中国向けマーケティング、広告編⑤ KOL、MCNによる新しい広告とメディアの複合化、 「快手」
今回は、KOL利用アプリランキングの中から、「快手」を取り上げる。中国ではTikTokと並ぶ人気短視頻アプリである。どのような広告価値を持っているのだろうか。
短視頻アプリ
短視頻アプリ、2019年6月の月間アクティブユーザーと前年同月比は以下の通り。
(バイトダンス系)
TikTok-4億8600万(61.4%増)、
西瓜視頻-1億3100万(21.8%増)
火山小視頻-1億600万(0.6%減)
(テンセント系)
快手-3億4800万人(57.2%増)
微視-1億500万人(269.4%増)
(バイドゥ系)
好看視頻 -6900万人(229.2%増)
全民小視頻-1600万人(12521%増)
TikTokと快手の激しいトップ争いだ。その他のアプリも大きく伸ばしている。快手は、化粧品KOLのランキングでは7.5%で7位と、順位は決して高くない。しかし、短視頻界では、TikTokに次ぐ大きな存在である。
快手とは
快手は、北京快手科技有限公司の運営する短視頻アプリである。GIF画像の共有サービスとして始まり、ミニ動画の共有、動画投稿アプリへと発展していく。やがて中国版YouTubeと呼ばれるようになる。TikTokより短い7秒動画のため、最後まで見てもらえる可能性は高い。その分過激な内容になりやすく、2018年を通して当局の指導を受け、1万1000のアカウントを停止している。
テンセントは2017年3月、快手に3億5000万ドルの巨額投資を行った。テンセント創業者の馬化騰は、快手に高い“温度”を感じ、自ら投資を決断したという。2018年4月には続けて4億ドルを投資している。
リップシンクのミュージックビデオとしてスタートしたTikTokと、画像共有アプリからスタートした快手が、今では、同じステージで激しく競い合っている。
快手の「快手電商」
快手に広告を出稿するには、快手広告管理平台にアクセスする。TikTokに比べ、シンプルなデザインだ。デイリーアクティブユーザー2億、そして毎日4億の「いいね。」が快手広告の基礎資源だ。
ユーザーの年齢は、95后-43.3%、90后-19%、00后-19%と10~20代で81.3%を占めている。また男女比は男性55%、女性45%だ。若い男性の支持が高く、これは投稿内容が過激になりやすい原因でもある。
また快手は「快手電商」という“電商サービス商”業務に注力している。9月末、快手は、国産化粧品ブランド「完美日記」とコラボし、トップKOLを起用した大販促活動を行った。3日間の活動期間中、ページビューは1億以上、750万人以上が動画を視聴、33万個の商品が売れ、完美日記公式サイトのアカウント数は、20万以上増加した。
化粧品など女性向けでは、小紅書に後れを取っていた快手だが、快手電商を用いて、新たな局面を開こうとしている。こうしたブランド単独通販サイトだけでなく、アリババ、京東、拼多多など大手通販とも提携している。
まとめ、誰もがKOL
11月上旬、快手幹部の、中国互聯網(インターネット)協会の会合における発言が注目を集めた。「1人の“普通人”が、快手によって大きなスポットライトを浴びる機会を得る。世界中の目に触れるのだ。」
快手によれば、投稿の70%は何回も視聴される。快手は、投稿内容と、それに興味をもつ人たちを結び付け、強固なコミュニティを構成することができる。そしてさらに伝播、拡大させていく。こうして普通人が大きな影響力を持つことが可能となる。以前の中国人は“権威”を信任していたが、現在では“普通人の真実”に信頼を置くようになっている。実際「二哥評車」という投稿が、数百台の新車セールスにつながったこともあるという。
TikTokと快手は、普通人に手軽な表現手段を提供することで、中国の消費生活に影響を与え、変革している。当面、注目の的であり続けるだろう