新型肺炎特需に湧く中国のゲーム市場(前編)、モバイルが圧倒的シェア、PCは退潮、コンソールはこれから
新型肺炎の防疫体制下、ゲーム業界にも特需が吹き荒れている。その分析の前に、まず中国ゲーム市場を概観しよう。その構成は、日本とは大きく異なる。成り立ちまで立ち入らず、現状分析に集中したい。
グローバル市場分析
ゲーム市場調査のNewzoo(オランダ)は、2018年世界ゲーム市場規模を1379億ドル、k構成は、モバイル51%、コンソール25%、PC24%と公表している。中国は379億ドルで4分の1を占め世界一だ。
SuperData(米国)は、2019年の世界市場規模を1201億ドルと、Newzooより低く見積もっている。モバイル54%、PC25% コンソール13%、その他8%である
どちらにせよ世界全体のモバイル比率は50%強である。中国市場は、2014年までコンソール正規版は販売できなかったため、その構成比は極めて。Newzooのデータでは、モバイル87.5% PC12.2% コンソールは1.3%、しかない。
国内市場分析
中国の調査機関、伽馬数居の「2019中国遊戯産業年度報告」では、2019年の中国市場売上は2330億2000万元、前年比10.6%増としている。すると2018年は2016億元になり、1ドル=6.8元換算で300億ドル、Newzooの379億ドルとは乖離している。
(収入/ 前年比/ 構成比)
モバイル -1513億7000万元、 13.0%増、65.0%
PC -616億9000万元、 0.4%減、 26.5%
コンソ―ル- 53億6000万元、 8.9%増、 2.3%
ブラウザー- 97.億5000万元 22.9%減 4.2%
シングル - 6億4000万元、 341.4%増、0.27%
ブラウザーとはマルチプレーヤーオンライン対戦ゲームで、全盛は10年前。シングルとは1人遊びゲームで、コンソールの一部だろう。
モバイル
AppAnnie(米国)の最新データによると、2019年の世界モバイルゲーム市場規模は、880億ドル、前年比26%増だったSuperData(米国)の予測は、1201億ドルの54%、650億ドルである。やはりこの業界は調査機関によって、かなり差がある。
それはともかく、中国のゲーム市場の主戦場は、このモバイルだ。Annie調査では、世界市場の何と40%である。モバイルに、リソースを集中できた結果、大きく成長した。専用機にこだわり、スマホに距離を置いていた日本は、この分野では、もはや太刀打ちできない。テンセントやネットイースに対抗する、技術力とスケール(技術者数)が存在しないという。
Annie調査では、テンセントは2019年の世界MAUトップ5に、3つのソフトを入選させている。「PUBG MOBILE」「王者栄耀」「和平精英」である。世界の企業別ゲーム収入ランキングは
1位 テンセント(中国)
2位 ネットイース(中国)
3位 アクティビジョン(米国)
4位 Supersell(フィンランド)
5位 バンダイナムコ(日本)
6位 Netmarble(韓国)
7位 Playrix(アイルランド)
8位 ソニー(日本)
9位 Playtika(イスラエル)
10位 Zynga(米国)
4位のSupersellの筆頭株主はテンセントである。同社の力はダントツだ。
まとめ
日本のゲーム業界は、コンソールビジネスの創造者として賞賛を集めていたため、スマホ対応では後れをとった。これは日本全体の傾向だ。既得権益の多い業界ほど、スマホに後ろ向きであり、ゲーム業界はその典型かも知れない。一方スマホの可能性を一途に追及した中国は、次々にイノベーションを起こしていった。日本のコンソールビジネスを既得権に例えるのは、語弊があるだろう。しかし、IT界の日本的停滞をなぞったようではある。今後は中国との共存共栄を目指すべきだろう。