望めない。今後の戦略に注目だ。
テンセント
2017年11月、東風汽車、比亜迪、長安汽車、広州汽車、吉利汽車、テンセントのAll in Car
システムに加入
2018年4月、北京汽車と車載インターネットで提携。
2018年9月、BMWと配車アプリ、インターネット分野で提携。
2019年7月、長城汽車と、デジタル化、データ化顧客運営、配車アプリなどの分野で提携。
テンセントは、All in car システム参加の5社とともに“六角同盟”の構築に成功した。蓄積した技術のオープン化と集中化を目指していく。
まとめ
提携先の最も多いバイドゥ、上海汽車と緊密提携のアリババ、グループ作りに成功したテンセント、という構図だろうか。
バイドゥとアリババは、自社のスマートスピーカーとOS、Apollo小度、天猫精霊を使ってもらうことが目的の1つだ。
これに対しテンセントは、国民的SNS・Wechatの車載版採用が目標だ。人-車-販売店-整備工場という、業界のサイクル全体のソリューションを目指す。
これに対し日本では、トヨタがマイクロソフトと提携するなど、自動車メーカーが自ら主体的に行っている印象だ。日中の車載インターネット界は、かなり異なった情景となりそうだ。これも、なかなか業界の垣根を超えられない日本の、象徴事例となるのだろうか。