2019年を振り返る⑤ゲーム産業、ニンテンドーSwitchと5Gが新しい発火点となるか?
中国ゲームのイメージは急速に変わりつつある。国内市場はニンテンドーを締め出すなど、閉鎖された空間というイメージはぬぐえなかった。一方スマホゲームでは、PUBG Mobile、荒野行動、など中国系ゲームが日本でもヒットしている。2019年の中国ゲーム市場をデータを中心に振り返ってみよう。
ゲーム市場のスケール
12月末、分析統計機構「伽馬数居」は、「2019中国遊戯産業年度報告」を発表した。それによれば2019年中国ゲーム市場の全体売上げは、2330億2000万元(3兆6350億円)、前年比8.7%増だった。4G時代に入り後の売上げと伸び率は
2014年 1148億8000万元 37.6%増
2015年 1407億0000万元 22.9%増
2016年 1655億7000万元 17.7%増
2017年 2036億1000万元 23.0%増
2018年 2144億4000万元 5.3%増
2019年 2330億2000万元 8.7%増
さすがに2000億元(3兆1000億円)を超えてからは伸び率は鈍っている。しかし、今年は、昨年の伸びを上回った。新しい成長エンジンが回転を始めたのだろうか。
個別市場
報告は単機遊戯市場の活性化を挙げている。単機遊戯とはSingle-Player Game、1台のゲーム機またはパソコンで独立動作する電子ゲームと定義されている。インターネットは必要ない。これ2019年、その単機遊戯市場は341.4%の急増となった。ただし売上は6.4億元(100億円)にすぎず、シェアは0.27%にすぎない。
主機市場、ゲーム機本体とソフトの売上は53億6000億元(840億円)、前年比8.7%の伸びだった。12月テンセントを通して、ニンテンドーSwitchが発売となった。これは市場の新しい発火点となりそうだ。
モバイルゲーム市場は、1513億7000万元(2兆3600億円)、前年比13.0%の伸びだった。産業全体の64.9%を占める市場の中心である。
電子競技(Eスポーツ)市場は969億6000万元(1兆5100億円)前年比16.2%増となった。
またライブ市場は、112億1000万元(1750億円)前年比48.9%増と2倍近く伸びた。2019年上半期のライブ放送シェアは、斗魚31.1%、虎牙直播21.3%、快手18.5%、B站17.1%、網易CC5.3%、その他6.4%となっている。尚テンセントは斗魚、快手、B站に出資している。
輸出産業へ
中国ゲーム産業は、輸出産業に育ちつつある。中国が自主研究開発したゲームにおける、海外市場からの収入は
2014年 30億8000万ドル 69.2%増
2015年 53億1000万ドル 72.4%増
2016年 72億3000万ドル 36.2%増
2017年 82億8000万ドル 14.5%増
2018年 95億9000万ドル 15.8%増
2019年 111億9000万ドル 16.7%増
と順調に伸びている。2019年全世界の市場規模予想は1488億ドル、前年比9.7%の増加を上回る。2020年は5Gの展開により、新しい市場空間の創出が予想され、大きなチャンスと見られている。
まとめ
12月中旬、海南省・海口で、2019年中国遊戯産業年会が開催され、テンセント、網易(ネットイース)、完美世界等、業界の最高幹部が集合した。席上、網易の創業者・丁磊は、中国文化産業の使命として次の3つを上げた。
1 伝統と現代を結びつけた、高品質の文化作品を普及させる。
2 仮想現実と現実を結び付け、デジタル社会の質の高い運営に向け 新思考を提供する。
3 中国を世界と結びつけ、世界に中国のストーリーを語る。
そして中国の語るべきスト―リーとは、古典も中国料理もゲームも比重は変わらないという。日本で「卒土之濱」が大人気となったことにも触れた。網易の狙うストーリーの1つということだろう。その拡大意欲を隠そうとしていない。